風邪や花粉症、気温差、香辛料の刺激などで出てしまう、日常的な行為の一つである「くしゃみ」ですが、その拍子に背骨の一部を骨折してしまうこともあるそうです。くしゃみで骨折してしまうメカニズムについて、医師の市原由美江さんに聞きました。

正式には「脊椎椎体圧迫骨折」

Q.くしゃみをしたときに起こりうる「背骨圧迫骨折」とは、どのような症状ですか。

市原さん「正式には『脊椎椎体(せきついついたい)圧迫骨折』といいます。簡単に『圧迫骨折』と表現することもあります。背骨は、脊椎を構成する一つ一つの骨である椎骨(ついこつ)が積み重なってできています。

骨粗しょう症などが原因で骨がもろくなると、転倒など少しの圧力で椎骨がつぶれて発症します。骨折した部位の背中や腰に痛みが出ますが、軽い痛みの場合、気付かないことがあります。つぶれた骨が神経を圧迫している場合はもっと強い痛みを感じます」

Q.くしゃみをすることで、どのようにして背骨圧迫骨折につながるのですか。

市原さん「くしゃみをした場合、その反動で刺激が背骨に伝わり、圧迫骨折を起こす可能性があります。その人の骨のもろさやくしゃみの仕方にもよるので必ず圧迫骨折につながるわけではなく、あくまでレアケースです」

Q.骨がもろいというと高齢者のイメージがありますが、若い女性も背骨圧迫骨折になりやすいのでしょうか。

市原さん「骨粗しょう症は高齢の女性に多い病気ですが、やせすぎている若い女性も、骨粗しょう症のリスクが高くなるので圧迫骨折を起こしやすくなります。具体的には、過度なダイエットによるカルシウムビタミンDの不足、過度な減量による女性ホルモンの減少に起因します」

Q.背骨圧迫骨折は気付かないこともあるそうですが、本当ですか。

市原さん「本当です。背が縮むなどの『いつの間にか骨折』というものがあります。骨折の程度や場所によって個人差がありますが、腰が少し痛む程度の自覚はあるものの、しばらくすると治ってしまうので、骨折自体に気付かないことがあります。背骨圧迫骨折も気付かないことがありますが、体を動かしたり寝返りを打ったりするときに痛みが強くなることが多いです。いつもと違う痛みを感じたら病院を受診しましょう」

Q.背骨圧迫骨折を放置していると、どのような別の症状を発症しますか。

市原さん「圧迫骨折の治療は通常、なるべく安静にしてコルセットを着用し、骨が融合するのを待つ保存的治療が行われます。これは骨への負担を軽くすることによって骨が変形することを防ぐものです。放置すると、骨が変形して背骨が曲がったり、痛みが残ったり、変形した骨が神経を圧迫して新たな痛みが生じたりすることがあります」

Q.一方で、くしゃみを我慢して鼻をつまみ、口を無理に閉じていると、体に負荷がかかると聞いたことがあります。

市原さん「そのようにくしゃみを我慢すると、腹圧が上がって血圧が上がる可能性があります。無理に我慢しない方がよいでしょう」

オトナンサー編集部

くしゃみで骨折するメカニズムとは?