▽「そうか、年内に抜かれることはないんだ」そんな風に私が納得していたのは金曜日、2018年最後のリーガ戦となる17節を前に順位表を確認していた時のことでした。いやあ、確かに先日、夜の人気バラエティ番組にゲスト出演していたサウールも「Da gustito tener al Madrid debajo y esperemos que sea por mucho tiempo/ダ・グスティートー・テネール・アル・マドリッド・デバッホ・イ・エスペレモス・ケ・セア・ポル・ムーチョ・ティエンポー(マドリーが下にいるのは気分いいし、長い間続くといいね)。おまけに彼らには今週末、リーガ戦がないし」と言っていたんですけどね。

▽というのも今週のレアル・マドリーはクラブW杯に参加。アラブ首長国連合のアブダビでこの土曜に決勝があるため、今節予定のビジャレアル戦は1月3日に行われることに。よって、アトレティコが土曜のエスパニョール戦に負けても現在の勝ち点2差が引っくり返ることはない上、もし勝てば5ポイントまで差を広げられるのは大きな魅力かと。ただそうは言ってもクラブW杯は昨季、CLに優勝したチームが出られるご褒美の大会ですからねえ。

▽おかげで縁のないアトレティコはお隣さんが鹿島アントラーズとの準決勝を戦う当日など、ミッドウィークの試合がないのをいいことに、ワンダメトロポリターノでスポンサーの現代から選手たちへ貸与される車の引き渡しイベントを呑気に実施している始末。その場では何故だか、トマスがハンドルを切り間違えてピッチを縦断してしまったことはさておき、同番組で「No he tomado alcohol en mi vida, ni una gota/ノー・エ・トマードー・アルコール・エン・ミ・ビダ、ニ・ウナ・ゴタ(人生でお酒は飲んだことがない。1滴もね)。チームメートはCLに優勝したら、試してみればいいと言うんだけど」と打ち明けていたサウールも乾杯できるよう、ここは彼らも来年6月1日にホームスタジアムでトロフィーを掲げ、冬にはクラブW杯に行けたらいいのになんて、つい私も思ってしまったものでしたが…。

▽まあ、そんなことはともかく、そのマドリーと鹿島の準決勝がどんなだったか、お伝えしておかないと。何せ2016年に同大会決勝で対戦した際には現在、ヘタフェにいる柴崎岳選手の2ゴールで試合は延長戦に突入。そこでクリスアーノロナウドが2ゴールを挙げ、4-2でマドリーが勝利という激闘だったため、開始早々、セルジーニョのシュートをGKグルトワが指先でそらした時など、今回も撃ち合いになるのかとちょっとは期待していたんですけどね。

▽前半はずっと0-0が続いていたため、鹿島も油断しましたかね。44分、マルセロとのワンツーでエリア内に入ったベイルが決めてマドリーに先制され、それだけでも痛かったのに加え、後半8分には山本修斗選手からの中途半端なバックパスをチョン・スンヒョンがベイルに奪われて2点目を取られてしまったから、さあ大変!うーん、最近はしょっちゅうのように足首を痛め、リーガ前節のラージョ戦にも出場していなかった彼なんですけどね。この日も「足がちょっと痛かった」(ベイル)そうですが、おかげで調子に乗ったか、その2分後にもマルセロのアシストハットトリック達成となれば、グアルダハラ(メキシコ)との準々決勝を勝ち抜いてきた鹿島だって、諦めるしかなかったかと。

▽後半33分にはVAR(ビデオ審判)の判定で土居聖真選手のゴールがスコアに上がり、一矢を報いた日本のチームでしたが、結局、試合は1-3で終了。記者会見ではソラリ監督も「Ha demostrado lo que es y lo que es capaz de hacer/ア・デモストラードーロ・ケ・エス・イ・ロ・ケ・エス・カパス・デ・アセール(何者なのか、何ができるのかを示した)」とベイルを褒めていましたが、彼は昨季のCL決勝リバプール戦や2014年のアトレティコとの同決勝でもゴールを挙げていたように大舞台に強いですからね。クラブW杯でもこれで通算7得点でロナウドマドリー最多記録に並んだとなれば、あとは普段の試合でももっと活躍してくれると有り難いというのがやっぱり、ファンの偽らならざる心境じゃないでしょうか。

▽え、それより心配なのはラージョ戦で太ももを打撲、アブダビでの練習にもあまり参加していなかったにも関わらず、後半15分に投入され、29分にダウン。カセミロと交代となったアセンシオじゃないのかって?そうですね、翌木曜はチームネートたちが、白いローブでアラブ人のコスプレをしてシェイク・ザーイド・モスクを訪ねたセルヒオ・ラモスを始め、ベンゼマバランらもフェラーリ・ワールドへと観光に勤しんでいる中、病院で検査を受けた彼は全治1カ月のケガをしていることが判明。まあ、2月のCL16強対決アヤックス戦までには戻れそうですが、何せ今はレギュラーとは言えなくなってしまった身分ですからね。土曜の決勝はもちろん、1月のコパ・デル・レイの試合にも当面、出られないのは当人も痛かったかと。

▽ただ、実はもう1つの準決勝では番狂わせが起きていて、勝ち抜けを絶対視されていたリーベル・プレートが主催国枠出場のアル・アインに延長PK戦で敗退。いえ、急遽、エースは昔、ハンブルクPSVプレーしたスウェーデン代表のマルクス・ベリ、左SBには日本人の塩谷司選手もいるという、あまり馴染みのないチームを分析しないといけなくなったマドリーのスタッフも大変だと思いますけどね。キャプテンのラモスも「En el fútbol no se gana a nadie con el escudo/エン・エル・フトボル・ノー・セ・ガナ・ア・ナディエ・コン・エル・エスクード(サッカーでは紋章で勝つ者はいない)。タレントで勝ってもフィジカルやプレーの激しさも大事だからね」と言っていたように、ここまで3試合を勝ち上がってきた相手を甘く見てはいけない?

▽そう、この土曜午後5時30分(日本時間翌午前1時30分)からのアル・アイン戦には3年連続のクラブW杯優勝が懸かっていますからね。ここでうっかり負けてしまうと、もうファンは当然ついているものと思っているユニフォームの胸元にある金色のFIFA世界王者マークもなくなってしまうため、選手たちには気合を入れて挑んでもらいたいところですが、さて。一方、鹿島は同日午後2時30分(日本時間午後10時30分)から、リーベルとの3位決定戦となりますが、どうやら相手は2ndレグをサンティアゴ・ベルナベウで戦わないといけなくなったボカ・ジュニアーズとのコパ・リベルタドーレス決勝から、このクラブW杯に直行したせいか、却って疲れが溜まっているよう。それだけに今度は鹿島も自分たちのいいサッカーを披露して、今年最後の試合を勝利で飾れるといいですよね。

▽え、そんなお隣さんの試合があった翌日、いきなりアトレティコが大変なことになっていなかったかって?いやあ、それが水曜にはフェルナンド・トーレス(サガン鳥栖)やビジャ(来季からヴィッセル神戸)が古巣訪問でワンダに来ていたり、練習後には選手やクラブスタッフのクリスマス・ランチ会などもあって、当人はかなりご機嫌な様子だったんですけどね。夕方には「契約破棄金額の8000万ユーロ(約102億円)を払って、バイエルンリュカを1月の市場で獲得する」というスッパ抜き記事がマルカ(スポーツ紙)に現れたから、ビックリしたの何のって。

▽うーん、正直、夏にはアトレティコと2022年までの契約を結び、年子の弟のテオ(マドリーに移籍し、今季はレアル・ソシエダレンタル)とは違い、育ててくれたクラブ一筋なことを明言していた彼だったため、移籍の理由がさっぱり思い浮かばず、やっぱり現代の車じゃ物足りなくて、アウディをもらえるバイエルンの方がいいんだろうかと私も勘ぐってみたりもしたんですけどね。木曜のマハダオンダ(マドリッド近郊)にある練習場にはフェラーリだか、ポルシェだかの超高級車で通勤していたリュカですし、どうやらそんな話が出てくるのはグリーズマンへの大判振る舞いによって、クラブの今季の人件費予算、2億9300万ユーロ(約372億円)の枠がきつきつに。

▽おかげでそれ以外の大黒柱、GKオブラクやゴディンの契約延長に支障を来たしているため、ここでリュカが売れたら、ジエゴ・コスタの年棒アップもできて助かるという論調だったんですが、いえいえ。DFだって、今季は負傷禍でやり繰りが大変なんですから、CBだけでなく左SBもできる彼を放出している余裕なんて全然、ありませんって。ちなみに金曜に記者会見に現れたシメオネ監督は「Lo que puedo comentarle es que hablé con él, hablé con el club/ロ・ケ・プエド・コメンタールレ・エス・ケ・アブレ・コン・エル、アブレ・コン・エル・クルブ(私に言えるのは彼ともクラブとも話したということ)。どちらも私の考えを知っている」とはっきりと移籍を否定せず。

▽その辺、不安が残らないではありませんが、土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からの今年最後のリーガ戦にはリュカはケガで出られず、前節復帰した途端、また負傷したフィリペ・ルイスもいないため、サウールがまたしても左SBを務めるようですしね。折しもワンダにエスパニョールを迎えるこの試合では昨季終了後、カタールのアル・サッドに移籍したガビがファンに挨拶するイベントが開催。最後のお勤めとして、カンテラーノ(ユース組織出身の選手)の後輩に偉大な元キャプテンがアトレティコの良さを説いてくれることを期待しています。

▽そして勝てば、首位のバルサに勝ち点で並ぶ可能性もあるアトレティコとは曜日を別にして、下位にいるマドリッドの弟分チームは日曜にレガネスが2位のセビージャとブタルケで対戦。幸い16位の彼らは降格圏で年を越すことはないとはいえ、ここは兄貴分のためにも踏ん張ってほしいところかと。対照的に降格圏内で新年を迎えることが決まっている19位のラージョはエスタディオ・バジェカスにレバンテを迎えますが、前節1-0で惜敗したマドリー戦とは違い、エースのラウール・デ・トマスやトップ下のトレホがプレーできるのは朗報かと。

▽そして一足早く、バケーションに入ってしまったのがヘタフェで、彼らは金曜にジローナと年内最終戦を済ませたんですが、いえ、結果はアンヘルのゴールで後半に先制しながら、終盤にベルナルドにヘッドを決められて、1-1の引き分けだったんですけどね。アジアカップに出場する日本代表に招集され、展開によっては1月いっぱいチームを離脱することになる柴崎選手がこの今年最後の遠征に呼ばれておらず。それどころか、この水曜には昨季、ヘタフェを退団して以来、フリーだったフラミニがいきなり選手登録され、ジローナ戦で早速初出場していたり、1月にはリーズからやはり、MFのサム・サイスが出戻り入団決定と、どうもヘタフェの中盤はまずます激戦区の様相を呈することに。

▽うーん、せっかく前節のソシエダ戦では先発に抜擢され、いいプレーを見せてくれた柴崎選手とはいえ、これでは来年は出場機会を掴むのにもっと苦労しそうな気がしないでもありませんが、今のところはまだ、具体的な移籍の話はなし。現在のヘタフェはヨーロッパリーグ出場圏に入ったり、出たりといういい状態ですし、シーズンが進めば、負傷者等も増えてくるため、まずは日本代表で活躍して、ボルダラス監督にアピールできるといいですよね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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