「聞く力」こそが最強の武器である』(國武大紀著、フォレスト出版)の著者は、企業経営者からビジネスパーソンまでを対象に、その人が本来持っている能力や才能を引き出す役割を担っているというエグゼクティブコーチ

そうした経験からビジネスのみならず、人生そのものに必要不可欠スキルとはなにか?」と考えたとき、答えはひとつしかなかったのだといいます。それが、タイトルにもなっている「聞く力」。

ビジネス、あるいは人生の苦難や問題を切り抜けるためのスキルは、話し方や伝え方ではなく、頭の回転の速さやロジカルシンキングフレームワークでもなく「聞く力」だというのです。

だとすれば、なぜ聞く力が武器になるのかが気になるところではあります。

人間関係のほとんどの問題は、自分が理解・共感してもらえないことから起こるからです。相手に対し、どれだけロジカルに言葉を尽くして語ったとしても、相手に対する理解しようという思いや共感がなければ、人は動いてくれません。

「人は論理ではなく、感情で動く」というのは手垢のついた言葉ですが、まさにその通りなのです。 「聞く力」があれば人間関係の悩みのほとんどは解決します。

「ちゃんと人に向き合い、相手の話をきちんと聞ける」 そのスキルがあるだけで、人間関係だけでなく、仕事も人生もうまくいくのです。(「はじめに」より)

そこで本書では、「聞く力」についてのノウハウと効能をさまざまな角度から紹介しているわけです。

きょうは第3章「会話・雑談が弾む『聞く力』」のなかから、いくつかのポイントを抜き出してみたいと思います。

Push 「聞く力」こそが最強の武器である

1,512円

相手の聞いてほしい話を引き出すコツ

人には、「他者から承認されたい」という「承認欲求」があるもの(マズローの欲求階層説)。承認欲求が満たされると、心が癒されたり、自信がついたりするため、承認してくれた相手に対して親近感や安心感を抱くわけです。

たとえばいい例が、自分が聞いてほしい話を聞いてもらえた場合。それが、両者の関係性に好影響を与えるということです。

でも、そのメソッドを普段の会話に取り入れるにはどうしたらいいのでしょうか?

その問いに対する答えとして著者は、自分の話したいことを自然と話してもらえるようになるというYESの法則」を紹介しています。

Y(You)、E(Excellent)、S(Space)の頭文字をとったもの。この法則を使うことによって、相手が聞いてほしい話を自然と引き出すことができるというのです。

Y(You)とは、「相手に意識を向ける」こと。しっかり意識を向け、さらに好奇心を向けることで、相手は「話を聞いてくれているな」と感じることができ、承認欲求が満たされるわけです。

まず最初にすべきは、相手が話したいことを話しやすくするために、好奇心を示す質問」をすること。この質問には「浅い」「中くらい」「深い」と3つのレベルがあり、相手との心理的距離を近づけていくために、「浅いレベル」の質問から始めるといいそうです。

たとえば「最近気になるニュース(話題)はなんですか?」「最近のマイブームは?」などと質問すれば、相手が話したい話題を引き出すことが可能。

そこからスタートし、関係性が深まっていくに従って、「中レベル」「深いレベル」の質問へと移行していけば、相手がより話したい話題を引き出せるようになるということです。

例としては、

「ここ3カ月で何かいいことあった?」(中レベル

「今、仕事(プライベート)で悩んでいることってありますか?」(深いレベル) などです。

このように、段階的に浅いレベルから深いレベルの質問に変化させていくことで、相手は抵抗感なく、自然に親近感を感じるようになります。(109ページより)

E(Excellent:素晴らしい)は、相手の存在そのものをありのまま受け入れるという「聞く姿勢」を表したもの。

私が学んだコーアクティコーチングの基本原則に、 「人は生まれながらに創造的で欠けていることのない完全な存在である」(Naturally Creative Resourceful and Whole) という考え方があります。

もし、このような視点で相手の話を聞いてあげられるとしたら、相手は、批判や評価を機にすることなく、自由に自分の話したいことを話せるようになります。(109110ページより)

最後のS(Space:間合い、場)とは、気持ちよく話せる場づくりの意。たとえば相手が興奮気味に「本当にすごかったのよ!」と話したとすれば、「おお、そうだったんですか!」というように、自分も同じような感情で応えるということ。

間合いを外さず、相手の感情の動きに合わせて呼応することが大きな意味を持つわけです。それは、一緒に会話のダンスをしながら呼吸を合わせるような感覚だと著者は表現しています。

また、相手の話を途中で遮らないことも大切。話を聞き終わらずに遮ってしまうと、相手は多少なりとも「拒否された」と感じてしまうものだからです。

もし途中で遮るなら、「途中で割り込んですみませんが、ひとことお伝えしてもよいですか?」というように「許可を促す言葉」を入れるべき。

なぜなら、相手から許可を取ることによって、相手に嫌な感情を与えることなく、話が続けられる場をつくることができるから。

つまりは相手との「間合い」や「場の流れ」に意識を向けながら、相手の感情の動きに反応していく。そうすると共感が起こり、お互いの距離が縮まるということです。

先にも触れたとおり、人には承認されたいという本質的な欲求があるもの。そして「承認された」と感じてもらうには、相手が聞いてほしいと思っている話をしっかり聞いてあげることが大切。

そこで相手に意識を向け(Y)、相手のありのままを受け入れ(E)、感情の動きに合わせて反応してあげる(S)。

この「YESの法則」を意識して話を聞けば、相手との距離がぐっと近くなるそうです。(109ページより)

3つの相槌で、人の心は開ける

著者によれば、会話の達人は「相槌の達人」。相槌をうまく使いこなせるようになると、それだけで相手の心を開き、信頼関係を深めることができるというのです。

実は、プロコーチと呼ばれる人は、相槌だけでコーチングを行うことすらあります。 実際にハイレベルコーチになると、コーチの側から一言も話さずに相手に大きな気づきや変化を起こすことが可能です。 それはまさに「聞く力」が最大限発揮された時に起こります。(117ページより)

しかしなぜ、相槌が人の心を開かせるのでしょうか? このことに関連して著者は、心を開かせる相槌には一定の法則があることを指摘しています。

相槌さえすれば心を開いてもらえるわけではなく、3つのポイントがあるというのです。

ひとつ目は、「共感を表す短いフレーズを使う」。共感とは、自分と異なる考えであったとしても、「相手はそう考えているんだな」と理解を示すこと。

具体的には「そう感じたんですね」「つらかったでしょうね」「それはうれしいですね」というように、短いフレーズで呼応してあげるということです。

逆にこのとき長いフレーズを使うと、共感されている意識が削がれてしまう危険性があるそうです。たとえば「つらかったんですね。わかりますよ、その気持ち。私も似たようなことを半年前に経験したことがありますから」というような長いフレーズ

こうなると相手の意識は長いフレーズのほうに向いてしまい、自分の感情体験から離れてしまうというのです。すると、深いレベルでの共感は得られなくなります。

そんな状態を避けるため、相手の意識がそれないように短い共感フレーズを使うことが大切だということです。

2つ目のポイントは、「具体化のフレーズを使う」。「具体的には?」「たとえば?」「もっと聞かせて」など、「少しでも相手を理解しようという姿勢」を表すフレーズを使うべきだということです。

このような具体化のフレーズを使うことによって、相手は「私のことに関心を持ってくれているんだ」「話を聞こうとしてくれているんだ」と認識できます。

つまり、相手の承認欲求が満たされるわけです。するとその結果、お互いの距離がぐっと近くなり、関係性が深まっていくという流れ。

そして3つ目のポイントは、「本心を開くフレーズを使う」。相手の心を開くためには、「本当の気持ちは?」「で、本当はどうしたいの?」など、そのきっかけとなる短いフレーズが必要だということ。

このとき大切なのは、相手がしばらく無言の状態であったとしても、言葉を一切挟まずに「ただ待つ」こと。

「沈黙が耐えられない」という方もいらっしゃるでしょうが、相手からすれば心を開くためには勇気が必要。なのに不用意に口を挟むと、相手の気持ちがしぼんでしまうというわけです。

大切なのは、相手のことを信じ、話し始めるのをじっと待ってあげること。心を開いてもらうには、相手を信じる姿勢が不可欠なのです。

いずれにしても、「たかが相槌」だと思っていたら、それは大きな間違いだと著者は言います。相槌をする際には「共感のフレーズ」「具体化のフレーズ」「本心のフレーズ」の3つを駆使することで相手の心を開くことが重要。そうすれば、深い信頼関係を築くことができるということ。

そして相槌を無理なく使いこなせるようになれば、やがて会話の達人に近づいていけるといいます。(117ページより)

「聞く」とは、「相手のよき理解者となる」ということでもあると著者は言います。そのため、相手のよき理解者となるために、正しい聞き方を身につけておく必要があるわけです。

ただし、それは決して難しいことではないそうです。事実、著者自身、元来は聞き下手だったのだとか。

でも、そんな経験がベースにあるからこそ、本書の主張は説得力を感じさせるのかもしれません。「聞く力」を磨いていくために、読んでみてはいかがでしょうか。

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Photo: 印南敦史