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 45年前に公開された映画『エクソシスト』は、超自然の恐ろしい所業が描かれている。悪魔がひとりのアメリカ人少女に憑りつき、最後にはカトリックの司祭によって撃退されるのだが、この映画で、キリスト教の悪魔祓いを初めて知ったという人も多いだろう。

 キリスト教神学の観点からすると、キリスト教におけるエクソシズムの歴史は、悪魔との戦いに身を投じるという概念が、キリスト教徒が自分の信仰や世界を理解するのにいかに重要な方法だったかを示している。

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中世初期

 イエスリストの生涯について、聖書はエクソシズムのいくつかの話をとりあげて説明している。1世紀のユダヤ教に共通の見解を反映した福音では、悪魔を、神に対抗し、人々に憑りついて悪に引きずり込む精霊として描いている。

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フランス、トゥールーズの司教、聖Exupereによる悪魔祓い。5世紀始め。

 悪魔に憑りつかれた人間は、常軌を逸した奇怪な行動をするという。例えば、ルカによる福音書には、悪魔に憑りつかれたある少年が、口から泡を吹いて激しく痙攣したとある。

 イエスリストは悪魔を追い払う特別な力を持っていて、信者も同じような力を持つことができると約束している。

 それから数世紀、悪魔祓いを行うときには、イエスリストの名を唱えることが一般的になった。

 2世紀、キリスト神学者のオリゲネスは、キリスト教徒が邪悪な精霊を精神や肉体から追い払うのに、どのようにしてイエスリストの名を使うかを説明している。

 時代が進むにつれ、エクソシズムはさらにキリスト信仰と広く結びつくようになった。人々を入信させるために、悪魔祓いが公開で行われたことにふれている文献もある。

 キリスト教の悪魔祓いのほうが異教よりも効果的に悪魔を祓うことができると、人々に信じさせ、だから改宗すべきとしたのだ。

 初期の文献には、憑りつかれた者に十字架の印をつける、息を吹きかけるなど、キリスト教徒が行ったさまざまな悪魔祓いの方法が記されている。

小規模な悪魔祓い(中世初期)

 中世初期には、独自に訓練された特定の司祭が、悪魔祓いを認可されていた。これは、今日でもローマカトリックはそうだ。一方、東方正教会の伝統では、すべての司祭が悪魔祓いを行うことができる。

 "小規模な悪魔祓い"と呼ばれるものが行われることもあった。このタイプの悪魔祓いは、憑依の度合いがそれほどひどくない人たちのためのものだった。

 正式に教会に参加するための儀式である洗礼式の前や最中に行われる。これは、すべての人間は概して、邪悪な精霊の力に影響されやすいものという仮定から生まれた。

 そのため、悪魔に対抗する祈りの言葉は、洗礼式前の準備期間である教理口授か、洗礼式そのもの、あるいはその両方で唱えられることが多い。

悪魔とプロテスタント(15~17世紀)

 15世紀から17世紀の間、西ヨーロッパでは悪魔に対する恐怖が増大した。この時期、司祭による悪魔祓いは、人間だけでなく、動物や無生物、土地にまで行われた。

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司祭と助手によって、ひとりの女性に悪魔祓いが行われている様子を描いた、1598年の木版画。口から悪魔が現われている

 その様子は、さらに詳しく語られている。悪魔に憑りつかれた者は、悪魔祓い専門の司祭の前に引き出される。悪魔は怒って、憑りついた者に激しく暴力的な行いをさせるという。

 悪魔祓いの最中も、暴行、空中浮遊、大声で罵声をあびせる、などの行為が記録されている。

 多くのカトリック儀式に懐疑的なプロテスタントは、即興で祈りを唱えるなど、もっと格式ばらない形で悪魔憑きと戦った。

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悪魔祓いを行う16世紀の聖人、聖フランシス・ボルジアの絵

17~19世紀


 17~19世紀の啓蒙思想の時期、ヨーロッパ人たちは宗教のいわゆる"迷信的な要素"に疑問をもち始めた。

 多くの知識人や教会のリーダーたちまでが、悪魔憑き体験は、心理学やほかの科学で説明がつくと主張したのだ。悪魔祓いは、不必要、あるいは危険でさえあると多くが見るようになった。

今日の悪魔祓い

 多くのキリスト教団は、いまだになんらかの形の小規模な悪魔祓いを行っている。例えば、監督教会派の洗礼式では、人々はサタンや、神に反逆するすべての邪悪な霊力を拒絶することを誓うか?と問われる。

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 カトリック教会には今日でも、憑りつかれた人に悪魔祓いを行う現役の専門機関がある。現在やっていることは、悪魔祓いが必要な者の保護、悪魔祓いを行う前に、憑依が疑われる者の医学的、心理的評価などを行っている。

 この数十年で急速に発展したキリスト教の中のペンテコステ派では、悪魔祓いは特に一般的に行われている。この宗派は、日々の霊的体験を重視し、従来の悪魔祓いに似たようなことを行っているが、"解放"と称している。

 アメリカでは、悪魔の存在を信じる人の割合は依然として高い。アメリカ人の半分以上が悪魔が人間に憑りつくことはあると信じている。

 だから、悪魔祓いに懐疑的な現代社会であっても、世界中のキリスト教徒の間ではいまだに悪魔祓いが普通に行われているのである。

References:Exorcisms have been part of Christianity for centuries/ written by konohazuku / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52269254.html
 

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