「仕事がうまくいかず焦る」「人間関係にイライラする」「将来のことが何となく不安」。誰でもマイナスの「苦しい」感情を抱えてしまうことがあります。しかし、「苦しい」感情を放置していても改善することはありません。心も体も不健康になり、ますます苦しくなるのです。では、どのように対処したらよいのでしょうか。

 今回は「人生うまくいく人の感情リセット術」(三笠書房)を紹介します。著者は精神科医の樺沢紫苑さん。メディア出演も多いのでご存じの方も多いでしょう。脳科学に裏付けられた「感情リセット術」は、「脳科学」と「心理学」に基づく科学的メソッド。著者独自の経験をもとに確立した理論は大変ユニークでした。

睡眠を削ったり、徹夜は愚の骨頂

 ここは東京タワーを見下ろすことができる高層タワー。夜の帳(とばり)がおりる頃、何やら若いビジネスパーソンが歓談中です。どのような会話をしているのでしょうか。

A氏「いやーできる人ほど仕事が回ってくるんだよね(オレだよオレ)」
B氏「オレなんか予定で手帳が真っ黒(アポぎっしりで忙しいしね、オレ)」
C氏「最近、毎日タクシーで先月は20万円超えたよ(当然、会社に請求したよオレ)」
D氏「ここ数カ月、睡眠時間が2時間くらい(でも、仕事さぼって手抜きするよオレ)」

 高層タワーで働いている自分に酔いながら、彼らの長い夜が始まります。しかし、このような人を見かけたら要注意です。寝る前の生活習慣で「人生」が決まるからです。

樺沢さん「集中力をリセットする方法がいくつかありますが、重要なのは『睡眠』です。ぐっすり眠ることによって翌朝に集中力を回復することができます。しかし、十分な時間寝られなかったり、眠りが浅くて夜中に何度も目が覚めてしまう状態であれば、朝起きても頭がボーッとします。集中力が低い状態からスタートするわけです」

同「朝起きた瞬間にその日のコンディションが決まってしまいます。ですから、睡眠を削って仕事をしたり、徹夜で仕事をしたりするというのは『愚の骨頂』です」

 樺沢さんによると、睡眠不足は集中力の最大の敵であり、「睡眠」は集中力を高めて働くために絶対に必要とのことです。

同「どうすればぐっすりと深い眠りが手に入れられるのでしょうか。それは、『寝る前の2時間』の生活習慣によって決まります。寝る前の2時間にやってはいけないことは、『食事、飲酒』『激しい運動』『熱い風呂』『ゲーム、映画』『スマホパソコンテレビ』などが挙げられます」

同「逆にやった方がいいことは、『ゆったりとした時間』『リラックスした時間』を持つことです。音楽やアロマなど非視覚系娯楽でのんびりする、家族とのコミュニケーションを取る、ペットとたわむれる、身体をリラックスさせる軽い運動、熱すぎない入浴、読書などです」

徹夜は仕事を怠けているのと同じ

 寝る前にリラックスして緩急をつけることで、睡眠による回復が実現できるようです。また、人間には「交感神経」と「副交感神経」があります。これをうまく切り替えることが大切です。

樺沢さん「昼は『交感神経』が優位で、夜になると『副交感神経』に切り替えて、ゆったりとリラックスして心と身体を回復するのです。『交感神経』から『副交感神経』へ切り替えるためにはクールダウンの時間が必要です。寝る前の2時間にうまくのんびりと過ごせれば、自然に切り替わります」

同「遅くまで残業をすることで、100%までの回復が困難となります。つまり、『遅くまで残業をする』ことは、『仕事を頑張っている』のではなく、『仕事を怠けている』のと同じなのです。寝る前2時間のリラックス時間は、すべてに優先して確保しましょう」

「仕事を頑張る」ためには、寝る前2時間の「リラックス」が必須です。たまに、徹夜をして睡眠時間が短いことを自慢している人がいますがそれは好ましくありません。本書は医学的な見地から、時間術が分かりやすく説明されているので参考にしてください。

コラムニスト明治大学サービス創新研究所研究員 尾藤克之

私たちにとって睡眠が持つ意味とは