「いつまでもクリスマス気分でいちゃいけないわよね」そんな風に私が反省していたのは元日の朝、大晦日まで練習している各チームの写真を見た時のことでした。いやあ、12月23日にラージョがレバンテに2-1と勝った第17節の試合をラストにリーガもparon(パロン/休止期間)に突入。選手たちもバケーションで三々五々、散ってしまったため、しばらくノンビリ過ごしていたんですけどね。ふと気づくとマドリッド勢5チームも30日にはもう活動を再開していたため、いよいよ自分も動かないといけないと思ったんですが、そこは日本人の性。ついつい大掃除やカウントダウン用のシャンパンや葡萄(スペインでは零時の鐘が鳴る間に12粒食べる)の用意などに追われてしまうことに。

まあ、そんなことはともかく、このバケーション期間はサッカー界も冬の市場での移籍や2018年回顧といった記事が多かったため、とりあえず、今回は私が先日、イニエスタのbodega(ボデガ/ワイナリー)を訪ねたお話からすることにしましょうか。そう、年内のリーガが終わる直前の週、知人に現在、ヴィッセル神戸プレーするバルサスペイン代表のレジェンドの生まれ故郷にあるボデガに連れて行ってもらえることになったんですが、いやあ、自分もワインは好きですし、日本でも手広く流通していると聞いて、前々から行ってみたかったんですけどね。

カスティージャ・ラ・マンチャ地方にあるフエンタビージャ村は少々、交通に難があって、いえ、車で移動できる人ならいいんですよ。マドリッドから最寄りの都市アルバセテまで電車で90分程なのはともかく、そこからボデガに着くには「2日に1本くらい(笑)」とガイドのお姉さんが言っていたローカルバスを探すか、タクシーで40分。とはいえ、彼女によると「先月もハネムーン中の日本人カップルがタクシーで来て、たまたま私の終業時間だったから、帰りはアルバセテまで送ってあげたわ」なんてラッキーな場合もあるようですけどね。

実際、車でもマドリッドから3時間と辿り着くのに苦労したら、やはりお土産のワインを買うだけでなく、醸造所やワインを寝かす樽が並んでいる地下貯蔵庫、イニエスタが寄付したユニフォームトロフィーメダルなどが並んでいるミニ博物館を回れるツアー(https://www.bodegainiesta.es/enoturismo/enoturismo-visita-bodega/ 要予約)をしない手はありません。ええ、その日もスペイン人観光客のグループが何組か、見学とワイン試飲、食事がセットになったコースを楽しんでいましたしね。いくら何でもボデガ正面のイニエスタ像の台に乗って写真を撮っていたのはちょっとどうかと思いましたが、私もワイン樽の1つに「Jony Niguz/ジョニー・ニゲス」のサインを発見。

ガイドに訊いてみたところ、「夏のW杯の間、イニエスタが電話してきて、兄のジョナタンがその辺を旅行中だから、ボデガを見せてあげてとサウールに頼まれた」とのことで、いやあ、あの大会では1度もプレー機会がないまま、スペインが16強で敗退して悔しい思いをしたアトレティコカンテラーノ(ユース組織出身の選手)なんですけどね。地元のエルチェ(2部B)でプレーしている長兄もおいしいワインを買って帰れて良かったかと。ちなみにJリーグの日程が終わり、12月にはスペインに戻っていたイニエスタですが、まだこの冬はボデガに姿を見せていないそう。休暇中には必ず立ち寄るようですが、「スポーツ選手だから程々しか飲まないけど、彼もワイン好き」なんていうガイドの話を聞いたせいでしょうか、ついつい私もお手頃価格のボトルを購入してしまいましたよ。

まあ、ボデカの紹介はこの辺にして、そろそろマドリッド勢始動の様子をお伝えしていくことにすると。まずはクラブW杯3連覇を最後にお休みに入ったレアル・マドリーはバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でのダブルセッショからスタート。実は早々に悪いニュースが飛び込んできていて、いえ、アブダビへ行く前に1度は負傷が治っていたマリアーノなんですけどね。今度は坐骨神経痛で全治10日間となり、1年に1回しかない恒例のエスタディオアルフレッド・ディ・ステファノでの公開練習、8000人のソシオ(協賛会員)をスタンドに集めた31日のセッションにも参加できないことに。

そちらではrondo(ロンド/中に選手が入ってボールを奪うゲーム)から始まって、partidillo(パルティディージョ/ミニゲーム)、クロスからのシュートとファンが楽しめるメニューの練習の後、最後は選手たちがプレゼントのボールをスタンドに蹴り込んだり、サインや写真撮影に応じたりと盛り上がっていたようですが、何せ彼らにはどこよりも早く、新年3日午後9時30分(日本時間翌午前5時30分)から、延期されていた17節のビジャレアル戦がありますからね。

12月にカジェハ監督から、2011~14年にヘタフェを率いた後、アラブ首長国連邦や中国で経験を積んできたルイス・ガルシア監督に指揮官が変わった相手も現在、選手の放出や補強の調整に大忙し。まだ目立った変化はありませんが、確実にこのパロン中、18位の降格圏を脱出すべく色々、体制を整えてきたことでしょうし、鹿島アントラーズやアル・アインを軽く下したクラブW杯のような楽な試合は期待できないのはソラーリ監督もわかっているかと。

その上、彼らには週末、6日の日曜にもレアル・ソシエダとのホームゲームがあって、まあ単なる偶然ではありますが、こちらも年末にアシエル・ガイターノ監督を解任し、Bチーム担当だったイナモル・アルガシル監督を昇格させたばかり。彼は昨季も残り9節でエウセビオ監督(現ジローナ)がクビになった後、引き継いでチームを立て直した指導者ですが、これが2度目の就任後の初陣となれば、どんな手を打ってくるのか、なかなか予想は難しいところかと。何はともあれ、1試合少ない状態とはいえ、首位のバルサと勝ち点差8のマドリーですから、ここは連勝しておくに越したことはないのですが…。

そして年内2回の練習をマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でこなしたお隣さんの様子はというと。いやあ、実はパロン中の話題が多かったのはアトレティコの方で1つはこの冬の市場でのバイエルン緊急移籍の噂が発生したリュカ。うーん、当人がフィガロ紙でのインタビューで「マドリッドにいるのは悪くないけど、もし自分に興味のあるプロジェクトがあって明日、出ていかないといけないなら、考えるよ」なんて言っているのを読むと、昨夏のW杯の後には初めてのお子さんも生まれましたしね。「もっと家族を増やしたい。子供は絶対3人以上! 」というリュカとなれば、年棒300万ユーロ(約4億円)のアトレティコより、800万ユーロ(約10億円)のバイエルンとなるのは仕方ないかもしれないと思ったりもしたものですけどね。

どうやら筆頭株主のヒル・マリン氏が1月にバイエルンと話し合いを持つ予定で、「Lucas no puede salir en el mercado de invierno/ルーカス・ノー・プエデ・サリール・エン・エル・メルカードー・デ・インビエルノ(リュカが冬の市場で退団することはできない)」というはっきりした姿勢を見せているため、ヒザのケガからのリハビリ中の当人もパロン明けは普通にグラウンドに姿を現しているよう。どちらにしろ、年明け最初の日曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からの上位決戦、2位のアトレティコに勝ち点差2で3位につけるセビージャとの大一番にはその彼を始め、同じく負傷中のフィリペ・ルイス、ヒメネスは間に合わず。今回、シメオネ監督はサウールではなく、本職右SBのファンフランを左SBとして準備させているようですが、折しも今季のチームはDF陣にケガが集中していますからね。せめてリュカも6月までは辛抱してもらいたいものです。

そしてもう1つの話題は28日に行われたゴディンの結婚式で、いえ、すでに子供もいる奥さんのソフィアさんと入籍は昨年6月に済ませていたんですけどね。今回は母国のウルグアイで盛大に式を挙げ、チームメートのグリーズマンファンフラン、コケ、アリアス、ヒメネスらがモンテビデオに駆けつけたとか。いやあ、丁度その当日、スペインはDia de Inocente/ディア・デ・イノセンテ(スペインエイプリルフール)とあって、コケなどTVE(スペイン国営放送)のビックリカメラ風番組でまたしても騙された映像がオンエア。韓国製の最新マシンでファンション診断とか言われ、けったいなジャケットを着せられているって、もしや彼、この番組の常連になってしまった(http://www.rtve.es/alacarta/videos/gala-inocente-inocente/gala-inocente-inocente-2018-koke/4916219/)?

その横で流れていたゴディンの結婚式の写真(https://www.marca.com/futbol/atletico/album/2018/12/27/5c24f186e5fdead13b8b4593.html)は壮麗で良かったんですが、参列したチームメート共々、元気で練習に戻って来てくれたのが何よりかと。攻撃陣では母国ブラジルで右足の中足骨のボルトを入れ直し、2月のCL再開まで帰らないジエゴ・コスタはともかく、レマルが復帰しましたしね。とりあえず、グリーズマン、コレア、カリニッチ辺りでFWは回していけそうなので、日曜のサンチェス・ピスファンでも打ち負けないといいですよね。

そして弟分チームの方も見ていくと、第18節でトップバッターを務めるのはレガネスで、金曜にエスパニョールのホームを訪ねます。土曜はラージョの番でこちらもバジャドリーとのアウェイ戦、日曜最後の試合でヘタフェがバルサをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えるんですが、いやあ、先日、マルカ(スポーツ紙)でリーガ20チームのまとめ記事が出ていたんですが、昨今はマドリーアトレティコといったビッグクラブだけでなく、どこもpuerta cerrada(プエルタ・セラーダ/非公開)の練習が流行りのよう。

ええ、今のところ、ラージョだけは一般公開する日が多めなんですが、あのヘタフェでさえ、近頃はソシオしか入れないセッションがほとんどというのはあまりに悲しいかと。といっても1月中は日本代表に呼ばれ、アジアカップに参加するため、柴咲岳選手はいないんですけどね。今季から立派なシュダッド・デポルティーバ(練習場)でトレーニングしているレガネスもファンが入れるのは週1回程度と聞くと、私も時代の流れを感じるばかり。

それだけに貴重なのはこの2日、昨年中からマハダオンダの練習場周りを外から覗かれないよう、全面幕で覆ってしまったアトレティコワンダメトロポリターノで実施する公開練習なんですが、実はこれ、有料なんですよ。ソシオ以外の一般のファンの見学は10ユーロ(約1300円)で、20ユーロ払うとスタジアムツアーもできるそうですが、セッションが正午からある関係で、ロッカールームやピッチに行けるのは午後4時以降って、ちょっと不親切かも。今の時期は特別にスタジアム内にミニスケートリンクや子供向けの遊び場を設けたりと工夫はしていますが…まあ、丁度その日マドリッドにいて時間のある方は覗いてみるのもいいかもしれませんね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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