来年2019年のNHKの正月時代劇で放送される「家康、江戸を建てる」直木賞作家の門井慶喜氏が原作の超話題作です。

番組ホームページより

関が原の合戦より10年ほど前の1590年、三河を中心に勢力を拡大していた徳川家康は、豊臣秀吉の命で江戸を中心とする関八州を新たな領地とする事に。しかし実際に赴いてみると「江戸」は飲み水を確保するにも苦労するような海辺の泥湿地でした・・・・・・。

ここからいかにして家康は八百八町・華の大江戸の基礎を造り上げたのか。今回はドラマを見るのに役立つ「江戸の上水」の知識をわかりやすく解説します。

「神田上水」を開設したのは誰か

神田上水を開設したのは誰か。この論争には2説あります。1説には家康の菓子司(かしつかさ/幕府専属パティシエ)・大久保藤五郎が作ったという説。もう1説は百姓の内田六次郎が作ったという説。「菓子司!?」「百姓!?」どちらも上水の開設には結び付きづらい印象ですが・・・・・・。1人1人、伝説の概要を簡単に見ていきましょう。

歌川広重「東都名所 御茶之水之図」国立国会図書館

大久保藤五郎説

家康の古い家来に、大久保藤五郎という人物がいました。彼はお菓子作りの名人。家康はそんな藤五郎にたびたび菓子をつくらせ食べていました。菓子作りのカナメは「水」。藤五郎はさぞ「水利き」ができるだろう・・・そう考えた家康は、天正18年(1590年)の夏、藤五郎に江戸城下の上水の普請を命じます。

伝説では、藤五郎は驚くべきことに約3か月で小石川目白台下の河流を神田方面に通し、神田上水の基礎となる部分を造り上げました(小石川上水とも呼ばれる)。住人達の飲み水の確保に大きく貢献した功績により家康から「主水(もんと)」の名を賜りました。

藤五郎は元和3年(1617年)7月6日死去するも、彼の子孫は代々「大久保主水」を名乗り、幕府御用達の菓子司となりました。

百姓・内田六次郎説

六次郎の説が有力視されるのは、内田家が明和期まで代々「神田上水水元役(みずもとやく/上水管理責任者)」を務めたという記録があるためです。なんでも神田上水の源水を「七井の池(現・武蔵野市井の頭池)」にしようと見立てたのはこの六次郎なのだとか(諸説あり)。

これを他の川と合流させながら東に引き、目白関口の「目白下大洗堰(めじろしたおおあらいぜき)」というダムに貯め、そこで水量を調節しつつ江戸の中心に向かって流す。この神田上水の巨大な構想に六次郎がどこまで携わったのか、はっきりとは分かりません。

しかし後の内田家の待遇からして、彼が神田上水の開設に大きな役割を果たした事は間違いないようです。

長谷川雪旦画「江戸名所図会 目白下大洗堰」Wikipediaより

ドラマでは・・・?

原作「家康、江戸を建てる」では身分も性格も全く違う大久保藤五郎と内田六次郎が偶然にも出会い、物語が大きく動き出します。「江戸のインフラをゼロから創る」というロマン溢れる大プロジェクト、ドラマではどのように描かれるのでしょうか。絶対に見逃せませんね!

(後編に続く)

NHK正月時代劇「家康、江戸を建てる」前編「水を制す」

【放送予定】2019年1月2日(水)[総合]後9:00〜10:13
【出演】佐々木蔵之介生瀬勝久、優香、千葉雄大高嶋政伸、松重 豊、市村正親 ほか
【演出】西谷真一

NHK正月時代劇「家康、江戸を建てる」 後編「金貨の町」

【放送予定】2019年1月3日(木)[総合]後9:00〜10:13
【出演】柄本 佑、広瀬アリス、林 遣都、伊原六花高嶋政伸、高橋和也、吉田鋼太郎市村正親 ほか
【演出】一色隆司

 

家康、江戸を建てる

トップ画像:番組ホームページより

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