モードリアルに着る!オム Vol.25/小林直子】

 建築とファッションの相性はよく、古いところではジャンフランコ・フェレやロメオ・ジリ、最近ではマルベリージョニー・コカ、そしてオフホワイト及びルイ・ヴィトンメンズクリエイティブディレクターに就任したヴァージル・アブローなど、建築を学んだ後、ファッションの分野へと転向するデザイナーは数多くいます。

 なぜ建築なのでしょうか。ファッションを語る上でよく出てくる語句に「ディコンストラクション」というものがあります。日本語で言えば「脱構築」です。ファッションの世界において脱構築とは、既にある構築的なデザインをいったん壊し、再び作り直したものを意味します。どんな感じかというと、一般的なジャケットの袖が取れていたり、または前開きが斜めに走っていたりと、見るからに「壊れている」感じがするもので、メゾンマルジェラなどがその代表的なスタイルと言えるでしょう。

 これらは脱構築です。事前に構築されたものがなければ、そこから脱することはできません。この「構築」の部分を得意とするのが建築を学んだデザイナーたちなのです。

 建物を建築するときには、その構造が重要となります。骨組みと面となる壁がその主な構成要素でしょう。その骨組みと面の部分が崩れることなくしっかりしていて、身体の周囲に新たな建築物を構成するようなデザインが彼らの特徴です。そこには構造物としての理想がしっかりありとます。その理想は必ずしも人間の肉体の上に布をただ乗せただけでは到達できません。目指すのはあくまで理想の構造物としての衣服です。

 さて今回、アーツ・アンド・クラフツ運動の推進者のひとりであるチャールズ・レ二ー・マッキントッシュインスパイアされたコレクションをロエベが発表しました。マッキントッシュと言えば、インテリアや建築好きならよく知っている、スコットランドまれの建築家で、グラスゴーのヒルハウスアール・デコ様式の直線的なラインが特徴のラダーバックチェア、また一筆書きで描いたようなバラのモチーフが有名です。
 そんなマッキントッシュの建築をロエベが取り入れたのがこのルックなのですが、実はこのルック、特別、構築的というわけではありません。マッキントッシュスケッチプリントや、マッキントッシュのバラをデザイン化したプリントをところどころ使うのみ。ものによっては、マッキントッシュの肖像画をシャツにプリントしただけのアイテムもあり、単にマッキントッシュラバーや建築ファンに訴えるためのコレクションとなっています。今、アーツ・アンド・クラフツ、そして建築が熱い、そうロエベは言いたいのだなと解釈いたしました。

◆構築か脱構築か……「建築」に注目しよう

 ですから、特に何を真似するわけでもないのですけれども、とりあえず建築に注目することにしましょう。

 まず、建築モチーフグッズです。ロエベのように、建築史に登場するような建築家グッズが望ましいでしょう。調べたところ、上野の国立西洋美術館にはル・コルビジェのグッズがあります。日本で間近に見られる建築史に登場するような建築家が設計した代表的な建物といえば、ル・コルビジェによる国立西洋美術館本館です。実際に見て、空間を体験できるル・コルビジェの建築に関するグッズは、日本で持つ建築モチーフには最適でしょう。そのほか誰でもいいので、お気に入りの建築家デザインしたものやグッズを持つのもいいでしょう。

 次に、建築を学んだことがあるデザイナーデザインする衣服について考えてみましょう。構築的とはどういうことか。また、それらを壊して作られたディコンストラクションの衣服とは何を意味するのか、など。西洋の建築と日本の建築。西洋の衣服と日本の伝統的な衣服など。このテーマについて思いをめぐらせ、自分は今まで構築的な衣服が好みだったのか、それとも脱構築に魅かれてきたのか、考えてみましょう。

 そんなことを言われてもよくわからないという方は、構築派の代表であるヴァージル・アブローデザインのオフホワイトまたはルイ・ヴィトンメンズを、脱構築を知りたい場合はメゾンマルジェラバレンシアガを実際に着てみましょう。買わなくても試着だけで十分です。何がどう違うのか、デザイナーは何を意図しているのか、身体で感じてみましょう(もちろんその前にロエベの店舗でマッキントッシュ・コレクションをチェックして!)。

 ファッションにも共通の言葉があり、それを知らないと理解できないことがたくさんあります。理解できた上で着てみると、服を着て感動するということが体験できます。知っているということは随分と格好のいいことです。デザイナーの背景を知って、実際に着てみて、ファッションと建築について、本当の意味で理解するといいでしょう。



【小林直子】
ファッション・ブロガー。大手ブランドのパターンナー、大手アパレルの企画室を経て独立。現在、ファッション・レッスンなどの開催や、ブログ誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』などで活躍中。新刊『わたし史上最高のおしゃれになる!』は発売即重版に。新刊『お金をかけずにシックなおしゃれ 21世紀のチープシック』が発売中

loeweインスタグラムより