詩織「私たちは、あの子たちの人生を握っている。関わる人の運命を変えてしまうかもしれない、重い仕事なの。心して臨んでね」

12月6日(木)深夜放送のドラマ『プリティが多すぎる』(日本テレビ系)第8話。

キヨラ(長井短)のような人気モデルに憧れて雑誌『Pipin』のモデルになった珠理(川島海荷)。モデルになって2年経ってもなかなか芽が出なかった。アパレルブランド「Leile Monica」の専属モデルオーディションに落ちたらモデルを辞めて田舎に帰るという珠理に、新見(千葉雄大)はなんとかチャンスを与えたいと思う。しかし、その新見の善意が、珠理の夢への道を閉ざしてしまうことになった。

いつもと違う、つらい『プリティが多すぎる』
珠理は、自信のないモデルだ。いつも自分とキヨラを比べて「私はこうできない」と「私もこうなりたい」の間で混乱している。

甘いものを控えている珠理の前で、太らない体質だからとカップケーキを頬張るキヨラ。
ファンにPipinモデルだと認知されていない珠理と、ツーショット写真をせがまれるキヨラ。
カメラを向けられ固まっている珠理の横で、シャッターを押されるたびにポーズや表情を変えるキヨラ。
キヨラと自分の差に打ちのめされ、珠理は撮影中に泣き出してしまう。

珠理「私、ずっとわかってた。私には才能がない。ここは自分の居場所じゃないって。私、モデル辞めます」
新見「そんなこと言わないで。いつもあんなにがんばってたじゃん」
キヨラ「良いじゃん、本人が辞めたいって言ってるんだから、辞めさせれば。キヨラ、今日もう帰っていいかな。だって、どのみちその腫れた目じゃ撮影続けられないでしょ」
珠理「キヨラちゃんは良いよね、才能があって。私も、がんばらなくても何でもできるキヨラちゃんみたいになりたかった」

キヨラは笑って撮影現場を去る。実は、キヨラは『Pipin』の前に専属モデルをやっていた雑誌をクビになった経験があった。そこから努力してトップモデルに返り咲いたのだという。「才能は、努力なしに花開くわけじゃないと思うな」という利緒(佐津川愛実)の言葉に、珠理はもう一度モデルをがんばってみようと決意する。

ここまでは、いつもの『プリティが多すぎる』だ。Leile Monicaの専属モデルオーディションに臨んだ珠理を見て、新見も何かこの子の力になりたいと思う。「みんなにチャンスを与えたい」という編集長・詩織(堀内敬子)の言葉もあった。新見が、珠理にチャンスを用意したいと思うのも当然のことだ。

新見は、アパレルブランド「TJラッシュ」の広告ページを任されていた。担当するはずだったモデルが来られなくなったため、その代打として新見は珠理を代役に推した。TJラッシュの担当者は、モデルとしての珠理を見て大喜び。珠理も自信をつけはじめ、大団円となるかに見えた。

やりがいに突き動かされた新見の失敗
珠理は、Leile Monicaの専属モデルに選ばれた。しかし、すでにTJラッシュの撮影は終了している。競合ブランドのモデルを同時に担当するのは、業界のタブーだ。さらに、Leile Monicaは色のついたモデルを嫌うため、他ブランドの広告に起用された珠理との契約を取り消すと告げてきた。

珠理「Leile Monicaのモデルになれば、キヨラちゃんみたいにトップモデルになれるかもしれないの。お願いします、これが最後なんです。お願いします。お願いします……」

TJラッシュの担当者に、新見は必死で土下座する。でも、土下座をすれば何とかなることばかりではない。珠理が新見の脚にすがって、土下座して泣いても、決まったことは覆らない。珠理は、Leile Monicaのモデルになることはできなかった。

TJラッシュの代打を立てるとき、新見が一人で判断せず詩織や利緒に相談していれば。
詩織や利緒が、業界のルールについてもっと具体的に新見に教えていれば。
珠理が、モデル・ファッション業界のルールについて勉強していれば。

「こうしていれば、こんな失敗は起きなかったのに」という後悔を何度繰り返しても、結果は変わらない。失敗が大きければ大きいほど、また、理想と失敗とのギャップが大きいほど、その記憶は何年経っても戒めとして自分につきまとう。文芸部で「エース級」の扱いをされてきた新見は、人生で初めてそんな大きな失敗と挫折を経験した。

新見が壁にぶつかり、それを乗り越える姿を描いてきた『プリティが多すぎる』。それを見て「明日も仕事がんばろう」と思えることも多かった。新見の成長していく姿を楽しみにしていたからこそ、今回のどうしようもない挫折がこたえる。

夢破れて田舎へ帰るという珠理。かつてPipinモデルだった編集者・瑠美(池端レイナ)の言葉が、小さな希望になる。

瑠美「それでもただ、目の前にあること一生懸命がんばってたら、いつの間にか自分の居場所にたどり着いてた。私は夢を諦めたわけじゃないよ。新しい夢を見つけたの」

思えば、新見は文芸編集部で「売れる本を作ること」にやりがいを見出していた。Pipin編集部でも、心寧(武田玲奈)を人気モデルとして発掘したときにはとてもイキイキとしていた。今回、周りが見えなくなってしまったのは、珠理の人生をどう動かすか考えることよりも、自分のやりがいに突き動かされてしまったからなのかもしれない。

仕事のやりがいや適性、関わる人に心を配ること、きっちりと結果を出すこと。それらに優先順位をつけたり、バランスをとったりすることを器用にできる人もいる。でも、そこで新見のようにつまづいてしまう人もいる。

珠理は、原宿を去った。他人の人生を左右した取り返しのつかない失敗から、新見は何を学んだか。最終回目前の9話は、12月13日(木)深夜放送予定(一部地域を除く)。

(むらたえりか

▽配信サイト
Hulu

ドラマ『プリティが多すぎる』(全10話)
日本テレビ系 10月18日(木)スタート 毎週木曜24時59分〜
出演:千葉雄大、佐津川愛美、小林きな子、矢島舞美、池端レイナ、黒羽麻璃央、長井短、武田玲奈川島海荷、森山あすか、中尾明慶、堀内敬子、杉本哲太
原作:大崎梢『プリティが多すぎる』(文春文庫)
脚本:荒井修子、渡邉真子
音楽:西口悠二、Chocoholic
ドラマ「プリティが多すぎる」オリジナル・サウンドトラック
制作:千野成子、 池田健司
プロデューサー:小田玲奈、松永洋一(R.I.S Enterprise)、森有紗
演出:久保田充ほか
制作プロダクション:R.I.S Enterprise
(c)日本テレビ
公式サイト:http//www.ntv.co.jp/pretty/

イラスト/まつもとりえこ