2018年もドラマや映画の主演が続いた女優の土屋太鳳。その最後を締めくくるのが映画『春待つ僕ら』だ。快進撃を続けているように感じられるが、本人は「意外に成長していないのかも」と自己採点は辛い。もっと成長するために――土屋が大切にしているものは“愛情”だという。

【写真】笑顔でインタビューに応じた、土屋太鳳フォト集

 青春もののヒロインを演じることが多い土屋は、元気で明るいイメージが強いが、女優としての土屋を強く印象付けたドラマ『鈴木先生』の小川蘇美役をはじめ、身体能力を強く知らしめた『るろうに剣心』シリーズの巻町操役、さらに『8年越しの花嫁 奇跡の実話』や『累 -かさね-』で見せた迫真の演技など、役柄や表現の幅は広い。

 本作でも、人づきあいが苦手で周囲に溶け込めず寂しい思いをしていた“ぼっち”女子の美月が、バスケに打ち込む男子たちとの出会いによって、自らの運命を変えようと努力する姿を、繊細な演技で表現している。土屋自身、10年以上芸能界に所属しているが「いまだに現場に入るときは『うまく話せるかな』とか『いま話しかけて大丈夫なのかな』みたいな気持ちになるので、美月の気持ちには共感ができた」と役柄に感情移入できたと話す。

 作品も続き、順調にキャリアを積んできたように感じられるが、本人は作品に対する感想をもらうたびに「女優を続けてよかったな」と実感はするものの「意外に成長していないな」と感じることもあるという。「来年、年女なのですが、これから自分はどのようにしていけばいいんだろうと悩むことがあります。年を重ねてきた女性としての表現や存在感をしっかり出していかなければいけない。もっと成長していきたい」。

 成長のために日頃から大切にしていることが、しっかりと“愛情”を持つことだという。「人が心を維持する上で大切なことは、愛情だと思うんです。草花に水が欠かせないように、人と人とのつながりの中で、愛情を忘れてしまったら、人間関係が成り立たないと思うんです」。

 しかし、愛情を持って生活をしていても、その愛情は一方通行になるなど、現実には厳しい状況や心が折れそうになることは多々ある。劇中の美月も、さまざまなことがあるたびに弱気になる中、なんとか克服しようと努力する。「悩んだり嫌なことがあったりしたとき、そこには絶対核になる理由があると思うんです。そこに向き合うことは大事」と持論を展開しつつも、それでも解決できないときは「とにかく走るんです」と力説。「自分が何で生きてきたと考えると、やっぱり体を動かすことなんです。初心に戻るという意味でも、走ることで複雑なことを単純化できることは多いです」と土屋ならではの解決法を披露してくれた。


 「まだまだ」と思う一方で、ここまで女優を続けてこられたことには大いなる感謝を示す。本作で共演した北村匠海とは、前述した『鈴木先生』で共演以来、約8年ぶりの再共演となる。「15歳ぐらいで共演した相手と、8年経ってまた一緒の作品に出られるというのは感慨深いです。あの頃は『これからどうなりたい?』みたいな話をしていた幼なじみみたいな感覚。当時一緒だった人で、すでに役者を続けていない人もいるので、よくここまでやってこられたという思いもあるし、ありがたいなという気持ちも強いです」。

 まだまだ女優業に対して不安がある中、作品が放送や公開されるたびに「まだ続けていられるんだ」という実感を持つという土屋。一つ一つ作品に丁寧に向き合い、思いを込めていけば「きっと伝わる」という信念を持って、これからも女優業を邁(まい)進していくことを誓っていた。(取材・文:磯部正和 写真:松林満美)

 映画『春待つ僕ら』は全国公開中。

映画『春待つ僕ら』に出演する土屋太鳳にインタビュー クランクイン!