毎年12月13日は「美容室の日」

昨日12月13日は「美容室の日」でした。ご存じでしたか?

これは、有名美容師の正宗卓氏(現在は西洋髪結社社長)が2003年に制定したものです。毎年12月は美容室(「美容院」も含む、以下同)の来客が多くなることと、「13」がBeautyの「B」に似ていることが理由とされています。

かなりこじつけの感もありますが、せっかくですから、最近の美容室・美容業界の現状を見てみましょう。

結論から言うと、美容業界は日本では数少ない長期安定成長産業であり、ある種のバブルと言えなくもない状況にあります。その一方で、競争も激しく、新陳代謝の盛んな業界と見ることもできます。

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増加が続く国内の美容室の数、20年間で+24%増に

まず、国内にある「美容室」の事業所数は、年度末調査に変わった平成9年末の19万8,889か所から平成29年度末には24万7,578か所へと+4万8,689か所増加しています(厚生労働省「衛生行政報告例」より)。20年間の増加率は+24.5%増でした。これは同じ期間に「理容室」が14万2,809から12万965ヶ所へと▲2万1,844か所減少(同▲15.3%減)したのと対照的です。

“確かに、家の周辺に美容室がたくさんあるなぁ”と感じる人もいるかもしれません。

また、美容室の数は平成12年度から現在まで実質的に18年連続の増加となっています。“実質的に”としたのは、微減となった平成22年度は東日本大震災の影響で調査対象外があったためです。

それにしても、大不況だったリーマンショック時でも増加したことは特筆すべきことです。 “美しくなりたい”、“美しく見せたい”という女性の願望には、景気変動も関係ないのでしょうか。

ちなみに、美容室と理容室は同じような名称ですが、業務内容は明確に区分けされています。詳細は省略しますが、美容室の業務は「化粧、結髪、パーマなどにより容姿を美しくすること」となっており、頭髪の刈込やカットが中心の理容室とは異なります。その結果として、男性が行くのが理容室(床屋)、女性が行くのが美容室となっているようです。

最近は若い男性が美容室に行くこともめずらしくありませんが、基本的には女性客が圧倒的に多いと見ていいでしょう。

美容室に従事する「美容師」は20年間で何と+57%増

このように美容室の数を見ると、美容業界は急成長産業ではありませんが、長期的に安定成長が続いていると見ることができます。次に、従業員数を見てみましょう。

同じ厚労省の統計によれば、美容室数の増加に伴い、そこで働く「美容師数」も平成9年末の33万3,153人から平成29年度末52万3,543人へと増加の一途を辿っています。20年間での増加率は+57.1%増ですから、美容室数の増加率を大きく上回るペースです。

その年によってバラツキはあるものの、ここ10年間は毎年平均約+1万人増加しています。平成29年度は約+1万4,300人増と、再び大幅な拡大傾向が見られました。美容師は人気職業なのでしょうか?

ちなみに、理容室で働く「理容師数」は同じ期間で▲12.3%減となっています。これは、おおむね理容室数の減少に沿ったものと言えましょう。

美容師には需給ギャップがある?

この数字だけを見ると、何となく人手不足という印象がなくもありません。しかし、「美容師」は国家試験に合格して名簿登録しなければ従事できません。この名簿登録される美容師は、直近10年間は毎年約1万8,000人です(平成28年度は約1万8,500人、平成29年度は最終結果未発表)。

つまり、毎年新たに約1万8,000人の新たな美容師が誕生しているにもかかわらず、統計上で増加している美容師数は約1万人に止まっているのです。

登録した全員がすぐ従事するわけではないとはいえ、明らかに大きな“需給ギャップ”が存在していることがわかります。単純に考えれば、毎年多くの美容師が“失職”している、もしくは、いつになっても働き口が見つからないということになります。

“美容室バブル”に変調の兆しも

こうした一種の“美容室バブル”に、変調の兆しが出ています。先日明らかになったデータによれば、今年2018年の美容室の倒産件数は1-11月累計で86件になり、年間では直近10年で最高となる可能性が高まりました。その要因は様々ですが、店舗過剰による売上不振が最大のようです。

確かに、全体の美容室数から見れば倒産件数はまだ多くありません。しかし、一般論として、バブルが弾ける時は、ささいなことがきっかけとなって、あっという間に悪化します。来年以降、この“美容室バブル”がどうなるのか注視したいと思います。

一方で、こうした“美容室バブル”を膨らませてきたのは、“美しくなりたい”という女性のあくなき願いです。この願望は、そう簡単に縮小しないかもしれません。それどころか、ますます拡大する可能性すらあるのです。何しろ、女性の“美しくなりたい”という思いは、紀元前の古代から続いているのですから。