2800年前の石板には、炎を吐く「貪る(むさぼる)者(ディヴァアラ:devourer)」というクリーチャーを捕縛するためのアラム語の呪文が書かれていたことがわかった。
この石板は2017年にトルコ、ズィンジルリ(Zincirli。古代にはサマルと呼ばれていた)にある小さな建物の中から発見されたもので、石製の化粧品容器に刻まれていた。
アメリカ聖書学会で米シカゴ大学のMadadh Richey氏とDennis Pardee氏が発表したところによると、呪文を書いたのは「シャダダンの息子ラヒーム」という魔術師である。
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貪る者による火傷は、貪る者の血液で治療
貪る者の吐く火で火傷を負った人の治療に使われるのは、貪る者の血液だという。だが、血液を飲むのか、それとも患部に塗って使うのかは不明だ。
文字の他に、化粧容器の内外にはムカデ、サソリ、魚など、さまざまな生き物のイラストも彫られていた。
容器は本来は化粧を入れるためのケースだったが、呪文を書くものとして再利用されたようだ。
貪る者の正体は?
イラストを見る限り、貪る者はサソリやムカデのことなのかもしれない。炎は噛まれたときの痛みを表していると考えれば辻褄も合う。
石製容器の前面。アラム文字のほか、サソリとムカデの絵もある
実際、発掘チームはサソリに悩まされ、靴やバッグの中に潜んでいないか常に気を抜けなかったという。
あろうことか、化粧容器を運び出した後で、スタッフの1人がバックパックに紛れ込んでいたサソリに刺されるという事故まで起てしまったそうだ。
これは単なる偶然だろうか?
1世紀に渡り大切に保管されていた
分析の結果、呪文が書かれたのは紀元前850~紀元前800年頃と判明。したがって、これまで発見されたアラム語としては最古のものということになる。
だが、呪文が書かれた石製容器が見つかった小さな建物自体は、それより1世紀後くらい後に建てられたことも分かった。
つまり最初の所有者が死んでからもずっと保存されていたわけであり、呪文がかなり大切に扱われていたらしいことが窺える。
前面と背面にサソリらしき動物が描かれている
発見地であるサマルには、紀元前900~紀元前720年頃に存在したアラム人の王国の首都があった。しかし紀元前720年頃にアッシリア人によって占領され滅亡した。
References:Ancient Aramaic Incantation Describes 'Devourer' that Brings 'Fire' to Victims/ written by hiroching / edited by parumo
http://karapaia.com/archives/52269308.html
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