マイ・サンシャイン』は1992年のロス暴動を主題にした映画だ。当然のことながら劇中では黒人差別が原因で大暴動が発生する。この暴動も、ミリーの子供達にとっては「タダで食べ物や服をもらい放題のビッグイベント」でしかない。なので大人をほっといて勝手に暴動の現場に飛び込んでいってしまう。一方、ティーンエイジャーの黒人たちにとっては、暴動は自らのタフさを示すいい機会である。よりデカくて危険なことをやって仲間たちに認められるため、彼らは警察署を襲ったり、車を盗んだりする。ミリーの子供達の中でも年長であるジェシーは、そんな自己顕示のための暴動に半ば嫌々巻き込まれていく。さらにミリーとオビーにとってみれば、暴動は単純に自分たちの平穏な生活を乱す害悪でしかない。無鉄砲に暴動に巻き込まれていく子どもたちを助けるため、彼らは自分たちなりに頑張るものの、今度は警官たちに行動を阻まれる。というわけで、『マイ・サンシャイン』の後半は「『万引き家族』×暴動」といった趣になっていく。それぞれの立場で暴動の一夜に巻き込まれていく彼らの姿を、特に突き放すでもなく、さりとてベタベタしたトーンでもなく、けっこう淡々と描く。前述のように『マイ・サンシャイン』は細かい説明を省くタイプの映画なので、泣かせるようなエモーショナルな盛り上げはない。代わりに「こういう風にしかならなかったんだよな……」という、ある種の諦めのような感じがある。なんというか、全然問題が解決しないのだ。だから、すっきり泣いて帰れると思った人(日本版ポスターの作りや邦題もなんかそんな雰囲気である)は肩透かしを食ったような気分になるかもしれない。しかし実際のところ、ロス暴動の原因となった人種問題は特にすっきりと解決しないまま26年も経っている。そうである以上、『マイ・サンシャイン』は誠実な映画であると言えるのではないか。結論を出せない話に対して「結論は出せません」と言って終わる、嘘のない作品である。(しげる)【作品データ】「マイ・サンシャイン」公式サイト監督 デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン出演 ハル・ベリー ダニエル・クレイグ ラマー・ジョンソン カーラン・ウォーカー レイチェル・ヒルソン ほか12月15日より全国ロードショーSTORY1991年、ミリーは身寄りのない子供たちを引き取り、ロサンゼルスで賑やかに暮らしていた。そんな彼らの様子を隣人オビーも気にかけている。しかし街で韓国系の商店主によって黒人の少女が射殺される事件が発生。彼らの生活にも影響を与えていく]]>