「視聴率至上主義」という言葉が聞かれて久しいが、本来の視聴率はテレビ業界がスポンサーに番組の評判を知らせるために用いられた。しかし、それが視聴者にも分かるようになりおかしな具合になっていく。視聴率が高い番組は「おもしろい」「見る価値がある」から視聴されていることは分かるが、視聴率が「低い番組=おもしろくない」という図式にはならないのではないか。にもかかわらず、視聴率で番組の質まで判断してしまうのが「視聴率至上主義」なのだ。

新年1月2日の夜10時15分からNHK総合で放送された『新春TV放談2019』では千原ジュニアと杉浦友紀アナウンサーが進行を務め、他局の番組でコメンテーターとして活躍するタレントからプロデューサーまでもゲストに迎え、視聴率に関するトークで大いに盛り上がりを見せた。

番組が10代~60代を対象に好きなドラマを複数選択してもらった『2018年人気ドラマランキング』の10位以内に、話題になったドラマ『おっさんずラブ』がランクインしていない。

『おっさんずラブ』(テレビ朝日)に関わったプロデューサーの貴島彩理さんは、杉浦アナから「実は23位」と知らされ「低い!」と笑顔を見せた。貴島さんによると初回視聴率「2.9%」で「だいぶしんどい、ヤバいって思いました」という。

しかも、最終回までそれほど視聴率は伸びることはなかった。ところが『おっさんずラブ』はSNSで話題になり、番組公式インスタグラムの裏アカウント的なインスタグラム『武蔵の部屋』などは放送期間中に公式インスタグラムのフォロワー数を抜いてしまい、貴島さん自身がびっくりしたほどだ。

動画配信サービスSHOWROOM」代表の前田裕二さんも「僕らで一番話題になっていたのが『おっさんずラブ』」と評価しており、SNSで「二次創作」的なイラスト作品が飛び交う現象にも注目していた。

このようにSNSが盛り上がるなか、第6話・第7話あたりで「#おっさんずラブ」がTwitter世界トレンド1位になり、貴島さんも「え、どうした?」と異変に気づいた頃には最終回を迎え、ドラマ終了後に「おかしなことになっているぞ」と実感したという。

視聴率は振るわなかったにもかかわらず、ドラマが終ってから「やらないか?」とオファーが来て映画化も決定したのだ。今回の『おっさんずラブ』現象が、現状の「視聴率至上主義」に一石を投じた可能性は大いにある。

ちなみに貴島さんは2019年1月クールのドラマを進めており、「バラエティADを描くドラマで、妖精のおじさんが毒舌で社会への嫌なことを隣で言ってくれる」とさわりだけ明かした。千原ジュニアが「もしかしたら第1話、数字しんどいかも…」と笑わせたところ、彼女は「もう慣れてるので大丈夫です」と余裕で微笑んだ。その新ドラマがどのように話題となっていくか注目したい。

画像は『武蔵の部屋【公式】 2018年6月3日付Instagram「俺たち結婚します #なんちゃって」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)

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