冬に感じる身体の異変はもしかすると冬特有のストレス性うつ症状の可能性があります。疲れやすい、気分が沈む、活動量がへる、眠気が収まらない、といった症状が当てはまる場合は、日射量を増やす、適度な運動を心がけるなどし、改善を図ってください。

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冬特有のストレス性うつ症状に気を付けよう!特徴と症状について

■冬になると気分が落ち込みやすい
冬特有のうつ症状は、冬限定で起こるうつ症状で20〜30代の人たちに多く見られます。冬になると日中時間が短くなり夜になるのも早くなりますよね。木の葉も落ち始め、動物も冬眠モードに入っていきますが、人間も冬の日射量不足に強く影響を受けます。日射量が減ると気分や活力が低迷しやすくなりますが、これが冬特有のうつ症状と関係しています。

■生活に支障をきたす過眠
冬季うつ病では過眠症状が特に目立ちます。冬になると朝起きるのがつらい、布団からなかなか出られない、出たくないという人が増える傾向にあります。その中でも、冬季うつ病の場合は10時間以上寝てもまだ眠く、起きたくても起きられない、といった日常生活に支障をきたすほどの症状です。

冬になるとただ何となく引きこもりたくなる心境とは異なり、本人に「起きたい」という意志があってもなかなか起きる事ができないのでもどかしいものです。それがストレスになってさらにうつ症状を招き、悪循環になる事もあります。寝過ぎてしまうのは、体内時計が乱れていて夜に熟睡できていないせいとも考えられています。

■甘いものばかり食べ過ぎてしまう
冬季うつ病になると過食症状も出てきます。何でもかんでも食べてしまうわけでなく、スイーツや炭水化物などの糖質をメインに食べるのが特徴です。冬は寒さを紛らわすために、確かに他の季節よりも甘いものが欲しくなる季節ですが、冬特有のストレス性うつ症状の人は、常識を超えた量のお菓子やご飯、パンなどの炭水化物を食べてしまいます。このせいで冬に一気に太ってしまう人もいます。

うつ症状によって引き起こされる過食は、食べる事で血糖値を上げ、うつうつとした症状を和らげようと無意識に自己防衛している症状です。

■6つの症状
冬季うつ病特有の症状というのはあまりなく、一般的なうつ病と同じような症状が出ます。基本的に以下のような症状が見られるでしょう。

・ぐったり疲れやすい
・気分が沈む
・今まで楽しめていた事が楽しくない
・活動量が減る
・常に眠い
・甘いものが欲しくなる

冬季うつ病は特に落ち込む理由に心当たりがないのに秋〜冬にかけて気分が優れず、春になって温かくなると自然と元気な状態に戻ってくるという、季節限定の症状です。冬季うつ病では寝過ぎと過食が症状として顕著に現れます。特に甘いものが欲しくなるのが特徴で、常識の範囲を超えて異常な量のスイーツを食べてしまいます。

過眠の傾向が強い人は、一日10時間以上寝てもまだ起きる事ができず、肥満気味になってしまう人も多いです。冬に入ってから急に眠くて仕方ない、甘いものが止まらなくなったという人は、冬季うつ病の可能性が高いです。

冬季うつ病は季節性うつ病の一種

■冬季うつ病は、季節性うつ病の一つで、冬の間だけうつ病症状があります。秋から悪化していき、春になるとすっかり消えるという状況を2年以上繰り返している人は冬季うつ病と言えるでしょう。
日本では比較的まれな病気ですが、冬になると何となく引きこもりたくなる、というようなちょっとした気分の変化とは異なり、日常生活に支障をきたすレベルの大きな変化や症状が2年以上続いたら病院での治療が必要です。悪化する前に一度精神科や神経科で受診しておくと安心でしょう。

誰もが冬季うつ病にかかるわけではなく、体質によるところもありますし、自律神経の働きを乱すきっかけとなる「ストレス」を抱えやすい人、性格がもともと真面目で感情豊かな人などがなりやすいと言われています。

ただし、冬季に入って気分が優れなくなっても、その原因が明確な場合は冬季うつ病には該当しません。

■簡単自己チェック
以下の項目にあてはまるものが5つ以上あり、その症状が2週間以上あり生活が不便になっている場合、うつ病の可能性があります。目安としてチェックしてみてくださいね。

・自分の存在がちっぽけに感じる。
・過剰な罪悪感がある。
・思考力や集中力が続かない。
・「死」について繰り返し考え、自殺願望が出てくる。
・強い焦りを感じる。
・今まで楽しめていたことが楽しくなくなった。
・気分がひたすら落ち込む。
・気力が低下している。

冬季うつ病の原因とは

■冬季うつ病の原因は「日射量不足」だという事が明らかにされています。
冬の日照時間が極端に短いフィンランドスウェーデンなどの北欧地域では、実際冬季うつ病患者が全体の10%近くかそれ以上という報告があります。しかも最初からその地域で暮らしていた地元の人よりも、それまで太陽の光に恵まれていた移住民の人たちが発症している例が多いです。日の光が少ない環境に不慣れなせいもあるかもしれませんね。

セロトニン不足の影響
セロトニンは体内において重要な役割を果たしている三大神経物質の一つで、太陽を浴びる事で生成されます。精神バランスを保つのに役立つ脳内物質で、心身の安定や安らぎなどに関わっている事からも「幸せホルモン」と呼ばれています。セロトニンが豊富な人ほど気持ちが安定して毎日楽しく過ごせているでしょう。

セロトニンには他にも以下のような働きがあります。

・起床時の目覚めをよくする
・自律神経のバランスを整えてくれる
・感情をコントロールしてくれる
・痛みを抑制する
・背筋をしゃきっとさせる
・目をパッチリさせる

冬になると日照時間が短くなってしまい、体内のセロトニン量も自然と減少します。セロトニンが減ってしまうと以下のような症状につながります。

・不安
イライラ
・目覚めが悪い
・低体温
・低血圧
・落ち込みやすくなる
・不眠症
・集中力がなくなる
・ぼーっとする事が増える
・不安になりやすくなる
・ストレスをためこみやすくなる
・疲れやすくなる
・やる気がわかなくなる

セロトニン不足は、身体とメンタルの両方に影響を引き起こすのですね。

■太陽光とセロトニンの関係によるもの
日射量不足は脳にも影響を及ぼしますが、いまだはっきりどのような影響があるかは明確にされていません。しかし日光とセロトニンの関係を使って説明する事ができます。セロトニン(脳内神経伝達物質)とは、脳内の神経間の情報を伝える物質の一つです。セロトニンが不足していると、うつ病を招きやすくなります。日光を昼間にたっぷり浴びる事によって目から脳に信号が伝わり、セロトニンの働きは活発になります。

夜にはメラトニンというホルモンが分泌されます。メラトニンが分泌されることで身体を調整し、体内時計を24時間にセットし、体を睡眠のへと導きます。メラトニンは睡眠中に脳内で分泌量が最大になり、昼間の太陽光で蓄えられたセロトニンの働きにより脳内分泌量が抑制されます。

要するに、セロトニンが不足していることで、寝ている時に分泌量が増えるメラトニンが起床したときにも抑制されず、多いままになっているため、気持ちにスイッチが入らず、いつまでもうつ症状のような状態が続いてしまうのです。自律神経やホルモン分泌にも関係してくるので、冬に日光を浴びる量が減ってセロトニンの働きがなければ、身体のリズムを崩しやすく、疲れやすくなったり食欲不振、気分が落ち込んだりする原因となってしまうのです。

冬季うつ病の改善方法や治療

■光照射療法
冬季うつ病を治療したい時、人工的に光を浴びせる「光照射療法」という方法があります。これは3000ルクスの光(机の蛍光灯の2〜3倍の明るさ)を毎朝数時間、器械を用いて人工的に浴びせるもので、自宅にいながらできる治療法です。これを続けていれば数週間で症状が改善されてくるでしょう。

■生活習慣のリズムを整える
冬季うつ病だけに限った事ではありませんが、体内時計が狂っている場合それを正常に戻す事で多くの心の病気を改善する事ができます。そのためにも、できるだけ毎日同じ時刻に起き、朝の光をしっかり浴びる事がポイントです。どうしても眠気が取れなかったり、だるくて起きたくなかったりする時は、部屋の照射を明るくするだけでも効果があります。

セロトニンを増やす
セロトニンは太陽光を浴びる事で生成されますが、食品からも増やす事ができます。セロトニンは必須アミノ酸の一つ「トリプトファン」から作られています。トリプトファンを含む食材と言えば魚や大豆製品、豚肉、乳製品、チョコレートなどが挙げられます。これらを意識して食べるようにするとセロトニンの生成が促進できるでしょう。

また、炭水化物やビタミンB6を含む食材がセロトニンの分泌を促してくれます。炭水化物やビタミンB6が豊富なバナナ、さつまいもレバーなども積極的に食べるよう心がけましょう。

■毎日3食食べる
規則正しい食生活を送る事も大切です。現代では朝食を抜いてしまう人が多いですが、毎朝きちんと朝食を食べる事で血糖値も上がり、活動的になれます。朝起きても何となくやる気がない、だるい、活力がわかないという人は、毎朝朝食をしっかり食べるようにしてみるといいでしょう。

■適度に運動する
生活リズムを整えるだけでなく、適度に運動すると脳から抗うつ作用のあるホルモンが分泌され、神経を成長させてくれます。かといって今まで運動不足だった人が急に激しい運動を始める必要はなく、部屋をこまめに掃除したり、階段を使うようにしたりお散歩するなど、身近なところから少しずつ運動範囲を広げていくといいでしょう。

■家族のサポート
家族の誰かが冬季うつ病にかかり、いきなり過食や過眠を繰り返したら他の人も不安になってしまいますが、うつ病による過食は食べる事でインスリンを上昇させ、うつ気分を緩和させようとする無意識の自衛手段です。寝過ぎに関しては体内時計が乱れているほか、夜に熟睡できていない事が原因の場合が多いです。

このような状況を理解した上で、患者さんのペースに合わせて家族も見守りつつ協力してあげるといいでしょう。ただ「そっとしておく」だけでなく、寄り添ってあげる気遣いが必要です。

[文:ストレススキャン編集部]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

冬特有のストレス性うつ症状について