選手を支えるキラリと光る“最高のマネージャー”を発掘する連載。今回は「九州工業大学航空部」です。ここで、ご登場いただくのはマネージャーという立場ではなく、プレイヤーとして華麗にグライダーを操る二宮ひかる (にのみや・ひかる)さん!

【写真を見る】大分県久住滑空場で空を舞うグライダー

女性の在籍者が少ないイメージのある「工業大学」 、加えてなかなか馴染みの薄い「航空部」。果たして、その活動とはどんなものなのでしょうか?“空を飛ぶ”ことに魅せられた二宮さんにお話をうかがいました。

■ この大学なら飛行機を飛ばせる!

今回の取材のために、九州工業大学のキャンパス内に足を踏み入れた時にまず感じたのは「女子学生が結構いるんだな」ということ。

実際の数字では、九州工業大学の総学生数における女子の割合は13%ほど(平成30年5月1日現在)。しかし、いわゆる“リケジョ”と呼ばれる理系女子の活躍の場は確実に拡がっています。機械知能工学科機械工学コースで学ぶ二宮さんは、もともとバイク好き女子。実際に機械いじりをした事はなかったものの、その興味を胸に九州工業大学へ入学。SNSで航空部の存在を知ります。

「大学生で乗れるのって、MAXで車くらいじゃないですか?それが、グライダーで空を飛ぶ!うわっ!楽しそうだな。と思いました」

■ 初めてのフライトは大感動!

「もう!こんなことが出来るんだ!自分で操縦して空を飛ぶって!普通に生活してるだけだったら絶対に味わえないと思います。もう、本当にスゴい!最初に飛ぶのは教官と一緒に飛ぶんですけど、もう、ただただ感動してしまいました」

グライダー飛行機なの?

航空部のみなさんが扱う“グライダー”とは、実際に人が乗り込み操縦する飛行機そのもの。ただし、エンジンなどの動力はついていません。グライダーの機体をウィンチと呼ばれるロープを巻き取る機械を使って引っ張ると、凧揚げの要領で機体は上昇していきます。ある程度まで上昇すると機体とロープを切り離します。そこからは滑空する空の旅となります。

「動力がついていないので、一度上がるとそこから基本的には落ちていくんですけど“サーマル=上昇気流”をつかまえる事ができれば高度を上げていく事ができます」

■ 大会では優勝!

二宮さんは、春に行われた全国18大学の航空部が集まり競う第36回久住山岳滑翔大会に出場。「獲得高度」と「滞空時間」を競うこの大会。二宮さんは制限時間30分の中で高度1900mまでグライダーを上昇させ、見事優勝を勝ち取りました!

■ 週末は合宿で訓練する日々

この日訪れた週1回の部会では、土日の合宿に向けての確認が行われていました。航空部では、週末を利用し、大分県の久住や熊本県の白川にある滑空場に赴き、他大学の航空部と協力しながら合宿をしています。

「金曜の夕方授業を終えてから車に分乗してみんなで向かいます。翌日は朝7時くらいには滑空場に行って、まずはトレーラーに格納されたグライダーを2時間かけて組みます。そして9時ごろから日没までフライトします。日曜日は訓練を14時あたりに切り上げて機体をバラして帰ります」

■ 安全に飛ぶための準備

「例えば、久住ならば山なので特有の風が吹いたり、気流も荒れていたりするんです。もし“沈下”って言われる下降気流につかまってしまうと山肌に叩きつけられてしまう危険もあります」

「イメージフライトはとても大事です。いろんな風を想定して、この場合はこうする、ああする、ってイメージします。乗って上昇して(ロープから)離脱して、飛ぶ。その経路の全パターンをやっておかないと、上空で考えようとしても無理なので、とっさに出来るように。家の自分の部屋でイメージフライトしてます」

空を飛ぶという感動と引き換えに、当然フライトには危険も伴います。まずは教官と一緒にトレーニングを開始し、やがて「ソロ」と呼ばれる単独飛行の経験を積み、学科試験と実技試験を経ると、晴れてライセンスの取得となります。二宮さんもこの航空部でライセンス取得を目指しています。

■ 航空部とバイトと学業と

「フライトするためには保険に入る必要があって、その費用はちょっと痛い所なんですよね。だけど自分は体を動かすことが好きなのでアルバイトをして、お金を貯めて、そのお金をみんなで楽しく飛ぶために使う、っていうサイクルが楽しいんです!バイトすることで学べることもたくさんありますし」

学業については「レポートが大変です(笑)」と言う二宮さん。将来的には研究を深め、大好きなバイク関連の職種に就きたいそうです。

■ 二宮ひかるさんの『ここが最高!』

航空部の仲間たちにとって二宮さんは「ムードメーカー」で「メッチャ行動力があって頼れる」存在。同学年の男子部員は「見た目は普通の女の子だけどグライダーを操る姿はカッコいいですね」と評してくれました。インタビュー中も、フライトの話をする時には目を輝かせてその魅力を語る、その『空への思い』が最高です!

最後に二宮さんから未来の九州工業大学航空部員へ向けて一言。

「自分で飛行機の操縦が出来るって学生時代でなくても大人になっても、ほぼ無いと思います。ぜひ一回乗ってみて欲しいです!新しい世界に飛び込んでみて下さい!待ってます!」(九州ウォーカー・山本真己)

勝利のトロフィーを片手に