●創業6年目、5人目の社長としてキリバ・ジャパンの成長と今後を語る
キリバ・ジャパン 代表取締役社長 小松新太郎氏は、2018年5月に新社長として就任した。ようやく伸びを見せてきたという日本市場について、就任半年の小松氏に語ってもらった。

ビジネスの現状について教えてください

小松氏:2013年から事業を開始して6年目になりますが、2018年3月前半で日本のお客様が50社を超えました。ある一定のマーケットができつつあります。10月の段階で1年の目標は達成しており、このままいけば昨年実績に対して約30%アップ、全四半期で昨年を上回る状況にあります。非常に堅調に推移しているといえるでしょう。同様にグローバルでも非常に高い成長率で、四半期によっては50%を超える時もあります。日本だけでなく、グローバル全体でトレジャリーマネジメントというマーケットが花開こうとしています。

大学卒業後、IT企業にて営業としてのキャリアをスタート。以後、30年に渡り、大手企業向けの基幹系システム、業績管理システムビジネスインテリジェンスやビジネスアナリシス、DWHの営業に従事。2003年Hyperion Solutionに入社、営業責任者として同社の 業績向上を実現。2007年米国本社のOracle Corporationによる 買収を経て日本オラクルに入社、Hyperion 事業とOracle BI事業を牽引する。その後、2010年にSAPジパンのバイスプレジデント として入社。Business Objects事業の営業統括をはじめ>プロセス産業、製造機械産業、新規開拓部門の責任者を歴任し、同社の 業績向上に貢>>献。2018年4月よりキリバ・ジャパン株式会社 代表取締役社長就任。

トレジャリーマネジメントという市場で活躍するプレイヤーは他にいるのでしょうか

小松氏:われわれ以外では、非常に少ない状況です。一部国内ベンダーが総販売店という形で海外製品を扱っていますが、日本法人として活動できているのはわれわれだけですね。

なぜプレイヤーがそれほど少ないのでしょうか

小松氏:トレジャリーマネジメントという領域は、一般的に経理・財務という言い方をされますが、会計とは全く投資額が違います。会計という分野には投資が進んでいて、いろいろなプレイヤーがいますが、財務には専門ソリューションがほとんどありません。財務分野には教科書がなく、アプリケーションが出しづらかったという側面があります。

日本企業ユーザーが50社を超えたということですが、伸びるきっかけはありましたか

小松氏:意識の高いお客様がいち早く導入してくださった後、2-3年の中だるみがありましたが、稼いだお金をどうやって使うのかという観点への意識が、企業の中で高まってきているということがあります。

もうひとつ、以前はキリバ・ジャパン自身がどういうお客様に必要されているのかを理解できていなかったという点もあります。アプローチするお客様の業種やビジネス規模もバラバラで、たまたまニーズのあるお客様に当たると導入していただけるという状態でした。現在は景気の上向き、米中間の関税の問題による製造業でのサプライチェーンの見直しなど、自分たちがどこで稼ぐべきなのか、どのリスクを回避しなければならないのかを考える気運が高まっています。これも一つのきっかけでしょう。

社長就任から約半年が経過しましたが、現状の課題や対策についてどうお考えですか

小松氏:私は5人目の社長です。就任時、20人程度の組織でそれぞれが疑心暗鬼になり、やっていることの価値に不安を持っていました。小さな組織でも壁があったのです。そのため、最初に全員が向くべき目標を1枚の絵で示したのです。真ん中にお客様がいて、いただいたチャンスには必ず成功と幸せをお届けし、信頼され、結果としてビジネスオポチュニティを得る。このサイクルをどれだけ回せるかがわれわれの成功であり、目指すところだということです。これをゴールデンサイクルと呼んでいます。

もう1つは、単純なことですが社員証を日本法人で初めて作りました。これはわれわれのプライドであり、このブランドにかけてやっていくのだということを示すものです。上手くいかなかった時に出てきた不信感や不安に、プライドと方向性を与えたのです。

成功に導く具体的なポイントとしては、どんなものがあるのでしょうか

小松氏:お客様がわれわれを信頼してくださり、仲間を増やしてくれることが、結果的にわれわれの成長になります。そのためには満足度を上げることが大事です。CS活動はまだまだ足りていませんが、われわれのビジネスは継続して使っていただくことが生命線です。新規も大事ですが、お客様の満足度を高め、お客様がkyribaの仲間を増やそうと思ってくださることが成功だと思っています。

kyribaの強みは何でしょう

小松氏:まず、財務の非常にユニークなソリューションを持っていることです。日本法人の強みは、ダイレクトセールス・ダイレクトサービスダイレクトサポートです。ただし量の問題がありますので、限界があります。今後はダイレクトサービスダイレクトサポートを強化しながら、一緒にマーケットを開拓していただくパートナーの育成を急ピッチで行っていきます。

間接販売はすでにグローバルでは開始しており、30%程度がパートナー経由の販売です。日本ではまず一緒にサービスを提供して行くのを次のステップとしたいと思います。

現在ターゲットにしているセグメントはどこになりますか

小松氏:売上1000億以上で、複数の事業を営み、複数の国々でビジネスをし、複数の銀行と取引をしている企業を第一ターゲットとしています。そこにSAPのお客様であることが加わると、さらに確度が上がるという実感があります。50社を超えるお客様の約7割がSAPを使っています。

一方、急成長している企業も一定レベルを超えると一気に口座管理が重要になってくるという状況があり、ERP導入前にkyribaを導入してくださった例もあります。もっと裾野は広いと思っています。

日本企業に伝えたいことを教えてください

小松氏:日本において財務分野への投資はとても遅れていて、財務部門の方は戦える武器を持たない状態で日々仕事をしているように見えます。私は財務部門の方にもちゃんと戦える武器を持っていただきたい。

会計分野はいくら洗練されても、株価には影響しても収益には影響を与えません。しかし財務は、稼いだお金を賢く使うという部分に改善の余地がまだまだあり、ここにこそ日本企業の成長の差別化の余地が相当あるのではないかと考えています。

早稲田大学ビジネススクールの西山教授は、10億稼ぐのと10億賢く節税するのは同じ効果だと言っていました。外資系にはTAXの専門家は多いのに、日本の財務部門に税の専門家はほとんどいない。もっとそこを強化するだけでも、稼いだお金を有効に使える。私もそう思っています。

日本企業は内部留保が多い傾向がありますが、株主も財務知識を持ち、どれだけ正しい投資をして増やしているのかをもっと見て、指摘することが必要でしょう。本当のCFOを育成するには外部のプレッシャーを感じ、どう使うのが正しいのかを考える機会がなければなりません。経営会議で積極的に発言する立場になることのお手伝いをわれわれができれば嬉しいですね。

●グローバルから見た日本市場と開発ロードマップ
グローバルから見た日本市場については、クライアントカンファレンスにおける情報交換会のため、開発責任者として2度目の来日を果たしたkyriba Senior Vice President Product Thierry Truche氏に、今後の方向性とあわせて語ってもらった。

日本市場はグローバルから見てどのようなものでしょうか

Thierry Truche氏:日本市場は大きな成長を見込んでいます。1つ目の理由は、洗練されたトレジャリーマネジメントをできるような要望や要件を持っている企業があるので、大きな飛躍が起こりつつあると考えているからです。もうひとつ理由として挙げられるのは、日本経済のグローバル化です。海外のいくつかの銀行に口座を持ち現金を管理していくという状況になっています。したがって、銀行ごとにWebポータルいちいちアクセスすることを強いられてしまうわけですが、それを一元管理できるようにしているのがわれわれのポイントです。

kyribaの最も大きな価値は、その一元的な管理ができるようにするということです。利用していただければ、国内外のどこに銀行を持っていても一元的な管理と可視化、送金が可能になります。

日本の特徴的な顧客ニーズや制度はありますか

Thierry Truche氏:全銀システムフォーマットに合わせるのが日本のお客様の要件です。また、どのように海外に持つエクスポージャーについてヘッジができるかというのも、日本特有の要件だと認識しています。

日本企業にとって外貨でのキャッシュをどのように管理するか、先行き不透明な為替の変動に備えて対応することが大変大事になっています。海外企業と多数の取引を持つようになっているので、なおさらです。

CFOにとっては外貨で持っている預金の変動をヘッジできるような、外貨建てのエクスポージャーに対するヘッジもできるという非常にセキュアなシステムであるということが助けになると考えています。

各国の個別の要件に対応するのは大変だと思いますが、その社内的な仕組みはどうなっていますか

アメリカヨーロッパアフリカ・中東、アジアという3つの地域にグローバルで展開していますが、日本のチームと密に連携を取ることでヨーロッパの私のチームでも日本のお客様の要件を満たす開発をしたいと考えています。またアジャイルな手法を用いて対応しています。

法改正にも対応しています。私のチームでも全銀システムの要件変更には支払い面で対応できるようしていますし、2つ目のチームではコンプライアンスを見ています。銀行同様、お客様の支払いを管理するシステムなので銀行と同じく高いセキュリティを持っていなければいけないと思っています。コンプライアンスチームは、例えばGDPRへの対応についても先駆けて行いました。世界的に展開するプレイヤーとして、事業法人の要望に応じるだけでなく、銀行の非常に大きな規模での要件に充たさなければなりません。従ってわれわれは規制対応でも常に先取りして対応しています。

今後の開発ロードマップはどうなっていますか

Thierry Truche氏:短期、中期、長期のものがあります。短期的なものとしてはお客様に周知し、すでにコミットしてあります。トレジャリーのやり方を大きく変えるメガトレンドとしては、AI、マシンラーニングや諸々のブロックチェーンがありますが、中・長期的にはお客様が2-3年先に何を期待できるのかについて先行投資するのが最も大事だと考えています。

ユーザーニーズを取り入れる方法は何がありますか

Thierry Truche氏:Webサイトkyriba socialというものがあり、お客様が要件や仕様についての希望を掲載できるようになっており、それを全てのお客様と共有しています。それに票を投じていただいたり、どうして大事なのかを発言いただくことが可能です。われわれとしても意見交換し、何をロードマップに加えるべきか判断するのに役立つツールとなっています。

もう1つ有用なツールとして、カスタマーアドバイザリーボードもあります。お客様が何を最も求めているのかを収集し、合意形成をはかる場にもなっています。

AIはいつ頃から導入し、どういう用途に使うのでしょうか

Thierry Truche氏:すでにAIやマシンラーニングのための専任チームを立ち上げています。全てのタスクに人がどれだけ介在しているかを確認し、その自動化をAIで行おうと考えています。AI化すべきタスクはすでに確定しています。

6つの分野をAIが利活用できる分野として特定していますが、そのうちの2つを紹介しましょう。1つはcash forecastと言われる、どれだけ支払い資金や現金を口座に用意しなければいかないかを予測する機能があります。いつどの口座から引き落とされるのかを把握し、お客様が支払い口座に現金をどれだけ用意するかを助けます。これはマシンラーニングアルゴリズムで、短期的な1-5週間の期間なら予測精度を高められることがわかっています。それ以上の期間でも予測を高めるべくテストを現在行っています。通常、現金の流れがリアルタイムには財務部門にわかっていないため余剰現金を持つ必要がありますが、必要額の予測ができれば余剰を圧縮可能になり、銀行からの調達を減らす、金利を減らすといったことが可能になります。

2つ目は、口座から引き落とされた現金を会計上反映させる突合作業での活用です。AIを用いることで、現在人にしか処理できないものを自動化しています。

AIは自社開発ですか

Thierry Truche氏:当初はパートナーと開始しましたが、そのパートナーはトレジャリーの専門家ではありませんでした。そこで現在はオープンソースアルゴリズムも増えているため、われわれ自身がトレジャリーを熟知している立場から開発を行うようになって2年がたちました。
サードパーティの活用もしながら、マシンラーニングを開発することで、何が支払い上の異常かを検知することを始めています。トレジャリーという特定分野においてモジュールをどのように最適化して合わせるのか。お客様はプラグ&プレイでAIが使えることを求めているので、AIの機能を盛り込みモジュール化することに努めています。

SAPユーザーが多いということですが、他のERPとの連携は考えていますか

Thierry Truche氏:もちろんです。戦略的にグローバルで見た場合、われわれはトレジャリーマネジメントシステムを提供するプロバイダというだけでなく、それを超えて対象にしたいと考えています。お客様にトレジャリーマネジメントシステムのみならず、他のERPと接続をできるシステムを目指していますし、トレーディンシステムとも統合することでトレーディングも自在に連結されることを目指しています。

また、ブラックロックパートナーシップを持っています。MMFでの運用をブラックロックがしているのですが、完全にプラットフォームを統合しているので、余剰資金があるならブラックロックファンドkyribaのシステムから運用できるようになっています。

開発担当者から見たkyribaの強みは何だと考えますか

Thierry Truche氏:最も大きなものは、グローバルプレイヤーであるため、銀行口座が世界のどこにあっても完全に一元化された状態で可視化でき、どの口座からも支払いができるという点です。

2つ目として、グローバルプレイヤーであるため、たとえばアメリカではフィンテックで何が起こっているのかをつぶさにフォローし、どういう動向なのか実情について把握できます。フィンテックの一翼をプレイヤーとして担いたいと考えています。

したがって、最新の技術への多額の投資をしていますし、最終的にはお客様がクラウドアプリURLリンクを通じて接続し、世界中のオペレーションとトレジャリーをできるようにすることを目指しています。SaaSとして提供し、お客様がいちいち銀行と接続しているのか、セキュリティが十分担保されているのかといったことに気を揉むことなく利用できるサービスソフトウェアとして提供したいと思っています。
エースラッシュ

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