年末の一大スポーツイベント「KEIRINグランプリ2018シリーズ」が12月28日から開催されている。公務員から競輪選手に転身し、「先行日本一」と称されるガールズケイリンの女王・奥井迪(おくいふみ)選手。

「熱男」こと、プロ野球福岡ソフトバンクホークス松田宣浩選手と異色の対談第三弾。

35歳と37歳、プロスポーツ界ではベテランの域にも達する2人が、長く現役生活を続けるための秘訣と葛藤を語った。

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成功例の積み重ねが「熱男」を作り上げた


松田:僕はまだまだベテランと思っていないけど、ベテランより若い力を出していこうという社会の流れには逆らっていきたいと思っていて。同世代の選手でも、そういう世代交代の流れには乗らないといけないという考えの人もいるんですよ。でも、僕はまだまだやりたいので。

奥井:松田選手が若い人が上がってくる中で、常にフル出場を続けているじゃないですか。

松田:アマチュアスポーツではないので、先輩が卒業したら若い選手に自動的に出られるってものではないですからね。若い選手にポジションを譲るってものではないので、ずっと守りたいと思っていますよ。

奥井:気持ちの面で、プロでデビューした若い頃と今って全然違いますか?

松田:プロで13年やってきて、振り返ってみると、若い頃って結果も出なかったからこそ、今みたいなプレースタイルにもならなかったですね。結果が出始めると自信もつくし、成功例がたくさんあると「熱男」とかをやり始めて、ファンのみなさんを盛り上げたいとかそういうことにも繋がってくる。やっぱり、成功例を自分で体験したから自信になるし、より自分の選手として成長させてくれると思います。ゴールデングラブとかベストナインとかのタイトルを取らなければわからなかったですけど、一回取るとまた取りたい、何度でも取りたいって思う自分がいるんですよ。1勝したら2勝、3勝って、そう思いますよね。経験しないと、この喜びが見えてこないじゃないですか。

奥井:私もデビューしたての頃は何も考えずに自分の先行逃げ切りスタイルでやってきたんですけどね。最近は車券を買ってくれるお客さんがいるので、そういう人たちの期待に応えるために勝つことだけを優先するか、自分の走りを優先させるのか、考えさせられます…。

松田:それは僕ら野球選手にはないタイプの責任ですね。一回味わってみたいな。

奥井:発走前、自分のオッズが見えるんですよ。人気がない時、それはそれで「やってやるぞ」って気持ちになるんですけど。理想としては、自分の走りを追い求めていきたいですね。

タイムはめちゃくちゃ遅くなった。けれど、やることは変えない

奥井:練習方法で若い時との違いってありますか?

松田:僕は若い時は何も考えずにガツガツ練習して来ました。今35歳ですけど、できなくなったら終わりと思っているので、自分に制限をかけずにまだやっています。若い頃と同じことをやって、これができなくなったらマズイと思っています。タイムは若い頃よりはアレですけど、やる内容は一緒にしていて、それが僕の中でのバロメーター。できなくなったらヤバいかなと。

奥井:私も自転車は未経験だったので、デビューしてずっと自転車に乗って、量をこなしてきました。でも、年齢を重ねて、同じようにできなくなってきたところもあって、やり方を効率良くしようかなと思って。でも、量をこなしてきたことで自信をもってやってこれていたので、この前も大事な試合の前に、自分のやってきたことを信じようと思った時に、「今年何をやってきたんだろう」って自信が持てなかったんです。

松田:原点が練習で数をこなしてやってきたというのがあるので、それが大事ですよね。僕も同じなんで。

奥井:でも今でも若い頃と同じようにやっているって言うのはすごいですね。

松田:いや、でもヤバイですよ。『めっちゃ足遅くなった』って自分で感じますし、一塁ベースめっちゃ遠いですもん(笑)。昔はもっと早かったけど、今は経験でカバーしています。若い頃にはなかった経験と実績で。

松田:何歳までやり続けたいとか、現段階でありますか?

奥井:40歳まではトップの世界でいたいですね。

松田:僕も40歳までは這いつくばっていきたいですね。5年後もプレーしているイメージしかないので、お互い一緒に熱くやっていきましょう。

奥井:私も一走に全てをかけていて、そういう気持ちが伝わればという思いで走っているので。松田選手は守備で構えている姿でも熱い思いが伝わってくる、見ていて、こうありたいと憧れる選手です。

松田:僕はこれからも自分に制限をかけずに、トレーニングに関しても若い頃と同じことをする。自分にストップをかけずに、これができたから36歳のシーズンも乗り切れるというような思いで臨みたいですね。熱い気持ちを持った方が、なんでも勝ち組になれると思います。

奥井:この一年調子も悪くて、悩みながら、来年に向けてどうしようかと思っていた時に(松田選手と)お話ができて、やっぱり気持ちが大切だなと思いました。私も原点に戻って、スマートさではなく、がむしゃらにやっていこうと(笑)。

松田:それは2人に通ずるなと思いました。スマートにまとまってしまったらダメです。熱く!でも、泥臭くって言葉は嫌いなので(笑)。常にプロ野球と競輪界を盛り上げる立場にいたいという気持ちも大切だと思うので、まだまだ業界を引っ張るつもりで「俺しかいない」という思いを持ち続けたいですね。これでお互いに2019年活躍したら、この対談が良かったということで(笑)。違うスポーツですけど、まだまだ熱い気持ちを持ってやっていきましょう!

奥井:年齢を気にしていたところもあったけど、とても励みになりました。熱い気持ちを持ってやっていきましょう!ありがとうございました。男子の競輪選手は60代の方とかもいるので、野球を引退されましたらお待ちしていますね(笑)。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

松田宣浩「ベテランになって変えた事、変えない事」 競輪女王・奥井迪と対談3