開始早々、グアダラハラに先制点献上 内田が失点場面を回想「釣られたね」

 鹿島アントラーズは現地時間15日のFIFAクラブワールドカップ(W杯)準々決勝グアダラハラ(メキシコ)戦で開始早々に失点して難しい戦いを強いられたものの、3-2と逆転勝利を飾り、19日の準決勝でレアル・マドリードスペイン)と対戦する権利を得た。

「(失点は)釣られたね。俺は自分のマークを外してニアに行って、数的不利かなって言うのがあって、数的不利なので人に付こうか、ニアを消そうか考えて、ニアにパッと動いたら(ファーでマークしていた選手に)ボールが来ちゃったね。まあ、ああ言う駆け引きというか」

 鹿島の元日本代表DF内田篤人が振り返ったのは前半3分の失点シーンだ。メキシコ代表MFイサーク・ブリスエラが右サイドで仕掛け、元日本代表DF山本脩斗を破ってペナルティーエリア右まで侵入してクロスを上げる。センターバックの二人もニアに引っ張られたことで空いたゴール前を内田が埋めに行ったが、頭を越されてもともとマークしていたFWアンヘル・サルディバルにヘディングシュートを決められた。

 後半にグアダラハラが落ちてくるといった情報は「全然なかった」と内田。ロッカールームで理由について話したという。

「なんで後半、楽になったかはいまいちよく分かってない。向こうが落ちたのか、俺サイドは押し込んで(土居)聖真、ヤス(遠藤康)に(チョン・)スンヒョンから直接当ててほしいよと言った。ある程度ボールが回るようになってきて、向こうが崩れたのか、向こうが落ちたのか、ちょっと分かんない」

内田が前半の間に考えていたのは? 「1点取れれば変わる。2点目取られたら終わる」

 そう明かした内田だが、鹿島が苦しい前半を1失点で凌ぎ切り、後半の巻き返しにつなげたことは確かだ。

「(早い時間帯に)失点しちゃったので1回戻ろうかなと。そこから後半前に行って押し込んだら行けるなと思ったね。そこからヤスのスルーパス、(永木)亮太のスルーパスが出て。あれは質が悪かったけど、押し込めば意外にいけるなと」

 前半はボールを持っても相手のプレッシャーに対して効果的にパスをつなぐことができず、そこから崩しの起点になるパスも出せなかった。1点リードされたところから攻め急ぐより、なんとか全体を落ち着かせようとしていた理由を内田はこう説明している。

「向こうの選手は球際で止まらない。サイドバックとかセンターバックでも(ボールホルダーに)ガシャガシャガシャッてくるので、やっぱり落ち着いてパス回しっていう感じではなくなってくるから。前半はちょっとボールを出すところが見えないというか。正直戸惑った部分があるので」

 前半は1失点で乗り切ったことについて「(グアダラハラは)強いな、良いチームだなと思いましたよ」と内田。そうした状況で「1点取れれば変わるなと。2点目取られたら終わるかな」と前半の間に考えていたという。それは後半にMF永木の同点ゴールをアシストし、内田のパスから逆転につながるPKを獲得した土居も「2点目取られたらきついと両サイドにも言ってました。追加点はやらないでくれと」と同じことを話していた。

後半の出来に内田も一定の手応え 「やっぱりブロックかなという感じだね」

 前半は高い位置からボールを取りに行くMFレオ・シルバと永木の間をどんどん突かれた。MF三竿健斗を怪我で欠くボランチのところでどんどんやられたが、後半は左サイドにレアンドロに代えてMF安部裕葵を入れ、守備のブロックを組んだことでグアダラハラの縦を切り、強引に中央を破ろうとして来たところでレオ・シルバらのボール奪取が増えた。

「前にプレスに行くよりも、ブロック作ったほうが守りやすいなという感じだったかな。カウンターで聖真がいたり、セルジ(セルジーニョ)がいたりというのが前半見られたので、後半もっとオープンになって全体的に上下で行き来するシーンが増えた」

 後半に入って守備のブロックが効果を発揮したが、その点についても内田は一定の手応えを口にしている。

「ボールに行くっていうよりは、まずブロックを作って、そこに入ってきた選手のところに付いて行くというかね。ずーっとポジション入れ替わりでいろんな選手が、いろんなところでボールを持てるチームというのは、やっぱりブロックかなという感じだね。自分たちで守ったほうが勝ちっていう」

 そう語る内田だが、個人としても「前半は俺も全然良くなくて、ボールも収まらなかったし、見てるところも悪いなと自分で思ってた」と感じていたという。

「これはもうちょっと後半しっかりやんなきゃなと、ハーフタイム自分で思ってましたけど(笑)。ある程度後半は高い位置でいけそうな場面も上手くきたので、最初あんま良くないところから立ち直らせるというのは勉強してきたからね。良い時、悪い時があるから。それでも最低限の仕事をしないといけないと思ってました」

ドリブルで存在感を放った安部を称賛 「Jリーグよりも彼のドリブルは生きる気がする」

 そうした状況で内田は自分が攻撃の起点になるより、他の選手たちが高い位置でボールを持って起点になるためのポジショニングを意識した。

「後半は(右サイドバックの)俺が結構高い位置を取って、ヤスか聖真が降りてきてもセンターバックやサイドバックが付いていかないので、自分がもらうというよりは自分が上がってそこに入ってきてもらうイメージですかね。前半はもらおうと思ってたけど、上手くいかなかったので、俺が囮になって他の選手に使ってもらおうかなって。縦パス一本なんだけど、やっぱり15メートル、20メートル、ボールのラインがくっと上がるとやっぱり違うので」

 そうした内田のポジショニングも組み立ての部分で奏効したが、左に入った安部がドリブルで一人は剥がして相手を後手に回らせる効果が出たことも確かだ。その安部について国際経験が豊富な内田は語る。

「裕葵はJリーグよりも、突っ込んできてくれるほうが彼のプレースタイルと言うか、ドリブルは生きる気がするね。Jリーグは突っ込んで来ないもんね。抜きにくいというか。こっちは足出してボールを取りにきてくれる。彼みたいに、逆だったり、スピードでキュキュッというスタイルの選手は効くかもしれない。大柄なパワー系のほうが効くかもしれない。後半に入ってきたから元気だったのもあるけど(笑)」

レアルとのリベンジマッチへ 内田も思わず「ここまで来れたのは、ちょっと感慨深い」

 グアダラハラ戦の前には、レアルのことは考えず目の前の試合に集中する重要性を強調していた内田。鹿島にとっては2016年大会決勝以来(延長戦の末に2-4敗戦)、内田にとってはシャルケ時代以来のリベンジの機会となる。

 そんなレアル戦に向けて、内田らしく締めくくっている。

「まあ、シャルケで(欧州CL)やりましたけど。誰がどう見ても世界のトップが集まってるクラブとやれるチャンスは少ないと思うので。スペインに行くかチャンピオンズリーグに行くしかない。このクラブ・ワールドカップもそうだけど。チャンピオンズリーグで勝てなかった時に、やっぱ勝てないなと思った。追い詰めたけど、勝てないんだなと。そのリベンジのチャンス。期待しなかったよ。鹿島に来てレアルとやれるっていうチャンスをみんなでつかんで、ここまで来れたというのは、ちょっと感慨深い。(表現が)合ってるのか知らないけど」(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

内田篤人がクラブW杯逆転勝利の舞台裏を激白【写真:AP】