妊婦が医療機関を受診した際、医療費に上乗せされる制度「妊婦加算」。多くの批判や制度の見直しの声を受けて、14日、厚生労働省は「当面の間、凍結する」と発表した。
■初診で750円上乗せ
そもそも「妊婦加算」は、妊婦の外来の受診にあたって胎児への影響を配慮した診察、考慮した薬を処方するなど「丁寧な診療への強化(評価)」を目的として、今年4月の診療報酬改定で導入された制度だ。
問診で「妊娠中」と答えた女性を対象に、初診で750円(再診で380円)が上乗せされる。自己負担(原則3割)では、初診で約230円(再診で約110円)。深夜や休日はさらに上乗せされる。
■「知らなかった」「コンタクトレンズの処方にも…」
しかし「妊婦加算」は周知されておらず、「受診後の支払い時に知った」という人や「報道ではじめて知った」という女性も少なくない。
また、「妊娠中か聞かれてないのに、加算された」「妊婦であることと関係のない、コンタクトレンズの処方にも加算が適用されていた」など、怒りや不信感を訴える声も多く挙がっていたという。
13日、これらの批判を受け、自民党の厚生労働関係の合同会議で「妊婦だけが負担を強いられるのは、少子化対策に逆行する」と、制度の見直しや廃止すべきだという意見が相次いだ。
■急遽「いったん凍結」を発表
翌14日、事態は急展開を迎える。「妊婦加算」の制度そのものを見直すため「当面の間は凍結する」との方針を明らかにしたのだ。年内に行われる国の審議会で、医師などの有識者の了承を得たうえで、実施に向けた手続きを進めるそうだ。
厚労省は、次の診療報酬の改定である2020年に判断する方針だったが、急遽見直しを迫られた結果となった。これには「当たり前」という意見から「制度の理由を聞けば納得」と様々な意見が寄せられている。
「あたりめーだ! 知っている人がどれだけいたの? 説明もなしに上乗せとか酷い」
「ただでさえお金かかる妊婦に上乗せとか…国が支援する、とか言ってませんでした?」
「妊娠して会社を早々に辞めざるを得ないのに医療費は多くかかると…つらい」
「妊婦への配慮として…という理由を聞くと納得できる。ただ知らない人が認知度が低すぎたのが批判の原因でしょ」
■妊娠の報告も気が重い?
しらべぇ編集部が全国20〜60代の女性361名に「妊娠の報告」について調査したところ、3人に1人が「報告をしづらいと思った経験アリ」と回答した。
働き盛りである20~30代では半数以上が「報告しづらい」と思うようだ。「迷惑をかける」「こんな時に、と言われるのでは」と報告するまでに勇気が必要なことがうかがえる。
■次の診療報酬改定は2020年
おめでたいことにも関わらず、妊娠の報告で気が重くなり、医療では料金上乗せ…「少子化対策」を訴えているのであれば、安心して妊娠・出産できるような基盤づくりが必要ではないだろうか。
2020年の診療報酬改定では、妊婦に対する支援体制の充実のため、制度自体を廃止する場合も代替策を検討するという。その際は、国民の意見に耳を傾け、周知させるよう努めてほしい。
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【調査概要】
方法:インターネットリサーチ「Qzoo」
調査期間:2016年6月24日~2016年6月27日
対象:全国20代~60代の妊娠経験がある女性361名(有効回答数)
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