日本が正月真っただ中にあった1月3日、中国の無人探査機が人類史上初めて月の裏側に着陸成功というビッグニュースが世界を駆け巡った。

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 新年最初の連載コラムとなる今回は、躍進する中国の国家宇宙開発、さらに急増する宇宙ベンチャーの動向を紹介したい。

●人類初の偉業達成

 1月3日、中国の無人探査機「嫦娥(じょうが)4号」が月の裏側に軟着陸した。人類初の快挙だ。これまで米国のアポロ計画など人類が着陸を行ってきたのは月の表側だった。月の裏側は常に地球に背を向けているため、嫦娥4号と地球では直接通信ができない。そのため月周回通信衛星「鵲橋(Queqiao)」を介して中継を行っている。

 今回の月探査は長期的な月探査プログラムの一環だ。中国では月探査の第1段階として嫦娥1号(2007年)、嫦娥2号(10年)で月周回を実現。その後、13年には嫦娥3号が月の軟着陸に成功した。今回の嫦娥4号では裏側への軟着陸を実施し、次の嫦娥5号では月からのサンプルリターンを目指している。

 月探査だけではない。中国には宇宙強国になるという長期ロードマップがある。16年に発表された宇宙白書(第13次五カ年計画)の完了をもって宇宙強国建設のための基礎を構築。その後は30年までに宇宙強国の仲間入りをすることを長期目標に掲げており、あらゆる方面で宇宙開発を進めている。

●打ち上げ回数では既に世界ナンバーワン

 有人宇宙飛行では既に11人の宇宙飛行士と、2つの実験室を宇宙に送り込んでいる。今後は独自の宇宙ステーション「天宮」を建設し、22年からの運用を目指している。独自の全地球測位システムである「北斗」の基本システムは既に完成、20年には計35機体制に拡張予定だ。政府の「一帯一路」計画に関連して沿線国家に測位サービス提供を進めている。

 またロケット開発・運用も重点分野だ。中核をなすのが長征(Long Marchロケットであり、過去に300回近い打ち上げ実績を誇る。18年は米国でSpaceXが21回の打ち上げに成功して、民間企業による年間の商業打ち上げ回数の世界記録を作った。しかしながら、国単位では中国が18年に39回の打ち上げに成功し、米国をしのいで年間打ち上げ回数の世界1位になったのだ。

 さらには独自の衛星インターネット網の構築など多種多様なプログラムが同時に動いている。こうした活動を担っているのが政府系機関であるCNSA(国家船天局)、CAS(中国科学院)、安全保障機関、さらには国営企業であるCASC(中国航天科技集団有限公司)、CASIC(中国航天科工集団有限公司)だ。

●80を超える宇宙ベンチャーが存在

 このように国家機関と国営企業による大規模宇宙開発プログラムが脚光を浴びる中国であるが、実は民間主体の宇宙ベンチャーの数も急増している。呼応する形で17年は中国で初めて商業宇宙カンファレンスが開催された。分岐点となったのが14年に宇宙産業(特に商業打ち上げサービスと観測衛星)に、民間資本を流入させる方針を政府が発表したことだ。

 米国におけるイーロンマスクジェフ・ベゾスのように、IT業界で成功したビリオネアが自ら資産を投じて宇宙ベンチャーを立ち上げる形での起業はまだ例を見ない。ただし、米Wall Street Journalによると、中国の宇宙ベンチャーの数は80以上と報道されている。また、北京に拠点を構えるFuture Aerospaceによる60以上の民間企業が宇宙ビジネスに取り組んでいるという。

 宇宙ベンチャーの定義によって数にばらつきはあるものの、日本の宇宙ベンチャーの数は18年末時点で約30であることを考えると(一般社団法人SPACETIDE調べ)、既に日本の倍以上はプレイヤーが存在するとも言える。

●小型ロケット、衛星コンスレーションなどが急増

 急増しているのが小型ロケットベンチャーだ。昨年末に米Rocket Labが初の完全商業打ち上げに成功した小型ロケット開発分野は、世界で100社以上が取り組んでいると言われる。中国においても10社近い企業が取り組みを進めている。

 その代表例がLandSpace、iSpaceOneSpaceなどだ。LandSpaceは高度500kmに200kgまで打ち上げ可能な小型ロケット「朱雀1号」を開発し、17年10月に1回目の打ち上げを行ったものの失敗に終わった。iSpaceは昨年、サブオービタルまで実証打ち上げに成功。OneSpaceはサブオービタルロケット「OS-1」と低軌道まで到達可能なロケット「OS-M」の開発で100億円以上を調達している。

 小型ロケットだけではない。北京に拠点を構えるZeroG Labsは超小型衛星の開発を行っており、18年に同社初のラウンドで3.2百万ドルの資金調達を行った。同社は当初、分解能4メートル以上の6ユニットの超小型衛星を132機打ち上げる計画をしていたが、将来的には378機の衛星を配備することを発表した。

 通信衛星分野にもプレイヤーが存在する。13年に創業後、WiFiのシェアリングサービスで注目を集めてきたLinkSure Network社は、宇宙ビジネスに参入することを発表。地上ネットワークが未整備な地域に対して、26年までに272機の衛星群による無料のインターネット接続サービスを提供する計画だ。19年に最初の打ち上げを計画しており、20年までに10機の衛星を打ち上げる。

 政府だけではなく、民間宇宙ベンチャーによる宇宙ビジネスも動き出した中国。今年はその動向に注目だ。

(石田真康)

中国の無人探査機が人類史上初めて月の裏側に着陸した(写真はイメージ)