たとえ同じ空間で働いても、「雇われる側」と「雇う側」は、それぞれ異なる悩みに直面しています。それゆえ、社員から「ウチの社長、何を考えているかわからない」といったグチがささやかれる会社は少なくありません。

今回は、社長・企業経営者への調査結果をもとに、社長の不安や、経営資源として最も重要と感じていることについてお伝えします。

8割の社長がカネより「ヒトが最も重要」と回答

アクサ生命保険株式会社は、経営者の意識を継続的に調査しており、今年も「社長さん白書2018」が発表されました。

全国の中小企業経営者が「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」の4つの経営資源のうち、「最も重要」と考える資源は、以下の結果に。

1位・・・ヒト(80%)
2位・・・カネ(9%)
3位・・・情報(9%)
4位・・・モノ(2%)

他に圧倒的な差をつけていたのが、「ヒト」という回答。人材を最重要視している社長が多いという結果になりました。

働いてくれる「ヒト」がいるからこそ、より多くのカネ、情報、モノが集まってくると考えている経営者は思いのほか多いのかもしれません。

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専門的な仕事や力仕事を担う人手が足りない…「人材の確保」

一方で、経営者にとって大きな脅威となっているのが、前出の調査で「最も重要」という回答が集まった「ヒト」の確保です。

PwCグループが世界世界85カ国1,293名のCEO(最高経営責任者)に対して調査した「第21回世界CEO意識調査」によれば、経営者が自社の成長に対して最も脅威に感じていることは、地域によって全く異なっていました。

日本が含まれる「アジア太平洋地域」においては、成長の脅威となるものとして最も多くの回答が集まったのが、「カギとなる人材の獲得」(53%)。

一方で、政治の右傾化傾向が観られるヨーロッパにおける経営の脅威のトップは、「ポピュリズム」、北米は「サイバー脅威」となっています。

続いて、治安が悪化している地区もあるアフリカは「社会不安」、政局が混迷を極めている中東は「地政学的な不確実性」という結果に。

国によって経営の脅威は全く異なっているようです。

「人気がある職」と「人気のない職」が二極化

現在、日本の有効求人倍率は高水準で推移しています。東京都を例にあげると、今年の10月時点では、一般の事務職は人材が飽和状態となっていますが、「専門的・技術的職業」や飲食店や介護を含む「サービス業」、「建設業」などで、深刻な人手不足の状態となっています。

つまり、事務職のような「人が集まりやすい職」と、サービス業のような「人が集まりにくい職」が二極化し、給与と引き換えに専門的なスキルやサービスを提供する「ヒト」が不足している状況だと言えます。

この状況を解決するための政策として注目されているのが、今、大きな議論を呼んでいる外国人材の受け入れです。

経団連は、外国人材の受入れに向けた基本的な考え方について今年の10月、「わが国の経済・社会基盤を維持する中小事業者が直面する深刻な人手不足の声にも真摯に対応したものである」と提言しています。ただ、この件については疑問や懸念の声が少なからずあるのも事実です。

先日、学生の人気企業ランキング常連の大手企業に勤める人事担当者が「転勤・残業・接待がある営業職として“採用”の通知を出していた新卒の子に逃げられた」と語っていました。

今後、少子高齢化が進み、「人材不足」がより大きな経営の脅威となる可能性があります。経営資源として最も重要なのが「ヒト」とされながらも、決して良いとは言えない労働条件に身を置く労働者の割合が増加しているいびつな状況については、改善を急ぐべきと言えるのではないでしょうか。

【参考】