このほどアメリカで、到着空港に荷物を降ろし忘れた旅客機が次のフライトのため離陸してしまった。しかしその荷物が特殊なものだったため、旅客機は離陸した空港に引き返したという。『The Seattle Times』『New York Post』などが伝えている。

今月9日の午後、米ワシントン州にあるシアトル・タコマ国際空港を離陸しダラスに向かうサウスウエスト航空3606便が、途中で引き返して戻って来た。理由は機内に積んでいた「人の心臓」にあった。

心臓はカリフォルニア州サクラメント国際空港から早朝便で到着した後に、機内から降ろされるはずだった。しかしそのまま旅客機は、3606便として離陸してしまったのだ。

移植のために空輸されたのであろう心臓を、一刻も早く戻って降ろさなければならないことは一目瞭然であった。サウスウエスト航空では、この心臓を必要とする誰かのために同日の午後には旅客機シアトルに引き返す決断をした。

同便に搭乗していたアンドリュー・ゴットシャルク医師(Andrew Gottschalk)によると、機長からのアナウンスでシアトル・タコマ国際空港に戻る理由が告げられた時、搭乗客らは「人の心臓」を積んでいることに対してゾッとする人もいたようだ。また民間の飛行機が心臓を運んでいることに驚きを隠せない人もいたという。

しかしインターネットが使える一部の搭乗客は、これから移植を受けるであろう患者のことを思ってのことか「移植する心臓がどれくらいの時間を保てるか」を検索していたそうだ。

離陸してから3時間後にシアトルに戻ってきた3606便は無事、心臓を降ろして5時間遅れでダラスに向けて再度離陸した。この時、搭乗客のほとんどが「人の命を救うことができた」と安堵していたというが、ゴットシャルク医師は「重大な過失だよ。心臓はカリフォルニアからワシントンにいって、その後アイダホ、そしてまたワシントンに戻ってきたんだから」と話している。

そんなアクシデントがあった直後、サウスウエスト航空のスポークスマンであるダン・ランドソン氏(Dan Landson)は「可能な限り迅速にシアトルへ大事な積み荷を届けることが必要不可欠だったため、3606便を引き返す決断をしました。私達にとってお客様の安全と毎日輸送する荷物の安全な配送が最も重要なのです」と声明を発表。12日の時点で、多くのメディアがシアトル周辺の病院は今回の臓器移植には関わっておらず、心臓がどこに運ばれたのかは不明であるとしていた。またワシントン州カリフォルニア州の「臓器調達機関(regional organ-procurement organizations)」のスポークスマンらは「通常は移植のための心臓輸送に民間航空機を利用することは決してありません。我々は専用機を使います」と述べていた。

しかし『The Seattle Times』は13日、このたび輸送された心臓はワシントン州レントンにある「LifeNet Health」という組織バンク(心臓弁や血管などを処理、保管、提供する機関)に届けられたことを公表した。組織バンクのスポークスマンは「9日の時点では心臓の移植対象者はおらず、組織は凍結保存され、今後心臓弁などの手術が必要な人に使われます。移植臓器は提供者が亡くなってから48時間以内に組織バンクに到着することが必須ですが、今回はアクシデントがあったにもかかわらず、36時間で到着することができました」と語り、心臓が無事届いたことを明かしている。

昨年の『ダラス・ビジネス・ジャーナル(Dallas Business Journal)』の記事によると、多くの航空会社は収益を上げるために遺体や移植用の臓器を輸送する企業と協力することもあるという。心臓の場合、血流が停止してから移植対象者の中で血流が再開されるまでの時間(総阻血時間)は4時間と言われる一方で、時間に若干の余裕がある組織バンクが民間の航空会社を使うことは多いようだ。

画像は『The Seattle Times 2018年12月12日付「Dallas-bound flight returns to Seattle after human heart was left onboard」(Courtesy of Andrew Gottschalk)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)

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