日本テレビ系「今日から俺は!!」がついに最終回を迎えてしまった。ぶっとんだ内容もあったかもしれないが、やっぱり彼らは高校生だった。

最終回の相手はヤクザ城田優
最強のヤクザ・月川(城田優)に襲われ、意識不明の重体になってしまった今井(太賀)。谷川(矢本悠馬)は、大勢のヤクザを撃退した今井の勇姿と、その悔しさを三橋(賀来賢人)と伊藤(伊藤健太郎)に伝えた。弱いくせに三橋らと対等なスタンスだった谷川は、土下座し、金を渡して今井の仇を討つよう懇願する。谷川と三橋らとの間に金のやりとりは似合わないが、これは谷川の心意気だ。弱い自分ができる精一杯を、三橋らに託した。

伊藤も襲われてしまう。今井と同じく手下のヤクザは蹴散らすも、あとから出てきた月川にボコボコにされる。血だらけの伊藤は、左手しか使わない月川に手も足も出なかった。ここの城田優独演会がなかなかの見どころ。

自分がわざわざ出てくるしかなくなってしまったイラつきを、今井にやられ、伊藤にもやられた手下にぶつける。ぶつぶつと文句を垂れながらし、自分の言葉にさらにキレていく。爆発というよりは、感情が漏れていく感じ。そして、ボコボコにしたはずの伊藤に不意打ちを入れられ、その怒りは爆発する。でかくて怖い上に、精神的な不気味さまで漂わせている。

相棒をやられた三橋は、ヤクザの事務所に罠を仕掛けるが、ピストルを構えられ返り討ちにあってしまう。これをきっかけに三橋は黒髪に、真面目な高校生へと戻ってしまうが、これは単なるカモフラージュ。夜道でヤクザを1人ずつ仕留め、ピストルを奪っていく。月川と1対1で正面から戦える環境を作っていた。ただ、黒髪カモフラージュの意味があったのかどうかはいまいちわからない。

伊藤が復活したタイミングで三橋は、再び事務所に乗り込む。

「相棒の伊藤を左手だけでやってくれたとか?そんなら俺も、左手一本でいかせていただきます」

そう宣言した三橋は、油断した月川を右手で奇襲。「嘘に決まってんじゃん、バカですか?」と三橋らしい挑発を交えて圧倒する。過去にも軽やかでカッコいいアクションを披露してきた賀来賢人だが、ここでのムーブはまた別格。逆上した月川の動きを丁寧に読み、長い手足をしっかりと当てる。そして、とどめの蹴りを放った反動で、ソファに座ってふんぞり返り、月川を見下ろす。

「言っとくけどなぁ。うちの伊藤は俺より強えーぜ。テメーが左手しか使わないから、本気出せなかっただけ」

ここで伊藤の男を立てるセリフ。半分はハッタリだが、半分は本音だろう。伊藤の強さと性質を熟知している三橋ならではの言葉だ。「うちの」という部分も良い。月川がピストルを構えると、今度は「テメー降参なんだな?腕力は俺にはかなわねーってことだな?今井はな、最後まで意地張ったぜ」とその場にいない今井まで立てだす。卑怯で人をリスペクトしない三橋だが、仲間のことになると変わる。ピストルを構えた月川に、ガソリンをぶっかけてこの勝負は終了。いくらピストルでも、同じことは三橋には通用しなかった。
三橋と伊藤が去り、その場にへたり込む月川。ここに相良が登場。ガソリンまみれの月川に火を放ち、最強よりも怖い最凶ぶりを見せつける。

全員に負ける相良
復讐心をたぎらせる月川に相良は、「無理無理。役者が違いますよぉ」と言っていた。この一言が、相良の苦悩や苛立ちの全てを表している。相良は開久の前のトップ智司(鈴木伸之)ほど腕っぷしがあるわけではない。残虐性、好戦性、知略で勝ち残ってきた。そんな相良は、理子(清野菜名)と京子(橋本環奈)をそれぞれ誘拐し、三橋と伊藤を分断。人質を利用し、人数をかけて2人を袋にする。

“勝つ”という目的ならば、ここで終わっていた。しかし相良はまだ納得できない。三橋と理子に、それぞれ鉄骨に手錠をかける。部下を引き連れなかったのは、その場を掌握する勝者を自分一人にしたかった為だろう。理子の前で血だらけの三橋をボコボコにする。
理子は三橋のために慣れない挑発セリフを使って相良の気を引く。そんな理子に対して相良は、熱した鉄骨を顔面に押し当てようと脅す。今後、三橋が理子の火傷を見るたびに自分の無力さを痛感させるためだ。相良はこの戦いではなく、三橋の人生そのものに勝利したい。

三橋もさきほどの理子と同様に挑発セリフを使って相良の気を引く。しかし、そんなものは時間稼ぎにしかならない。もう一度三橋を痛めつけたあと、相良は、「さぁいくぜ、おねえさん」と再び鉄骨を手にする。どうやら、相良も覚悟を決めたようだ。だが、三橋に手を出されるのを嫌がる理子は、それでも声を発さなかった。あらゆる手を使って三橋を追い詰めた相良だが、三橋どころか理子すらも屈服させることは出来なかった。

自分の手の肉を削いで手錠を外した三橋は、満身創痍の身体で理子をかばう。相良が鉄パイプを何度振り下ろしても、三橋は値を上げない。圧倒的優位な立場にも関わらず、2人に勝つことができない相良は、取り乱していた。

そこに伊藤が登場する。相良に裏切られた智司が伊藤を囲む開久連中を圧倒し、助けていたのだ。両腕を折られた伊藤は、頭突き2発で相良を伸す。相良は、三橋と理子を屈服させられず、智司に男気で負け、伊藤にケンカでやられた。それぞれ格の違いを見せつけられて敗北した。相良の残虐性、好戦性、知略では、三橋たちには勝てなかった。

「役者が違いますよぉ」

月川に言ったこのセリフは、自分に向けて言っていたのかもしれない。相良は知っていたのだ。三橋らと自分では役者が違うことを。

みんなシャイだった。思っていることを素直に言えずに、間違った方法でしか表現ができない子供だった。それは三橋も相良も一緒。三橋は威張り散らしているわりに恋愛に奥手で、相良はコンプレックスを抱えた悲しいヤンキーだった。ギャグも満載だし、ヤクザも倒しちゃうし、信じられないくらいの美男美女ばかり出てくるが、内面はリアルな高校生だったのだなぁと、相良を見てすごく思う。

ストーリーでよりも、人物で魅せる。こういうドラマのほうが、終わったときの虚しさは強い。単純にシーズン2に期待したいが、なんとなくやらない気がする。今井もうちょっと見たかったなぁってずっと言っちゃう気がする。
(沢野奈津夫)

今日から俺は!!
日曜:22:30〜23:25(55分) 日テレ系
キャスト:賀来賢人伊藤健太郎清野菜名橋本環奈、太賀、矢本悠馬、鈴木伸之、ムロツヨシなど
脚本:福田雄一
演出:福田雄一、鈴木勇馬
主題歌:今日俺バンド「男の勲章」

原作

38巻