年末年始や盆休みなどで帰省した際に、義両親と過ごす人も多いでしょう。しかし、孫に執着する義両親に困っている女性たちから、弁護士ドットコムに相談が寄せられています。「離婚するなら孫を置いていけ」「孫を連れて行くなら裁判を起こす」と脅す義両親。撃退法はあるのでしょうか?(法律監修:鳥生尚美弁護士)

●子どもと実家に行こうとしたら、「あちらの匂いはつけるな」

弁護士ドットコムには、義両親との関係に悩む女性たちから多くの悩みが寄せられています。1人目の女性は、夫と子ども2人と一緒に義実家へ帰省しましたが、姑と折り合いがつかず、途中で下の子と2人で自宅に戻りました。夫を気遣って置いてきてしまった上の子を迎えに行こうと思っているのですが、姑に子どもを引き止められそうだと悩んでいます。

2人目の女性は、義両親と同居しています。しかし、自分の実家に帰ろうとしても「孫は連れて行くな。あちらの匂いはつけないでくれ」と姑から言われて実現していませんでした。そこで、義両親が旅行中に数時間、子どもを連れて実家に帰ったところバレてしまい、「裏切った! 1人で出て行く覚悟はあるのかね?」と言われたそうです。女性は離婚をするつもりですが、「親権を義両親に取られることはあるのでしょうか」と不安に思っています。

3人目の女性は、夫と子どもと一緒に自身の実家に家族で引っ越す予定といいます。ところが、義両親が猛反対。「裁判を起こす」と言っているそうです。女性は「どのような事で裁判を起こすのでしょうか。親権などでしょうか」と呆れ気味です。

●通常、祖父母が親権を持つことはできない

女性たちの義両親に共通するのは、孫への執着です。女性たちは、「我が子を奪われるのではないか」と色々な心配をしています。しかし、法的に祖父母は、孫に対して何も権利を持っていません。

「財産管理権」と「身上監護権」にわけられる子どもの「親権」は、民法818条によって、父母あるいは養親が持つことが定められています。父母が婚姻中は共同で持ち、離婚後は父母のどちらかが持つことになりますが、祖父母に移ることはありません。したがって、仮に義両親が、親権を主張して裁判を起こそうとしても、その訴えは裁判所に認められないでしょう。

ただ、孫と養子縁組をすれば、祖父母が養親になりますので親権を持つことは可能です。もっともその場合、子どもが15歳未満の場合は、親権を持つ親の同意が必要でありますので、これも現実的ではないでしょう。

万が一、夫と別居や離婚をしたら、夫(元夫)は子どもと面会交流することが可能ですが、義両親も「孫に会わせろ」と面会を求めてくるかもしれません。子どもと別居している親が、面会交流で子どもとどう過ごすかは、子の福祉に反しない限り、面会者に委ねられており、義両親をその場に連れてくることも可能です。

実際、このケースはしばしばトラブルになります。子どもと同居している親は、義両親が面会交流に来ることを想定しておらず、反発することが多いです。トラブルを避け、お互い気持ちよく交流を持ち続けるためには、別居している親は、あらかじめ、「面会時に祖父母も連れて行く」という連絡をしておくべきでしょう。また、祖父母に対して、面会時のあるべき対応について、きちんと説明して理解させるべきです。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
鳥生 尚美(とりゅう・なおみ)弁護士
早稲田大学法学部卒業。2006年弁護士登録(第二東京弁護士会所属) 日本司法支援センターの常勤弁護士を経て、あけぼの綜合法律事務所を開設。 中心業務は離婚・相続などの家事事件、とりわけ子の親権、監護者指定、面会交流、養育費等離婚問題の中での子どもに関する事案を多数取り扱っている。
事務所名:あけぼの綜合法律事務所
事務所URL:http://www.akebono-sogo.jp

義両親「離婚するなら孫は置いていけ!」 我が子の親権まで主張...撃退法は?