滑りやすい、周囲が見えない、ブレーキ痕も残らない……。そのため当事者間で見解の違いが生じやすく、過失割合の認定が難しいなど、長期化もありうる雪道の事故。特に「ドライブレコーダー」が有効といえるかもしれません。

刻々と変わる天候、路面状況

雪道ではスリップ事故が多くなります。新潟県警によると、同県内では1月と2月に全スリップ事故のうち75%が発生。また、損害保険大手の損保ジャパン日本興亜は雪道で起こりがちな事故として、スリップによる追突のほか、吹雪による視界不良のなかで走行中もしくは駐停車中のクルマへ衝突し、複数台の多重事故などに発展するケースなどを挙げます。

損保ジャパン日本興亜によると、雪道の事故では視界不良のなかで当事者の見解に相違が出るなど、過失割合の確定まで難航するケースがあり、事故の早期解決にはドライブレコーダーが特に有効だといいます。

雪道で多い「玉突き事故」

クルマAが前方のクルマBに追突し、その反動でさらにクルマBが前方のクルマCに追突する(A→B→C)か、クルマBがクルマCに追突したところへ、さらにクルマAが追突するようなケース(順次追突)かで過失割合が変化するが、雪道では低速での事故が多く、クルマの損傷だけではその判断が難しい場合がある。そうしたとき、ドライブレコーダーの記録で状況把握が円滑に。

信号のない交差点での出合い頭事故

通常はセンターラインのある道路が優先道路となり、そこを走行していた車両の過失割合が小さくなるところ、雪でセンターラインが隠れてしまうと、道路幅員の大小で過失割合が決定される。ドライブレコーダーの記録から、雪でセンターラインが隠れていたことがわかり、基本的な過失割合が変わったことも。

除雪による道路状況の変化

除雪車により路肩に雪が山積みされ、事故当時は道路にはみ出していたが、翌日、現場確認を行った際には、すでにはみ出していた雪が除雪されていた。そこでドライブレコーダーの記録から事故当時の状況がわかり、早期解決につながった。

雪道の事故は長期化の可能性も

事故状況の把握においては、路面に残ったブレーキ痕も証拠として扱われますが、損保ジャパン日本興亜によると、積雪路面ではそれが残らなかったり、事故発生後に降った雪が分かりづらくすることもあるとのこと。また、視界不良時の多重衝突事故などでは、当時者も状況を把握できていないケースが多いそうです。こうしたなか、ドライブレコーダ-は路面や周囲の状況、信号の変化、関係車両のスピードまで映像から判別できるため、事故の早期解決が期待できるといいます。

なお、東京都を含め、ほとんどの都道府県では積雪時や路面凍結時に運転する場合、冬タイヤやタイヤチェーンなどのすべり止め策を講じることが条例で定められています。

そうした状況下において夏タイヤで走行するのは違反ですが、損保ジャパン日本興亜によると、事故を起こした際の保険の扱いは、乾いた路面の場合と基本的には変わらず、雪道を夏タイヤで走行して事故を起こした場合でも保険金は支払われるそうです。「タイヤの種類だけで責任を判断することはありません」とのこと。

ただ、過失割合は事故の「予見可能性の有無」についても考慮するため、「積雪や路面の凍結を認識しながら運転した」ことが、その認定に影響する可能性があるそうです。

【写真】冬の北海道で本当に起こった「186台多重事故」

雪道における追突事故のイメージ(画像:Inger Anne Hulbaekdal/123RF)。