月9「SUITS/スーツ」が最終回を迎えた。どんなことをしても勝つ弁護士という触れ込みだが、実際そうでもなかった甲斐(織田裕二)が、最後の最後で言葉通りの活躍を見せた。いや、最終回の超クライマックスであんな手口を使って解決するドラマ見たことがない。

甲斐が耳を疑うレベルのプライドの高さ
13年前の女子高生が惨殺された事件で、当時検事だった甲斐は上司の柳(國村隼)に証拠隠しをされ、冤罪事件を起こしてしまっていた。正義心から甲斐は、今でも服役中の栗林(淵上泰史)を救うべく、自ら起訴した事件を自らが再審請求し弁護に挑む。異例中の異例の出来事だ。今までずっと企業案件だったのに急に刑事事件になり、最終回にして作風がガラリと変わった。

甲斐は、再審を行うことを伝えるために栗林と面会。自分のせいで13年も服役している栗林に対して、「君から罵声を浴びにきた。それくらいで勘弁してくれると助かるんだが?」と超上から目線。さすがと言えばさすがだが、人間性を疑うレベルのプライドの高さだ。

13年前、柳によって隠されていた証拠は、“被害者から栗林に宛てた手紙”と“被害者のキャミソールについた栗林とは別人の血”だった。なんという決定的な証拠だろう。これを隠して栗林を犯人に仕立てあげた柳が悪すぎる。

甲斐は真犯人の目星をつけていた。被害者と直前まで一緒にいたという当時高校生だった曽我部一也と蜂矢勇気の2人だ。2人が容疑者リストから外された理由は、アリバイがあったから。直前まで一緒にいて、アリバイもクソもない気がするのだが、このうちの1人は大手不動産会社の御曹司だった。そのため、警察が隠蔽したということだろう。ちなみにこの2人は、高校生にして違法薬物の売りさばいていたらしい。超大金持ちの子で麻薬の売人、なんだかすごくチグハグな人物設定な気がするが、親が厳格でお小遣いがもらえないとかそんな感じなのだろうか?

禁断中の禁断展開
改めてキャミソールの付着した血のDNA鑑定を申し出ると、検察がこれを拒否。過去の冤罪を明るみに出すわけにはいかないのだから当然と言えば当然だ。他にも、栗林に再審を取り下げれば刑期が短くなると要求、顧問の検事にド新人(上白石萌音)をあてがうなど、あの手この手で妨害を行ってくる。

これに対して甲斐は、バーで容疑者2人が飲んでいた酒瓶から指紋を摂取。甲斐は蟹江(小手伸也)の甥っ子を使って鑑定を行うも、今度は検察がキャミソールが被害者のものではないという根本的な部分でのねつ造で妨害。証拠を封じられ、手詰まりになった甲斐と鈴木(中島裕翔)は、勝つためならなんでもするという触れ込み通りの衝撃的な行動に出る。

真犯人の2人のうち、気が弱そうな蜂矢の自宅マンションに仮面をかぶった鈴木の悪友・遊星(磯村勇斗)を不法侵入させ、なんと鈍器で「殺す」と脅して自白を強要したのだ。これに同席した刑事(阿南健治)を使い、自首扱いにさせた。

今まで散々法の目を掻い潜ったり、意表をつく手法で証拠を獲得してきたのに、最終回にしてただの暴力。指紋や、アリバイについてのやりとりを全て台無しにする、禁断中の禁断のテクニックだ。確かに勝つためなら何でもするとの触れ込み通りだが、これをやったらもう何でもアリになってしまうし、視聴者として「そうきたか!」とはさすがにならない。この大仕事を終えた遊星が、「あれぐらいどうってことねーよ」と自慢げに語っていたが、なんだか可笑しくて仕方ない。

あの伏線の行方は?
遊星の暴行で全てが解決し、あとはエピローグ。甲斐は、過去の案件からファームの不正をムリヤリ見つけ出し、それを世間に公表すると所長のチカ(鈴木保奈美)に提案。チカが拒否すると、それならば鈴木のクビを取りやめにしろと交渉し、こちらも一件落着。

そして甲斐は、鈴木にボストン行きのペアチケットを渡す。真琴(新木優子)と一緒にアメリカで弁護士の資格を取ってこいとのことだろう。ハッピーエンドっぽい雰囲気はすごいのだが、結局、ずっと張ってあった伏線の「幸村・上杉法律事務所」の上杉の存在はよくわからないまま。なんだかすごい最終回だった。
(沢野奈津夫)

SUITS/スーツ」
月曜 21:00〜21:54 フジテレビ系
キャスト:織田裕二中島裕翔新木優子中村アン今田美桜、國村隼、小手伸也、鈴木保奈美など
脚本:池上純哉
演出:土方政人、石井祐介
主題歌:B'zWOLF

イラスト/Morimori no moRi