2018年12月31日(月)、沖縄コンベンションセンター展示棟にて、『オリオンビール presents Last平成CountDown Live in OKINAWA』が開催された。

沖縄県出身のアーティストたちが集い、県内外の人たちと一緒に“笑顔”で年を越そう、という想いから2017年に始まった沖縄のカウントダウンライブ。MONGOL800主催で開催された初回は、沖縄の音楽シーンに新たな1ページを刻んだスペシャルな夜になった。このステージでキヨサクが、「今回はモンパチの20周年、次は誰かの周年記念という感じで、沖縄の模合(もあい)形式にして(笑)、親をどんどん交換しながら、毎年やりたい」と言っていたとおり、第2回目の今回は、2020年にデビュー30周年のアニバーサリーイヤーを控えているBEGINが中心となって行われた。

チケットは、前回を上回る約3週間でソールドアウトという早さで会場には4,200人が集まった。開演30分前、会場入口からの人の列は表通りまで長く続いている。誰もが、いかにこの日を待ち望んでいたかがうかがえる。そして超満員の会場は、ライブが始まる前から年越しを一緒に楽しもうという人たちの気持ちが溢れて、あたたかい空気に満たされていた。

午後7時。「わかるよねぇ〜」のネタで沖縄では知らない人はいない、お笑い芸人・護得久栄昇先生と仲座健太の「かぎやで風」で始まった。オープニングは、出演アーティストの代表曲を、ほかのアーティストがカバーするというスタイルで次々と歌われる。例えば、BEGINの「島人ぬ宝」をMONGOL800が、かりゆし58の「アンマー」をKiroroが……というように。まるでウチナー(沖縄)ソングのヒットパレードだ。これも沖縄のカウントダウンライブならではのスペシャルのひとつだろう。

トップバッターはDIAMANTES(ディアマンテス)。4人組の女子ダンサータピオカワイルドラテンナンバーを聴かせた「WANDA」で一気にステージに熱を帯させ、その後は、去年に続いて「もう一度彼女とデュエットしたかった」というアルベルトの誘いで実現した「今夜は離さない」を披露。「深紅」のロングドレスで登場したHY仲宗根泉とのデュエットのサプライズに、客席から大きな歓声が上がる。全身「白」衣装のアルベルト城間は、その時放送中の紅白歌合戦を意識して、「僕らも紅白で歌わせていただきました(笑)」と言って笑いを誘う。最後は、アルベルトがティンバレスを叩きながら歌う「沖縄ラティーナ」の軽快なラテンサウンドで会場を盛り上げてステージを後にした。

THE SAKISHIMA meeting

THE SAKISHIMA meeting

続いては、石垣島の新良幸人と、宮古島の下地イサムの先島出身の2人による、THE SAKISHIMA meeting。陽光を感じる軽快なDIAMANTESから一転、「ストレンジャー」(ビリー・ジョエル)のイントロに導かれるように登場したダンディな2人に、会場は大人の空気感に満たされていく。独特のメロディーと三線の音が、その場にいる人たちを自然豊かな先島へと誘ってくれる。

「実りある新年を迎えようということで、『ユーニンガイ』(方言で“世願い”。1年間の豊穣を祈願する儀式)をお届けしました」と新良。ミャークフツ(宮古方言)の歌詞が、まるでフランス語のようにも聴こえる「ジャジィー・ミャーク」、さらに米New York TimesのサイトにもMVが公開された「ダニー・ボーイ」のウチナーグチ(沖縄方言)Ver.では、哀愁漂う歌声に会場の誰もが静かに聴き入っている姿が印象に残った。

Kiroro

Kiroro

「ちょっとだけゆったりとした時間が流れますので、そのまま眠らないでね(笑)」という玉城千春のひと言で、ここからは緩やかなKiroroタイムに。全国デビュー20周年を迎えた彼女たちのデビュー曲「長い間」からライブは始まった。途中で、会場全体から自然と歌声が湧きあがる。「みんな、じょーず!」と千春。「みんなに歌ってもらった方がいいかもね(笑)」続く「Best Friend」では、その歌声はさらに大きくなった。「高校生の頃、クリスマスの季節に東京へ行った時、電車に乗ったら、サラリーマンの方が下をうつむいてて、疲れてるように見えました。そんな大人のみなさんにもサンタが来たらいいのにと思ってできた曲」と話して歌ったのが「冬のうた」。どんなに離れた街にいても、想いは繋がっている。白い粉雪が優しく心に届くよ…。ここは雪の降らない南の島だけど、凍えた心は歌で温めてくれる。やわらかな歌声を聴きながら、心も身体も暖まっていく。ほっこりした気持ちになったKiroroのステージだった。

MONGOL800は、いつものようにカチャーシーを踊りながらステージに現れた。「沖縄のカウントダウン、遊びましょっ!」というキヨサクのひと言でスタート。はじまりの曲は「あなたに」。激しいタカシのカッティングと、サトシタイトドラミングが、客席の人たちの気持ちに火をつけ、加速させていく。会場は一気にヒートアップ。空に向かって突き出した無数の腕が前後に激しく揺れる。「平成最後のカウントダウンですよ! 大きな声を聞かせてもらっていいですか!?」と言って「OKINAWA CALLING」。“セイ、オーオ!”とコール&レスポンスが続く中、今回もやはり、モンパチの高校時代のヤッケーシージャー(沖縄方言で、やっかいな先輩)、ツブさんこと、粒マスタード安次嶺が登場、くねくねダンスで会場を盛り上げる。

「(安室奈美恵の最後のライブと)同じこの会場で安室ちゃんと同じステージに立ったことは、モンパチにとって平成のビッグイベントですよ」と言って歌ったのが、安室奈美恵 with SUPER MONKEY’Sの「TRY ME〜私を信じて〜」。モンパチのアレンジでトライした「TRY ME」は、原曲とはまったく別もののように、疾走感のあるスカロックに姿を変えていた。誰の曲でもモンパチの演奏でキヨサクが歌うと、モンパチの歌になることを証明した1曲でもあった。

午後10時。続いて登場したかりゆし58の1曲目は、「電照菊」。“電照菊の光よ 夜の帳を照らしてくれないか 大切な人がいつか夜道に迷うことなく帰りつけるように”と前川真悟が歌い始めた瞬間、会場のいたる所で黄白色の光が灯る。それは、真悟が歌詞に込めた想いを察するように灯った携帯電話の光。ステージと会場がひとつになった瞬間だった。

「かりゆしで好きな曲があるから、カウントダウンで一緒にやらないか」というHY仲宗根からの誘いで、この夜のセッションが実現したと告げて始まった「恋人よ」。ここではキーボード仲宗根、名嘉俊もカホンで参加するスペシャルな編成で披露。苦労をかけた母親への感謝の想いを綴った代表曲「アンマー」、そして最後は、“かけがえのない時間を胸に刻んだかい”と、真悟がワンコーラスをアカペラで歌った「オワリはじまり」で、かりゆし58はステージを下りた。

HY

HY

続いては、HY。「ハイサイ、HYです! 今年最高のこの時間を、みなさん楽しんでいきましょうね!」と新里。男子メンバー4人が奏でる三線のイントロによるBEGINの「三線の花」のカバーからスタートした。真剣な表情で三線をつま弾く4人。きっとたくさん練習したんだろうなと想像できるメンバーの三線演奏に、会場からは指笛の声援が響いていた。曲の途中、新里が「この曲はやっぱりこの方に歌ってもらわないとね」と言ってBEGIN比嘉栄昇をステージに迎え入れると、会場から大きな歓声が湧きあがる。英之と栄昇のデュエットが聴けるのも、このカウントダウンライブならでは。琉球國祭り太鼓のエイサー太鼓も加わり、ドラマチックな曲になった。「沖縄の人なら、わかるよねー」と護得久先生の口まねで、新里が「Street Story」の曲名を伝えた後、エイサー太鼓とともに始まるイントロに、客席の人たちは即座に反応。会場全体でカチャーシーの手踊りが舞う。それは、今、この場所にいてよかった!と思える幸せな時間だった。

最後に歌われたのは、「ホワイトビーチ」。“風を集めて飛び上がろう 広い空に手を伸ばそう”という客席からの歌声が、会場をひとつにする。「最後は、みんなでジャンプしてBEGINに繋げましょう!」というかけ声とともに、全員でジャンプ! 

新しい年まで、あと30分ほど。心も身体もあたたまったところで、いよいよBEGINの登場だ。「今日は楽しい1日です。大好きなバンドのステージを見ながら、またライブを終えて汗をかいたまんまのみんなを迎えて話ができて、最高の年越しとなります」栄昇は、こう言った後で、今日のライブの構成を考えた島袋優とマネージャー氏を讃えると、会場はあたたかい拍手に包まれる。さらに栄昇は、TVオーディション番組『平成名物TV 三宅裕司のいかすバンド天国イカ天)』をきっかけにデビューしたBEGINは、「平成のバンドと言われてました。なので、今日をもって終わります(笑)」と言うと、「平成は5月まであるさー」と、すかさず優につっこまれる(笑)。そして、「その時に歌った曲を歌います」と告げてデビュー曲「恋しくて」を披露する。心に染みわたるブルージーな歌に引き込まれるように、会場の人たちは静かに聴き入っていた。

続いて、ニューアルバム『PotLuck Songs』から、これもブルースナンバー「網にも掛からん別れ話」が歌われる。優の奏でるブルースギターの音色が、まるで心の嘆きのように切なくむせび泣く。

ここでちょっとした嬉しいハプニングが。カウントダウンだからちゃんと時間通りにやらなければと、各バンドが早めに進行したため、時間に余裕ができてしまったのだ。「沖縄タイムってあるさ。イコール遅れること、みたいな。それは間違ってます。なぜなら今、時間を持て余してます(笑)」と栄昇。そこで急きょ、予定になかったザ・バンドの「I Shall Be Released」を日本語詞Ver. を披露してくれる。このサプライズに会場の人たちからも大きな歓声が湧き起こったのは言うまでもない。

「ここからカウントダウンに向けてリズムは止まりません。そのまま突っ走って行きたいと思います」と告げた後、宮城姉妹を迎えてマルシャショーラのメドレーが続く。栄昇が歌う「バルーン」、上地等の歌う「帰郷」、優が歌う「海の声」、そして「流星の12弦ギター」の後、いよいよ“その時”が迫ってくる。優の先導でテンカウントが始まる。会場からも大きな声がカウントを刻んでいく。

「10、9、8、9……サン、ニー、イチ!」その瞬間、銀テープが会場に放たれる。2019年の最初の曲は、前向きな想いを歌に託した「上を向いて歩こう」でスタート。歩くように刻むマルシャリズムが、前向きな気持ちへ背中を押してくれる。ここからは次々とゲストを迎えてのマルシャショーラ・メドレーだ。「また逢う日まで」では栄昇の高校の同級生・新良幸人を、「年下の男の子」ではKiroroと仲宗根を、「バン・バン・バン」は下地イサム&前川慎吾&新里英之を、さらに「お嫁においで」ではアルベルト城間&キヨサクを迎えてと、ここでしか聴けないプレミアムなメドレーとなった。

そしてフィナーレでは、本日出演した全員がステージに揃って、「島人ぬ宝」を歌う。沖縄出身のミュージシャンたちが、沖縄に生まれたことを誇りに思い、誰もがこの曲を笑顔で歌い繋いでいきたいと願う。それは会場にいる人たちも同じ気持ちにちがいない。島人の心を歌った宝物のようなこの歌を、会場のみんなが大きな声で一緒に歌う姿を見て、そう思った。

平成最後のカウントダウン。新しい年号の始まりの年となる2019年の年越しも、またこの場所で再会できることを誓ったライブだった。

フィナーレ