「デフレさえ脱却すれば日本は復活する」といった風説が流れているが、とても信じられるものではない。物価だけが上がって給料は上がらず、そのうえ消費税まで増えては目も当てられない。

 弊害はあるが、現時点ではデフレによって庶民の生活はマシになっているといえるだろう。独身者の割安な食事を支えているのは、外食産業だ。その一方で、値下げ競争の激化で、そこで働く従業員の心身がむしばまれているのも事実だ。

 「ワタミは天地神妙(明)に誓ってブラック企業ではありません」

 「会社の存在目的の第一は、社員の幸せだからです」

 そう豪語するワタミ渡邉美樹社長だが、キャリコネに寄せられた同社社員の声を見ると、典型的なブラック企業であることに疑いの余地はないようだ。例えば、ワタミ正社員で入社した20代の店長は、社長に訴えかけるような悲痛な心の声を書き込んでいる。

 「基本的に楽しいことは何もない。社内の人間関係、対顧客関係で精神的なストレスが生じるだけでなく、慢性的な長時間労働によって肉体的にもボロボロになる。カンボジアの人を助ける余裕があるなら、社員の声を聞く時間を少しでも作ってほしい。あなたの会社に人生の一部を捧げている人間なのだから」


社員の給与から「寄付金」を天引き

 この男性社員が言う「カンボジアの人を助ける」とは、毎月の給与から最低1000円を天引きし、カンボジア恵まれない子どもに寄付をすることを指している。

 普通ならば、こうした寄付は、会社の利益の一部、あるいは自らの役員報酬から捻出するのが、まともな感覚だ。それをなぜ社員の給与から差っ引くのだろう。これが「社員の幸せ」を第一に考える会社のすることなのだろうか。

 いや、決して違うだろう。「ブラックかどうかなんて人それぞれ」という言い訳も許されないほど、異常な会社と言っても過言ではないだろう。カスタマーサポートで働く40代の契約社員も、そんな自社のブラックぶりを追認している。

 「ネット上でもうちの会社は非常に有名だと思いますが、激務薄給で奴隷のような扱いを強います。それはバイトでも正社員でも変わりません」 営業で働く20代の男性社員も、「もっと社員一人ひとりの事を考えて経営に臨むべきだ」と憤っている。

 この男性は、寝る時間がないので店泊(てんぱく)し、風呂にも入れないが、平均睡眠時間が2~3時間で、帰宅できないくらい眠いと訴え、こう続けている。

 「みなさんも道を確定する前に、今一度、本当にそれで良いのか。考える事をお勧めします。本当は何がしたいのかではなく、本当に飲食店で将来ずっとやっていけるのか、という事を考えてみてください」


バイトの女子と付き合えるのが唯一の特典?

 そんなワタミのライバルは、「笑笑」のモンテローザだ。価格帯も店の雰囲気も非常に似ている。「和民」で働いていた20代前半の男性は、「料理はややワタミのほうがうまいが、価格は笑笑がリードしている」と言う。

 別の20代前半の男性も、ライバルはワタミだという。

 「料理の値段の下一ケタをワタミを意識して1円安くしているらしい。また似たメニューが多く、かなり意識していると考えられる」 そして、モンテローザでも、やはり休みが取れず、社員は常に眠そうで、ひどく疲れている。そんな中、要領よく出世して苦境を抜け出すには、どうすればよいのか。外商で働く20代前半の男性は「自分の頑張りというよりは『運』だ」と言う。さらに、こう話している。

 「繁華街など売れる店に最初に飛ばされれば、そのまま出世コースになりますが、最初から売れない店に飛ばされた場合は、いい歳になってもなかなか出世できないというのが現状です」 過酷な労働環境の居酒屋チェーンだが、楽しいこともある。店舗では若い女性との店内恋愛が比較的盛だと言う。モンテローザの販促部門で働いていた20代の男性は、その様子をこう述べている。

 「拘束時間が長く、バイトの子(高校生)と付き合っている社員さんをよく見かけました。(ただ)年に1回程、店舗異動があるので、短期恋愛が多い気がします」 職業には貴賎はないが、これくらいはハッキリ言えるだろう。居酒屋チェーンに正社員として入社するのは、相当な覚悟が必要だ。よほどの体力があるか、将来は自分の店を持ちたいなどのモチベーションがなければ、とても耐えられないだろう。

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