発端は無料公開とTwitter
2018年某月某日、『将太の寿司』の作者である寺沢大介先生と『笹寿司』へ行ってきたので、その模様をレポートしたい。
……と言われても、何がなんだかわからない人も多いと思う。順を追って説明していこう。

2018年11月21日に、とあるツイートが一部で話題になった。

笹寿司でエゴサーチすると、、やたら笹寿司が悪者になってると思ったら。。どうやら漫画で悪者の笹寿司が出ているらしく。内容は知りませんが、伍十の笹寿司は悪くありません

— 京都 笹寿司.柿の葉寿司 伍十(ごとう) (@sasazushigotou) 2018年11月21日


京都にある『笹寿し 伍十(ごとう)』が「笹寿司」でTwitter内を検索してみると「笹寿司がとんでもない」「笹寿司がひどい」「笹寿司が悪い」といった、かなり笹寿司に対しての悪口が見られたという。

もちろんこれは『笹寿し 伍十』のことを指しているのではない。週刊少年マガジン誌で1992年から2000年にかけて連載され、ドラマ化もされた漫画作品『将太の寿司』『将太の寿司 全国大会編』の中に登場する悪役「笹寿司」もしくはその跡取り息子の「笹木剛志」のことを指している。

なぜ急に20年前の作品の話題になったのか。11月限定でスキマというサイトで、全話無料公開を行った(現在は終了している)ところ、さまざまな人達が改めて読み直したり、新たに作品に触れ、Twitterで語り合うという流れになったのだ。

作中悪役の「笹寿司」のあまりの非道っぷりに多くの人が「笹寿司が悪い」と言ったことを京都の『笹寿し 伍十』が目撃。上記のツイートへとつながった。

いわば『笹寿司 伍十』は『将太の寿司』によって風評被害を受けたとも言える。この事態に憂慮した作者が自ら『笹寿し 伍十』へご挨拶に伺いたいと、京都へ向かったのだ。

西大路七条にあるお持ち帰り寿司の『笹寿し 伍十』

『笹寿司 伍十』は京都の西大路七条の交差点にある。京都水族館鉄道博物館のさらに西側にあり、京都駅からだと京都水族館方面へ行くバスに乗って西大路七条バス停で下車するとすぐだ。

文字通り、笹の葉で包んだ「笹寿司」が名物。他にも柿の葉寿司かぶら寿司鯖寿司なども。お持ち帰り専門で、店内で食べることはできない。


お店を訪れると、Twitterも担当されている岩本さんが応対してくれた。

悪いのはマンガの「笹寿司」
寺沢:このたびは本当に申し訳ありません。風評被害というか……急に「笹寿司」を悪者扱いするツイートが増えてびっくりなされたでしょう。

笹寿し:とてもびっくりしました。ある日から突然「笹寿司許さない」とか「おのれ笹寿司」とかTwitterに現れまして。聞いてみたら、どうもマンガに「笹寿司」という悪者がでてきていると。申し訳ないことに、ドラマとかになったのは存じ上げていたのですが、マンガをしっかりと読んでいなかったもので、最初は気づかなかったんです。

寺沢:マンガの『笹寿司』には特定のお店をモデルにしたとかは無いんです。僕が連載を始めたときには、小樽にもまだそんなにお寿司屋さんはありませんでした。ネットで一部言われているような、このお店がモデル、というのも間違いなんです。なのでもちろん『笹寿し 伍十』さんとマンガの『笹寿司』は無関係です。まさか20年後にこうしてご迷惑をおかけするとは夢にも思わず……

笹寿し:いえいえそんな、こちらこそわざわざいらしていただいてありがとうございます。でも、まだ途中までしか読めてないのですが、マンガの『笹寿司』はそんなに悪いことをしているのですか。

寺沢:いやー、本当に「笹寿司(マンガ)」は悪いやつで。中には笹寿司の笹木ではなく、雇った人が勝手にやったこともあるんですが、かなりひどいことをやっていますね。

ーーマンガの笹寿司の悪行ですが代表的なものは以下の通りです
・主人公のお父さんの乗る船に細工をして転覆させ、後に障害が残る怪我を負わす
・その船に細工をさせたのも、騙して言うことを聞かせた別の寿司屋
・最終的にはその寿司屋に罪をかぶせた上に、乗っ取る
・主人公に協力した水産会社の船を全部壊す
・料理勝負のときに水産会社を脅して食材が手に入らないようにする
・料理勝負のときに、テーマの食材を買い占め
・対戦相手となるおじいさんに、腐った牡蠣を無理矢理食べさせる
・対戦相手の伝説の職人を、線路に突き落として大怪我を負わせる(正確には雇い人の所業)
・貴重なアサクサノリの産地にガソリン撒いて火を付けて全滅させる(雇い人の所業)

笹寿司:本当に悪いんですね……! びっくりしました。

寺沢:はい。「笹寿司(マンガ)」は本当に悪いので、今日はお説教をするために、笹木を呼んでおきました。

笹寿司:えっ?

笹木(?):ここが『笹寿し 伍十』か!

笹寿司:えええええ!?

寺沢:おまえがひどいことをするから、『笹寿司 伍十』さんにご迷惑がかかっているんだ! 反省しろ!!

笹木(?):ごめんなさいごめんなさい。

寺沢:この通り、笹木(?)も反省していることですし、どうかご容赦を。

笹寿司:いえいえそんな、ありがとうございます!

というわけで、無事に和解は完了。
最後はサインを前にお二人で写真を撮らせてもらった。このサインはお店に飾られるとのことで、訪れたら誰でも見ることができる。新たな『将太の寿司』の聖地誕生と言えるかもしれない。

なお、お店の外観写真や、サインの写真を撮るのは構わないが、店内を撮影前には一言欲しいそうだ。店内には、お客様の注文等を紙に書いたものが貼ってあるため、それが写り込むと困ってしまうからだ。一声かければ、面白い物も見せてもらえるかもしれないので、是非とも声をかけてみて欲しい。

『笹寿司 伍十』の「笹寿司」は、店舗だけでなく、JR京都駅でも購入可能だ。改札外では「ギフトキオスク京都店(八条口)」「ベルマート京都(八条口)」、改札内コンコースでは「グランドキオスク京都」「新幹線ホーム内(上り)ベルマートキオスク」で購入できる。京都旅行をした際には、ぜひ買ってみて欲しい。

そして、今回の記事を読んで『将太の寿司』を読み返したくなった人は、単行本を購入する他に、マンガBANG!で2019年1月末まで、MANGA ZEROで一部を無料のスタミナ制で読むことができる。

最新作の『ミスター味っ子 幕末編』最新3巻は2018年12月20日発売予定)も合わせて楽しんで欲しい。

■笹寿司 伍十
住所:京都府京都市下京区西七条北衣田町37
営業時間: 9:00〜18:30
定休日:水曜不定休
(杉村 啓)
笹寿司は紅鮭、小鯛、穴子の3種類。紅鮭と小鯛は翌日まで、穴子は当日中に食べて欲しいとのこと。柿の葉寿司とセットになったものもある