40代で生理がダラダラ続くなどのいわゆる生理不順を経験すると、更年期かな?と思う人も多いでしょう。40代のゆらぎ世代に起こる生理不順について、考えられる原因とその対策についてお伝えします。



生理がダラダラ長引く「過長月経」

生理(以下、月経)の正常な持続期間は、平均3~7日間といわれます。これに対して、2日間以内のものを過短月経、8日以上続くものを過長月経と呼んでいます。月経が8日以上ダラダラ続くものの中には、生活習慣によるホルモンバランスの乱れや加齢による機能性のものもありますし、病気のサインである場合もあります。それぞれの原因をみていきましょう。



生活習慣によるホルモンバランスの変化

月経周期は、エストロゲンとプロゲステロン、2つの女性ホルモンの分泌量の変動によって変化しています。この2つのホルモンは、自律神経の影響を受けやすいものです。ですから、いつも何気なくしている生活習慣によっても、実はホルモンバランスが変化しやすいのです。例えば、つい寝坊していつも朝食抜きとか、お菓子類を食事替わりにするといった食生活の偏り、夜更かしや睡眠不足といった不規則な生活は自律神経に影響します。こうした不摂生が女性ホルモンの分泌の乱れにつながり、生理不順をもたらすことはよくあることです。気持ちの面でも、仕事や人間関係などのストレスが重なると、なおさら影響は大きくなります。 自分の生活に問題点や改善すべきことはないか振り返ってみましょう。規則正しく3食バランスよく摂ることや、早寝早起きといった生活リズムを整えること、運動や趣味などでストレスを適度に発散する工夫などを、まずは意識してみることが大切です。



更年期の始まりであることも

40代前後であれば、更年期の始まりということも考えられます。 日本人女性の平均閉経年齢は約50歳といわれており、閉経の前後それぞれ5年ほどの計10年間を更年期と呼んでいます。更年期は一般的には40代後半頃から始まるといわれますが、早いと30代後半から、遅いと50代半ばから始まるともいわれ、かなり個人差がみられます。 更年期になると、月経の期間や量、間隔が変わってくるなど、いわゆる月経(生理)不順が起こり始めます。 更年期による月経の変化でまずみられるのは、周期が短くなる「頻発月経」です。例えば、毎月1回約28日周期で月経が来ていたのが、約22日周期などと短くなります。経血量も通常の月経のときより少なくなり、月経持続期間も短くなりがちです。 理由としては、生涯にわたって排卵される卵子の数がもともと決まっていることが関係しています。更年期になると正常な機能を持つ卵胞が減少するため、卵胞から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)の量も低下します。すると、卵巣に対して「もっと働きなさい!」という指令が脳の視床下部から脳下垂体へ降りて、卵胞刺激ホルモンが多く分泌されるため、一時的に卵巣が刺激されて卵胞の発育が短期間に進みます。そのため、通常の間隔で来ていた月経よりも、月経から排卵までの期間である卵胞期が短くなるため、全体的に月経周期が短くなるのです。 さらに卵巣機能の低下が進むと、脳が一生懸命指令を出しても卵巣の反応がより鈍くなってくるので、ホルモンバランスが崩れてきます。こうなると、月経周期の長短にかかわらず、月経持続期間が8日以上の過長月経となるケースが増えてきます。女性ホルモンのうち、特にプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量が減少し、エストロゲンは少量分泌が続きます。すると、子宮内膜が十分に厚くならないうちにすぐはがれて体外へ排出されてしまうために、出血がダラダラ続く過長月経の原因になることがあるのです。特に更年期の場合、排卵を伴わない機能性出血であることが多くなってきます(たまに排卵していることもあります)。 それよりもさらに卵巣の働きが衰えてくると、月経周期が39日以上の「稀発月経(きはつげっけい)」となり、月経も2ヶ月に1回程度など、回数が少なくなります。経血の量も少なくなるため、排卵していた頃の出血に比べると、さらっとした赤い出血だったり、茶褐色や黒っぽいものになったりする場合もあります。 そして、最終月経開始日から1年経過しても月経がない場合、閉経となります。完全に閉経するまでの変化は個人差があるため、お伝えしたような順序の人もいれば、行きつ戻りつ徐々に周期が長くなる人、頻発月経からいきなり閉経になる人などさまざまです。 閉経後も、ごく少量のエストロゲンは脂肪細胞などから分泌されます。とはいえ、閉経に向けてホルモンバランスが崩れると脳の司令部が混乱するため、自律神経系も乱れ、のぼせやほてり、発汗、冷え、だるさやめまい、頭痛、イライラや抑うつといった精神的に不安定な状態や、不眠といった心や身体の不調を来します。このような「更年期症状」は、多かれ少なかれ誰でも経験するものではありますが、日常生活に大きく支障を来す場合には「更年期障害」といって治療が必要になります。病院やクリニックを受診して、ホルモン補充療法や漢方、向精神薬などの薬の処方によって症状コントロールをしたり、つらい症状や悩みについて専門家の先生からカウンセリングを受けたりして、生活習慣を改善することで症状が緩和されることなどもあります。



低用量ピルの服用

低用量ピルを使っていると不正出血が起きるときがあります。不正出血の起こる病気を調べて特に異常がない場合、ピルの影響で起きている可能性があります。 飲み忘れが続いたときや、体調不良で十分にピルが吸収されていないときも不正出血を起こします。 またピルをはじめて使用するときは、生理にブレーキをかけることになるので、少量ずつしか出血しなくなって、いつまでもダラダラ生理が続くようなケースも多くなります。



婦人科系の病気の可能性

40代で生理が長引くという症状は、もしかしたら身体に潜む不調のサインということも考えられるので注意が必要です。



可能性のある病気

子宮筋腫や子宮腺筋症では、レバーのような血の固まりが大量に出る「過多月経」を伴うことが多く、貧血を併発していることも多いものです。また同じく良性のものですが、子宮内膜ポリープが子宮内膜に発生している場合も、過多月経の症状が出ることが多くなります。これらの疾患の治療法としては、病状の程度によってホルモン剤治療をおこなったり、筋腫やポリープでは摘出手術をおこなったりする場合もあります。 生理がダラダラ続く原因の中で、特に重大なものは子宮がん(子宮頸がんや子宮体がん)です。初期の段階では痛みなど伴わないため自覚症状に乏しく、見過ごされやすいので非常に注意が必要です。 そのほかに考えられる病気としては、40歳代にかかることの多い子宮内膜増殖症があります。この病気には、子宮体がんに進行するリスクのタイプもあるといわれています。 ちなみに更年期世代でも、40代ならばまだ出産が可能な年齢でもあります。妊娠による出血というケースもゼロではないので、可能性がないか確認することは必要でしょう。



不正出血が続く場合は?

<理由>

お伝えしたように、更年期は加齢による自然な月経の変化による出血なのか、病気が潜んでいることによる不正出血なのかの区別がつきにくい状態といえるでしょう。



<対策>

普段から婦人科や更年期外来などで検診を受けることが大事です。産婦人科医などの専門医による血液検査や内診、超音波検査などの検査を受けましょう。定期的に子宮や卵巣をチェックすることが、トラブルを未然に防ぐことにつながります。 大量出血があったり、不正出血が続いたりして心配な場合はすぐに受診するようにしましょう。 現代女性の人生を80年と考えると、残りは30年余りにもなります。この時期をより健康な状態で家族や友人と過ごすために、知識を持って無理せず我慢せず、自分の身体に向き合って、体調の管理をしていきたいですね。



執筆者:青井 梨花(あおい・りか) 助産師・看護師・タッチケアトレーナー。病院や地域の保健センターでの勤務を経て、株式会社 とらうべ 社員。妊娠・出産・育児相談や女性の身体の悩みに関する相談に親身に応じ、赤ちゃんタッチ講師も務める。一児の母。 監修者:株式会社 とらうべ 助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士などの医療職や専門家が在籍し、医師とも提携。医療や健康、妊娠・出産・育児や女性の身体についての記事執筆や、医療監修によって情報の信頼性を確認・検証するサービスを提供。

参考文献> 医療情報科学研究所編 「病気がみえるvol.9 婦人科・乳腺外科」 株式会社メディックメディア 平成29年3月 第3版第6刷



40代で生理が長引くのは更年期の証拠?ホルモンバランスを整えるための対策