▽優勝争いから残留争いまで手に汗を握る接戦、熱戦が続いた2018シーズンの明治安田生命J1リーグ。超ワールドサッカー編集部は、J1全18クラブの通信簿(トピックやチームMVP、補強成功度、総合評価)をお届けする。第8弾は11位のベガルタ仙台を総括!

◆シーズン振り返り

(C)CWS Brains,LTD
▽指揮5年目の渡邉晋監督にとって、悔しさが残る1年だった。明治安田生命J1リーグで同体制最高位の11位でフィニッシュしたが、当初の目標は5位以内。天皇杯においてもクラブ初の決勝進出を果たしたが、悲願の初タイトルには届かなかった。渡邉監督の「正直、今年は全然手応えがなかった」という言葉が物語るように、理想的なシーズンとはなっていない。

▽序盤こそ開幕5戦を3勝2分け無敗のスタートで飾り、2位の好位置につけたが、シーズンが進むにつれて、今年も不安定さを露呈した。8節から12節にかけて5戦未勝利が続き、徐々に順位を落とすと、27節から31節にかけてもシーズン2度目の5戦勝ちなし。志す攻撃スタイルも迫力に欠け、「44」の総得点は前年と変わらず、スケールアップとはならなかった。

▽ただ、今年11得点を挙げたFW西村拓真が今夏に海外移籍したエクスキューズもある。その西村がいれば、今年の結果はまた違ったかもしれない。また、ハマらなかった夏場の補強も響いた。チームとしてはFWジャーメイン良ら若手の成長に一定の成果を挙げたが、結果的に選手層や個々の能力、戦いの安定感という部分で上位との差を痛感させられるシーズンだった。

MVP
DF蜂須賀孝治(28)
明治安田生命J1リーグ28試合出場(先発26試合)/4得点
(C)J.LEAGUE PHOTO
▽攻撃陣をリードしたFW石原直樹をシーズン・オブ・ザ・イヤーに挙げたいところだが、今シーズンを不動の右ウィングバックとして過ごしたDF蜂須賀孝治の活躍は無視できない。今年の仙台は「44」の総得点のうちクロスからの得点が「18」。中央を崩しての得点がわずか「3」だったことを鑑みれば、蜂須賀らワイドプレーヤーの出来がチームの攻撃の良し悪しを左右した。その蜂須賀の成績は4得点5アシスト。オープンプレーからのクロス数もリーグ最多タイの138本だったことも踏まえれば、シーズンを通じた存在感は絶大だった。

◆補強成功度 《D》※最低E〜最高S
(C)J.LEAGUE PHOTO
▽補強は失敗と言わざるを得ない。新戦力の中で主力の座を射止めたのは、レンタル期間延長のMF野津田岳人や、FW石原直樹とMF中野嘉大の完全移籍で再加入組を除けば、川崎フロンターレから期限付き加入したDF板倉洸ぐらい。夏加入組においてもMF矢島慎也がケガに苦しみ、ヴィッセル神戸から加わったFWハーフナー・マイクも振るわず、復帰したFWハモン・ロペスやFWラファエルソンの両助っ人も機能しなかった。上述した前年と同じ総得点にとどまった攻撃面は、こうした不発続きの補強が少なからず影響したに違いない。

◆総合評価 《C》※最低E〜最高S
(C)CWS Brains,LTD.
天皇杯でクラブ最高の準優勝という成績を残したほか、J1でも渡邉体制最高位の11位。それだけを鑑みれば上々だが、今年の仙台が目指した先はもっと上にあった。特に、J1に関しては5位以内を目標に設定していただけに、11位フィニッシュという結果は到底満足のいくものではない。ただ、渡邉監督が「伸びてます。間違いなく選手もチームも」と語るように、今年は不作だったわけではない。

▽チーム全体としては、まだまだ未完ながら渡邉監督の志向するアクションサッカーをより浸透させ、先の天皇杯決勝でも浦和レッズを相手にボールを大事にするスタイルを貫き、果敢にゴールに迫るシーンを創出。結果的に、より試合巧者だった浦和に屈したが、そうした有力チームを相手にしても、自分たちのスタイルを武器に真っ向勝負に持ち込む力があることを緊迫した決勝の舞台で証明した。

▽また、ジャーメイン良やMF椎橋慧也ら若手の台頭も忘れることはできない。だが、浦和戦で露呈したように、個の力という部分でまだまだ改善の余地がある。それこそが、チームとしての戦い方を確立した今の仙台に足りない要素のように感じる。渡邉監督は来年も続投。板倉や野津田らレンタル組の去就が気になるところだが、来シーズンはさらなるバージョンアップに期待がかかる。
サムネイル画像