2012年にフジテレビで放送された堺雅人主演の法廷ドラマ『リーガル・ハイ』が、韓国でリメイクされるという。主人公の弁護士・古美門研介役は『太陽の末裔』でブレイクした俳優チン・グが務め、新垣結衣が演じた黛真知子役は、女優ソ・ウンスに決まった。2019年2月からの放送予定だが、早くも期待の声が上がっている。

また、織田裕二主演で今年WOWOWで実写ドラマ化された『監査役野崎修平』も韓国でリメイク予定。韓国版タイトルは『ザ・バンカー』で、来年3月から放送されるという。俳優キム・サンジュンやチェ・シラ、ユ・ドングンなどの大物俳優が勢ぞろいで、来年上半期の期待作となっている。

(参考記事:【最新版】韓国でリメイクされた日本のドラマを一挙紹介。えっ、あのドラマまで!?)

「日本のヒット作に常にアンテナを張っている」

それにしても、今年は日韓相互でリメイク制作が盛んな一年だった。

日本ではBTS(防弾少年団)が主題歌を担当した坂口健太郎主演の『シグナル 長期未解決事件捜査班』(フジテレビ系)をはじめ、中井貴一主演の『記憶』(フジテレビNEXT/J:COM)、山崎賢人主演の『グッド・ドクター』(フジテレビ系)、松嶋菜々子主演のドラマスペシャル『誘拐法廷〜セブンデイズ〜』(テレビ朝日系)といったドラマ4本に加え、映画でも8月に公開された『SUNNY 強い気持ち・強い愛』など、いつになく韓国作品のリメイクが多かった。

ネットでは「最近、韓国ドラマのリメイク版が多いのでは?」という声も上がっていたようだが、実は韓国に比べれば微々たるものである。

韓国では今年だけでもドラマ『リッチマン、プアウーマン』『Mother』『空から降る一億の星』『最高の離婚』、映画『リトル・フォレスト』『いま、会いにゆきます』『ゴールデンスランバー』『人狼 JIN-ROH』、加えて1983年村上春樹が発表した短編小説『納屋を焼く』など、数多くの日本コンテンツがリメイクされているのだ。

先日取材した韓国のテレビ関係者も「日本でヒットしたドラマや映画に韓国は常にアンテナを張っている」と語っていたが、今や日本のヒット作は韓国でも人気作となる状況だ。

“隠れた名作”が大ヒット

そんな中で今年、韓国でもっとも成功を収めたのは、映画『リトル・フォレスト』と『いま、会いにゆきます』だろう。


映画『リトル・フォレスト』ポスター


日本で夏・秋編が2014年、冬・春編が2015年に公開された『リトル・フォレスト』は、韓国の映画ファンの間で“隠れた名作”とされた作品。

韓国リメイク版には映画『お嬢さん』で大ブレイクした女優キム・テリ、ドラマ『応答せよ1988』に主演したリュ・ジュンヨルなど、若手演技派が顔を揃え、韓国的情緒豊かな作品に仕上げて好評を得た。

観客動員数150万人を突破して損益分岐点を越しただけでなく、釜山国際映画祭の専用館である「映画の殿堂」が実施したアンケートでは“今年もっとも好きだった韓国映画”1位として選ばれている。


映画『いま、会いにゆきます』ポスター


“国民の初恋”に名を連ねる女優ソン・イェジンと、日本でも有名な韓流スターのソ・ジソプが主演を務めた『いま、会いにゆきます』のリメイク版も、観客動員数260万人のスマッシュヒットを記録。

リメイク版の公開から1カ月後には日本オリジナル版が急遽再上映されるなど、韓国でちょっとした「いまあい」ブームが巻き起こった。

「映画観客動員数2億人時代」とされる韓国で、もっとも“弱い”ジャンルとされる本格ラブストーリーがヒットしただけに、業界関係者たちも「いまあい」ブームには感嘆を隠せないらしい。

ただ、『リトル・フォレスト』や『いまあい』が成功を収めた一方で、期待に及ばなかった日本関連作品も多かった。

映画『人狼』や『ゴールデンスランバー』などが損益分岐点に満たない結果となり、ドラマ『リッチマン、プアウーマン』『Mother』『空から降る一億の星』『最高の離婚』も視聴率不振に苦しんだのだ。

韓国は、これまでも数多くのリメイク制作を通じて、成功と失敗を繰り返している。いくら原作が素晴らしく既存ファンが多いとはいえ、すべてのリメイクが成功するわけではないのだ。

それでも韓国がリメイク制作を続けるのは、やはりコンテンツの多様化を求めているからこそだろう。年の差カップルに男同士のロマンスなど、最近の韓国ドラマで流行っている新たな人間関係を見ても、韓国のエンタメ界が“新しい何か”を探し求めているのは確かだ。

現地向けにローカライズを行いつつ、原作のメッセージも練り込むといった試みは、今後も続いてほしいものだ。来年も日韓で行われるリメイク交流の行方を見守りたい。

(文=慎 武宏)

『リトル・フォレスト』と『いま会いにゆきます』のポスター