メリックス 大髙絵梨社長

メリックス 大髙絵梨社長

給食企業の中でも、小・中学校・保育園・企業・病院・施設等の給食受託業務だけでなく、スポーツ栄養にも深い関心を持ち、積極的にアスリートへの食事提供に取り組んでいるのがメリックス(株)である。同社は某プロ野球球団の寮・球場の食事提供業務受託開始以来、信頼を積み重ね、アスリートの食事作りに取り組んでいる。どのような食事提供を通して、アスリートの心と体をサポートしてきたのか。大髙絵梨社長に、アスリートへの食事提供の工夫点やスポーツへの熱い思いを聞いた。

〈アスリートのための食事提供に全力投球〉
――スポーツ栄養事業について教えてください


弊社は、プロスポーツ選手向けの食事提供業務を始めて以来、長年にわたりプロ野球球団の寮・球場のお食事作りに携わってきました。当時、幣社のお食事を召し上がっていたお客様がコーチやチームスタッフとなられた今でもご縁を頂いている事は、大変ありがたく光栄なことです。

その中で海外遠征時には、チームに同行することもありました。先代の父、大髙巽は持ち前の英語力を駆使し、チームの遠征が始まる前から遠征中盤にかけて、宿泊先ホテルのシェフや食材調達業者と交渉し、現地でも選手が慣れ親しんだ日本の味を再現。日本から取り寄せた食材と共に栄養バランスを考慮したメニューをご提供しサポートに努めておりました。

――提供メニューについて詳しく

ありがたいことに、弊社は朝食・昼食・補食・夕食と、アスリートの方が食べる機会すべてに携わらせて頂いています。メニューや提供方法は、競技特性、試合日・練習日、チーム方針による練習時間や、ホーム・ビジター、ご提供場所によって変わります。1日トータルのエネルギー量やPFC バランスを考慮し、競技内容に合わせ、スポーツ栄養学に則ったお食事をご提供。どのようなメニュー構成で品数を揃え、ご提供するのか、様々な工夫を施しています。

例えば、競技によっては試合日の朝食・昼食は限られた時間内で食べる必要もありますので、より自分に合った食事を選べるように基本的にはビュッフェスタイルでご提供。具体的な品数の例として、朝食はメニュー28品、飲料8種、昼食はメニュー9品、飲料6種をご用意しています。ビュッフェスタイルでも、特に摂取頂きたい野菜・フルーツ・乳製品は個々にご提供したり、毎日メニュー内容を変えることにより、飽きずにバランス良く食べて頂けるよう務めております。

試合後の補食も、スピーディーな栄養補給をしていただくため、手作りのおにぎり2種と、添加物不使用・グルテンフリーのフィナンシェタイプ3種の補食をご用意。補食メニューも1日トータルのエネルギー量とPFCバランスを考慮し、提供しています。

また、夕食の品数の例としてはメニュー14品と飲料8種をご提供。一日の試合や練習で疲れた選手の心と体の栄養補給を出来る貴重なお食事なので、一皿ひとさら楽しみながら意識して食べて頂けるよう、メイン・サブメイン・副菜・サラダ・汁物等を個別にご提供しております。
メリックス自慢の「アスリート弁当」

メリックス自慢の「アスリート弁当」

〈「現場の力」に誇り〉
――かなりの品数をご用意されているのですね


品数だけではありません。いつ、どこで、何を、どのように提供すべきか、季節や天候、シーズンの序盤・中盤・終盤等を加味し、選手の嗜好にあったお食事作りをしています。

1人ひとりの1皿ずつの摂取率のデータをとり、平均的に必要なエネルギー量を理想のPFCバランスで摂って頂けるよう、献立内容・提供方法を追求するとともに、食材の選定、調理法にもこだわっています。

1年約300日、試行錯誤を繰り返しながら、いかにお客様と選手の皆様のご要望を日々のお食事に反映していけるか・・・毎日実行・継続してくれる現場の力とチームワークが我々の強みであり誇りです。

選手やチームの方々に評判のお店を教えてもらい、時には視察・試食させて頂き、そこで得たインスピレーションを日頃のお食事に反映することもあります。また、遠征時のお弁当には、弊社スポーツ栄養チーム&広報手作りのオリジナルラベルに栄養メモと応援の気持ちを添えてお届けしています。

長年かけて、選手やコーチの皆様とコミュニケーションを図り、信頼関係を築き上げながら色々な取り組みをさせて頂けるのも、弊社の強みです。

細かい調理技術が光る

細かい調理技術が光る

〈最新のスポーツ栄養を社内で共有〉
――日々、進化・発展するスポーツ栄養の最新の情報はどこから入手されているのか


入社前から、栄養士ではない私でも参加できる日本スポーツ栄養学会年次大会をはじめ、ストレングス・コンディショニング関連の会合に参加し、弊社スポーツ栄養担当者たちには情報を連携しておりました。本格的な活動は、私がメリックス(株)に入社した2015年9月に日本スポーツ栄養学会の賛助会員として弊社が加盟してからです。

学会で入手した情報やネットワークは社員と共有し、会社にその最新の知識を蓄積しております。日々アップデートされる情報をどうインプットし、お客様のお食事にいかにアウトプットするかを常に考えています。給食業界では、献立作成を中心とする日々の栄養士業務に専念されている管理栄養士・栄養士の方も多いかと思いますが、せっかく専門知識を習得し資格を取られたからには、様々な形で更なるインプットとアウトプットの機会を持つことは大切だと思います。

2016年4月には、社内にスポーツ栄養チームを発足し、チームで学会に参加し、その情報を存分に生かせるよう取り組んでいます。また、弊社顧問の公認スポーツ栄養士の先生と月次で情報交換や勉強会を行い、全社に向けた講習会も定期的に開催しております。講習会ではスポーツ栄養チームのメンバーだけでなく、スポーツ栄養や食育、栄養学に関連する知識習得に興味を持つあらゆる部門の社員も参加しており、社内にスポーツ栄養をはじめとする栄養学の学びを楽しめる環境を構築し、社員が成長できる機会を創出しています。具体的には、食育ワークショップや、ブランド力アップセミナー等のセミナーを通し、管理栄養士・栄養士・調理師である社員の地位向上につながる取り組みを行っております。社員はみんな個性あふれる人財です。1人ひとりが違う感性を持ち、様々な可能性を秘めています。部署や役職、業務内容を超えて共有することが、何より全社の意識向上とお客様や社会への還元に繋がると考えています。

大髙社長とスポーツ栄養チームの皆さん

大髙社長とスポーツ栄養チームの皆さん

――アスリートへのサポートを企業として取り組む強みは

日々のお食事作りをお客様や選手の皆様と作り上げていける現場で、様々なデータとノウハウを蓄積しているからこそ、ニーズに合わせ、寄り添ったサポートをできる強みが弊社にはあります。

食が心を育て体を作ります。選手の心と体の栄養補給を、我々が提供するお食事からとってもらえるよう、日々願っています。また、企業で取り組むことで、各種メーカー様や専門職の方々などとのコラボを通し、トータルでサポートすることができると思います。

多岐にわたるスポーツ・競技団体やアスリートの方々とのご縁に加え、学術機関やドクター・専門職の方々等、給食会社という公共性のある企業だからこそ頂けるご縁やサポートを、アスリートの皆様だけに留まらず、幅広いお客様に還元している事も強みと捉えております。多方面の方々とのコラボやノウハウを食に携わるプロが集結し、まだ世に生まれていない“ あったらいいな" というサポートをどんどん生み出していきたいです。そして、来春オープン予定の弊社1階テストキッチンが、そんな皆様を結びつけるラボ(研究所)になる事を夢見ています。

〈アスリートのトータルキャリアマネジメントも視野に〉
――これからどんな事業を展開されたいか


アスリートの方々の中でも、年収・環境の差があり、食事やトレーニングにかけられる予算も違い、一辺倒のサービスに正解はありません。また、セカンドキャリアの構築も重要なテーマと捉えます。選手生活を終えても、その後の人生を豊かに生きられるようサポートをしたいです。

日本で活躍する外国人アスリートからは、日本で選手生活を送る上で抱える悩みや課題を多く聞きます。

それらのニーズを考えると、従来のお食事を通した栄養サポートに留まらず、もっと広い視点で包括的にアスリートの方々を支えるマネジメントサービスの必要性を感じます。私のバックグラウンドである会計・金融・ファイナンシャルプランニングなどの要素と、メリックス(株)が長年培ってきた栄養サポートのノウハウをミックスさせて、アスリートのライフプランニングに深くコミットするようなチャレンジを…例えば、海外で活躍する日本人アスリートの財務会計サポートや、日本で活躍する外国人選手の食・生活サポートなど、財務会計やエージェント業も含め、選手のトータルキャリアをサポートする事業を各業界の専門家とのネットワークを駆使し、展開したいと考えています。

アスリートから求められる強力なチームへ―最後に、2020年まであと2年を切りました。アスリートと栄養サポートへの思いをどうぞアスリートは1つのプレー、1回のチャンスに人生をかけていらっしゃいます。そして、アスリートを支えるスタッフの皆さんやチームのフロント・コーチ陣も人生をかけて選手やチームをサポートされています。だから、そのパートナーとしてサポートさせていただく私たちも、一食一食、一皿ひとさらに魂を込めて取り組んでいます。

チャンスが来た時に、そのチャンスをいかに活かせるか、選手が常にベストパフォーマンスができるような心と体のサポートに、私たちができることは何かを常に考えております。食べることが苦痛になっている選手もいらっしゃいます。その方たちが、1食でも楽しく、おいしく、幸せを感じてもらえたら…「おいしいしあわせは、生きるエネルギー」をモットーにする弊社だから出来る「心と体の栄養補給」を合言葉に、アスリートサポートにまい進して参ります。

私自身が1ファンであることを忘れないため、スタジアムには足を運ぶようにしています。1観客になること。アスリートの皆様は、日本の文化づくりの大事なピースを担ってくれている大切な宝です。その方々が日頃どんなステージで活躍しているのかを忘れず、私たちも危機感をもって、初心を忘れずに毎日が勝負と思ってサポートしています。

そして、文化を絶やさないためにも、アスリートの方々のセカンドキャリアサポートを訴え、日本プロ野球OB クラブの特別賛助会員として活動しております。何かあったら絵梨ちゃん、と頼ってきてくれるアスリートの方々が、何かあったらメリックス、と言ってもらえるように、多くの同志を巻き込み、強力なチーム創りを目指しています。

〈メリックス株式会社代表取締役社長・大髙絵梨氏 プロフィール〉

メリックス 大髙絵梨社長

米国大学卒業後、監査法人、外資系金融機関を経て2015年に同社に入社。2018年4月、3代目代表取締役に就任。米国公認会計士・AFP の資格を持つ。

〈メリックス株式会社 企業概要〉
・本社所在地東京都千代田区神田司町2-7-2ミレーネ神田PREX8階
・業務内容=給食受託業務(企業、病院、福祉施設、学校、保育園等)、社員寮・研修所・保養施設等の管理・運営、スポーツ栄養・アスリートマネジメント、レストラン経営

〈給食雑誌 月刊 メニューアイディア増刊号2019『アスリートとスポーツ愛好家のためのレシピ』より〉

メリックス 大髙絵梨社長