代替テキスト

基本的にシャワーで済ませて、浴槽につかるのは週に数えるほど……という人も多い。でも、じつはその入浴習慣が、あなたの“健康寿命”と大いに関係しているのです――。

《1週間に7回以上湯船につかって入浴する高齢者は、週2回以下の人に比べて、要介護認定リスクが約3割減少する――》

これは先日、千葉大学の研究チームが発表したデータ。研究では、要介護認定を受けていない65歳以上の男女1万3,786人を3年間にわたって追跡調査した。研究チームの一員で東京都市大学教授の早坂信哉先生は次のように話す。

「湯船につかると、温熱効果のほか、水圧によって全身がマッサージされたような静水圧作用と、水の中で重力が軽くなる浮力作用が得られます。このほかにも入浴にはさまざまな作用があるので、この結果はある程度想定されていましたが、初めて臨床で証明されたことになりました。日本人は長時間労働、高い喫煙率といった傾向があるにもかかわらず長寿であることは世界的にも不思議だと捉えられてきました。この調査結果から、要因の一つとして、入浴の習慣が関係していると考えることができます」

早坂先生は高齢者にお風呂の温熱効果がもたらすメリットとして、(1)血流の改善、(2)痛みの軽減、(3)柔軟性のアップを挙げる。

「老化現象の主な原因は血流不足にあります。お風呂で体が温まると、血管が拡張し、末端にまで血液が流れるようになるため、体の隅々まで血流が改善されます。それにより、全身に酸素が運ばれて、疲労物質を取り除くといった効果があるのです。同時に筋肉の緊張がほぐれるほか、神経の過敏性が抑えられ、膝痛、腰痛といった痛みを和らげる効果が得られます。さらに、血流の改善によって関節の可動域が広がり、体の柔軟性が増します。体が動きやすくなるので、転倒による骨折などの日常生活における事故を防ぐことにつながるのです。また、これは現在研究中なのですが、入浴の習慣は認知症の予防・改善にも効果をもたらすと期待することができます」(早坂先生・以下同)

もちろん、全身の不要な皮脂や汚れをくまなく落とし、肌を清潔に保つ効果も。それだけメリットがあるのなら、シャワーだけで済ませずに毎日湯船につかることを習慣にしたいところだ。だが、血圧が高めであるなどの理由から、湯船につかることを避けている人もいる。

「私の患者さんにもそのことを懸念してお風呂を我慢している人がたくさんいました。しかし、今では『高血圧の人でもお風呂に入れます』と言えます。むしろ、高血圧気味の人ほどリラックス効果が期待できるのです。ただし、お湯の温度は40度以下で、熱すぎるお湯はおすすめしません。また、最高血圧が160mmHg以上、最低血圧が100mmHg以上の人は健康上のリスクがありますので、血圧が安定してからにしてください」

この季節、特に気をつけたいのが、血圧が急激に上下することによって脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患を引き起こす「ヒートショック」。冬はリビング、脱衣所と浴室の温度差が大きいため起こりやすくなる。脱衣所の室温や、お湯の設定温度には十分に気をつけよう。