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「初めての時代劇はすべてが大変でしたが、なかでも京言葉には苦労しました。役を演じながら方言のことも考え、細かい所作もあり、頭の中はごちゃごちゃでした(笑)。『ひよっこ』では青森弁を話す役でしたが、朝ドラの少し前にこの映画を撮影していました。思えば私、方言を話す役が多いです(笑)」

そう話すのは、まもなく公開される映画『輪違屋糸里 京女たちの幕末』(12月15日より有楽町スバル座ほか全国順次公開)で主演を務める藤野涼子(18)。本作の舞台は幕末の京都。新選組の志士たちを女性の視点で描いた愛の物語だ。藤野は、幕末の京都の花街で、「島原輪違屋」に身を置く芸妓、糸里を演じている。

「糸里は、撮影したときの私と同じ16歳。しかし、あの時代の女性は精神的にもはるかに大人というイメージがあり、『最後まで演じられるだろうか?』と不安でした。しかし、加島(幹也)監督が考える糸里は親しみやすく、ちょっとおっちょこちょいな女のコで、私となんら違わないとアドバイスをいただいて、糸里の気持ちがスッと入ってくるようになりました」(藤野・以下同)

浅田次郎の同名小説を基に新選組の局長・芹澤鴨暗殺事件を描く本格時代劇。溝端淳平演じる土方歳三に淡い恋心を抱く糸里は、男たちの抗争の陰で翻弄されていく。

「糸里が土方ら志士たちにたんかを切る場面は、いちばん印象に残っています。それまでの“土方さんが好き”という糸里の気持ちがガラリと変わる瞬間で。溝端さんとはいつもなごやかにお話ししていましたが、そこだけは互いに目を合わせず、糸里と土方というスタンスでその場にいたと思います」

藤野といえば、映画『ソロモンの偽証』でのデビューが印象的。

「自分の人生の転換期でした。経験もほとんどなく、いまよりもずっと子どもだったと思います。しかし子どもらしさという点では、いまのほうがまさっているかもしれないです(笑)。主役としてみんなを引っ張っていかなきゃ! という思いが強くて、自分自身の生真面目さを藤野涼子という役(注)に重ねていたように思います。本来の私は、友達いわく“画面で見るよりも真面目じゃない”と(笑)。真面目さから離れたコメディチックな役もやってみたいなあと思うようになりました」

現在、英語と演技を学ぶため、仕事が休みの期間はオーストラリアに渡航しているという。

「演劇学校のワークショップでは、先生は英語しか話しません。生徒も全員外国人。ボディランゲージで体当たりです。時間があればひとり旅を楽しんだり、いまハマっている銅像を探して歩いたり、と日々刺激的です(笑)」

(注)藤野は映画『ソロモンの偽証』で演じた「藤野涼子」という役名を芸名にしてデビュー。