『黄昏流星群〜人生折り返し、恋をした〜』フジテレビ系・木曜22:00〜)最終回。

瀧沢完治(佐々木蔵之介)の同僚・井上英樹(平山祐介)は自殺未遂。不倫相手の目黒栞(黒木瞳)は失踪&糖尿病で失明しそう。

妻・真璃子(中山美穂)が思いを寄せる日野春輝(藤井流星)の母親(麻生祐未)は重病で余命わずか。

夫婦そろって周囲に不幸を振りまいて、こりゃあ最後は全員死んで終わってもおかしくないぞ……と覚悟を決めながら見た最終回。

すさまじい豪腕で伏線を回収しまくって、なんと(ムリヤリ)キレイにまとまって終わらせていた。

久々に抱き合った翌朝、離婚
よく分からない理由で春輝の母・冴の身の周りの世話をさせられていた真璃子。しかし、冴がホスピスへの入所を決めた途端、

「あの子から手を引いてちょうだい。あの子の人生にあなたはもう必要ない」

と言い出したため、すごすごと家に帰ることに。

ひとり暮らしするため、アパートを探しているような描写もあったのに、アッサリと完治の元に戻ってきちゃう真璃子もどうかと思うが、「帰ってきたのか」とすんなり受け入れ、そのまま井上のいる病院に直行すちゃう完治もどうかしている。

完治の方は、不正融資の責任を押しつけらて自殺未遂をした井上のため、真相を究明するべく、いきなり池井戸潤ドラマのようなノリに。

井上が子どもとオセロをしている動画を撮っていたら、常務から恫喝するような電話がかかってきて、たまたまその様子も記録されていた……というミラクルが起き、不正融資の真相は解明。

肩の荷が下りたからか、完治はベッドの中で真璃子と見つめ合い、なだれ込むように……!

これで夫婦仲が修復できたのかなー……と思いきや、翌朝、真璃子は離婚届を突きつけり。久々にヤッた次の日に離婚って、どういう感情なのか!?

「あなたの心の中にはもう別の人が住んでいる。それがすごくよく分かったの」

って、ボクにはよく分からなかったぞ。完治は栞のことを諦め、夫婦関係をやり直そうとしているように見えたんだけど……。

「わたしにも好きな人がいる」と言いつつ、最後まで春輝のことをバラさないのもズルイ。

不倫してるだの、好きな人がいるだのとお互いに知らされても、ほとんどモメることなく受け入れてきた淡泊な瀧沢夫妻。

しかし、さすがの完治も、妻が娘の元・婚約者と愛し合ってるなんて知ったら冷静ではいられなかったはず。感情を爆発させる完治も見てみたかった。

糖尿病なのにケーキをホール食いするなよ……
完治の前から姿を消し、どこかの港町で仕事をはじめていた栞は、指先に影響が出るほど重度な糖尿病の症状が出ているのに、ホールのケーキを食うというヤケクソな行動に。

病院で治療をしていないだけでもヤバイのに、ケーキのホール食いって……。さすがにアウト過ぎる。ゆるやかな自殺を考えていたのだろうか?

結局、仕事中にぶっ倒れてしまうのだが、そりゃあ自業自得ってもんだ。

ここでグッと存在感を放ってくるのが職場の先輩・みどり(美保純)。

これまでも栞に対して「あなた糖尿病でしょ!?」なんて言い出すデリカシーのなさを発揮していたが、そのデリカシーのなさがストーリーをグイグイ展開させる。

財布を忘れてきてしまったという栞に代わって、部屋まで取りに行ったみどりは、引き出しの中から完治の切り抜き&名刺を発見。

それをじっくり見ちゃうだけでもデリカシーゼロなのに、みどりは名刺の住所にハガキまで送ってしまうのだ。

「不倫は御法度」という銀行員に、不倫相手の近況をしらせるハガキを送りつけるデリカシーのなさは、ちょっとシャレにならないレベルだ。

こんなに不倫フレンドリーなドラマ、今時ないよ
完治と別れた真璃子は、「あの子の人生にあなたはもう必要ない」と言われた冴に呼び出され、今度は「これからも、あの子を見守ってあげて」と頼まれる。

なんだこの人、言ってることメチャクチャだよ!

とはいえ、春輝の口から飛び出した母親との思い出話を聞くと、冴はこんな支離滅裂なことを言い出しても仕方ないくらいクレイジーな人だということが分かる。

「ボクが中3の時、バスケ部を辞めて受験に専念しろって。辞めないならアナタを殺して私も死ぬって、台所から包丁出してきたことあったよね」

受験に専念させるため包丁を持ち出す母親もサイコパスなら、このヤバ過ぎるエピソードを、母親の愛情の深さを象徴する、ちょっといい話かのように語る春輝もサイコパスだ!

さて、そんな冴から「あの子を見守ってあげて」なんて言われ、イマイチ理解が追いついていない感じの真璃子の元に、みどりから完治へ宛てたハガキが届く。

これが封書だったら、わざわざ中身を読んで完治へ連絡をするようなこともなかったろうが、みどりデリカシーなくハガキで送っていたおかげで、真璃子は完治に電話をすることに。

いくら離婚済とはいえ、別れて3ヵ月しか経っていない元・夫に不倫相手の近況を伝えるために電話をし、さらには会いに行くよう促すとは……。離婚すると、そこまで割り切れるもの? これが大人の恋愛なの!?

そんなこんなで栞の居場所を知ることができた完治は早速、栞の元に駆けつける。

完治の娘から「お父さんと別れてください」と言われたこととか、糖尿病になってしまい、完治に介護の苦労をかけたくないと思ったこととか……その辺は全部スルーして再び結ばれることに。

エピローグは、「エーデルワイスカフェ」(第1話の「エーデルワイスを見てみたい」という伏線回収!)を開店して、仲良くふたりで切り盛りしている完治と栞。

栞の糖尿病がどうなったのかは不明! ……ちゃんと治療して寛解したのかな?

真璃子の方も春輝と上手くやっている様子。娘の美咲はよく分からないが、ロンドンから帰ってきてないようだし、教授と続いているのだろう。

瀧沢家全員が不倫相手と結ばれるという、まさかのハッピーエンドだ。

有名人が不倫スキャンダルを起こせば確実に大炎上する、コンプライアンスに厳しい昨今。

ドラマであっても、「不倫をするヤツはこうなっちゃうぞ」という破滅的な終わりを迎えることが多い中、これだけサワヤカに不倫を成就させちゃう不倫フレンドリーなドラマも珍しい。

ドロドロ不倫ドラマにしたいのか、純愛ドラマにしたいのか、はたまたビジネスドラマをやりたかったのか……? そのあたりが中途半端だったため、何だかワケの分からないドラマを見せられた感ばかりが残ってしまった。

再ドラマ化に期待!?
今回のドラマ版は、第1集に収録されている「不惑の星」をベースにしたストーリー(妻が不倫していなかったりと、だいぶ話は違うが)。

ラストに、家庭も銀行の仕事も捨てた主人公が、不倫相手と飲食店を開く……というのは原作通りで、あらぬ方向に突っ走ってしまったドラマ版のストーリーを、最後だけ強引に原作に寄せてきた形だ。

原作である漫画『黄昏流星群』は現在58巻まで刊行されている。

ワケの分からないドラマ版オジリナルのストーリーを展開するくらいなら、原作の他のエピソードを引用してきた方が、深みのあるドラマになったんじゃないかと思うのだが。

ちなみに、最終回で居酒屋の大将が長年待ち続けていると言っていた伝説のストリップ嬢「渚エリカ」は、第3集に収録されている「星より密かに」に出てくる大女優の名前。

また、食堂のおばちゃんが「俳句教室の先生と恋愛している」と話していたのは、第50集に収録されている「星光耿耿」のエピソードからだろう。

原作を読んでいる人だけがニヤリとできる小ネタはちょいちょいぶっ込まれていたんだけど……。

このように、まだまだいいエピソードが山盛り残っている原作『黄昏流星群』。今度は昼ドラか深夜ドラマとして、もっと思い切ったドロドロ展開での再ドラマ化に期待したい。

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『黄昏流星群〜人生折り返し、恋をした〜』(フジテレビ)
原作:弘兼憲史『黄昏流星群』(小学館刊)
脚本:浅野妙子
演出:平野眞、林徹、森脇智延
主題歌:平井堅half on me」(アリオラジャパン
音楽:得田真裕
チーフプロデューサー:高田雄貴 (フジテレビ)
製作著作:フジテレビ