2度も続いたら、もう「確信犯」だろう。

 巨人はFAで入団した丸佳浩外野手(29)の人的補償として、長野久義外野手(34)が広島に移籍すると発表した。同じくFAで獲得した炭谷銀仁朗捕手(31)の人的補償で、西武に移籍した内海哲也投手(36)に続き、生え抜き功労者がチームを去ることになった。

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 長野、内海には共通点がある。他球団のドラフト指名を蹴って「浪人」してまで、巨人入りを熱望。後にドラフト1位で入団し、複数のタイトルを獲得してチームの優勝に貢献した。「ジャイアンツ愛」を貫く2人に待っていたのは、FA獲得選手の代償で放出されるシビアな現実だった。

 いずれも選手会長を務め、チームリーダーとしての資質、人望の厚さも評価される2人だが、実力だけで考えてみる。昨季5勝の36歳内海は、5年連続2ケタ勝利から遠ざかり、プロテクト28人から外されたとしても不思議ではなかった。だが34歳長野は入団からバリバリのレギュラー。昨季は故障もあって初めて規定打席には届かなかったが、116試合に出場して打率.290、13本塁打、52打点の成績を残した。11年首位打者、12年最多安打の代わりを務めるほどの若手は見当たらない。

 巨人山口オーナーは「紛れもないチームの看板。残念だし、痛い」。石井球団社長兼編成本部長は「チームの変革の時期とは言え、内海選手に続き、チームの顔として活躍してくれた長野選手を送り出すのは、断腸の思い」。大塚球団副代表は「まさかベテランを取るとは。ショック」。そもそもプロテクトリストから外した時点で流出のリスクは生じるだけに、球団幹部のコメントはしらじらしく感じてしまう。

「広島は若手投手を欲しがっている」と言う誤算

 その点、原辰徳監督(60)は潔い。長野、内海の移籍に「心境的には残念。でもルール上、仕方ない。28人のプロテクトで彼らを守ることができなかった。勝負の世界は足し算ばかりでない。反対勢力、引き算はある。今回は足し算は丸、炭谷。引き算は長野、内海。人生は勝負。トータルで足し算なのか、引き算なのか。私自身、すべてを受け止めます」。

 ファンや周囲からの反発、批判は大きいが、指揮官としてすべてを受け入れる覚悟を示した。

 確かに誤算はあっただろう。巨人側には「広島は若手投手を欲しがっている」という情報があって、若手投手を厚めにプロテクトしたという。長野の年俸は2億2000万円。自前で若手を育成する広島が、年齢的に力が衰えていく高額のベテラン野手に手を出さないと踏んだのかもしれない。

 だが広島の補強ポイントは丸が抜けた外野手だけでなく、引退した新井貴が抜けた代打の切り札も欲しかった。鈴木球団本部長は「9年連続で100安打を打てる選手はうちにいない」と長野を指名。結果的に巨人の調査不足が浮き彫りになった。

『しっかり勉強して帰ってこい』と言うレベルの選手ではない

 巨人OBはどう見ているのか。

 中畑清氏は「OBの1人として寂しくてたまらない。伝統や格式を口にする球団が薄っぺらになったな。長野は内海同様、巨人軍の伝統を引き継げる数少ない選手。『しっかり勉強して帰ってこい』と言う人もいるけど、外で勉強しなきゃならないレベルの選手じゃない。巨人で現役を全うしても指導者になれた器だ。プロテクト枠から外したということは『ウチはいらない。どうぞ持っていって』と言ったのと一緒。球団が『大変残念』『断腸の思い』って言うなら、プロテクトしときなさいよ。出される選手の気持ちが全く分かっていない」

 現役時代、巨人からトレードで移籍した中日で最多勝を挙げた西本聖氏は「チームを強くしなければいけないというのは分かるが、大事なのは何なのかな。とても残念というか、寂しい。優勝へ向け『よし、行くぞ!』という時にチームの中心となるベテラン選手がたて続けにいなくなるのはどうなのか。選手は『自分だってどうなるか分からない』という不安な気持ちになる。これでチームが1つになれるのか。良い空気は流れないと思う。これではトレードと同じ。もう少しFA制度そのものを考える必要があるのではないか」

 巨人は昨年、実績のある村田修一(38)を戦力外にして、出場機会を与えた岡本和真(22)が大ブレークした。球団内にはそんなイメージもあるのかもしれない。

 生え抜き功労者の抜けた穴が大きいのか、FA選手や若手ら新戦力が台頭するのか。3度目の監督復帰となった原巨人の船出に、例年以上の注目が集まる。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

長野プロテクト外しは「確信犯」?