資源活用の観点から文書を出したそうです

農林水産省1月11日、コンビニやスーパーなどで作る業界団体7つに、恵方巻きの販売に関する文書を送った。近年、恵方巻きの大量廃棄がSNSで明るみになったこともあり、需要に見合った販売をするよう求めた。

農水省の食料産業局バイオマス循環資源課の担当者は今回の通知を、「事務文書の1つという扱い。資源の有効活用という観点で出した」と説明する。「売りたいから作る、ではなく、昨年の実績に基づいて売るなど、何らかの根拠を持って売ってくださいという呼びかけ」で、具体的な数値目標などは決めていない。

予約販売が多いクリスマスケーキよりも恵方巻きは大量廃棄が起きやすい


兵庫県のスーパー「ヤマダストアー」では昨年、消費者向けのチラシに恵方巻きの大量製造・大量廃棄の問題提起をし、話題になった。同省の担当者によると、売上実績に基づいて作ると宣言しただけあって、いくつかの店舗では完売。廃棄は削減されたという。今回出した通知でも、事例の1つとして紹介している。

需要に見合った製造を呼びかける連絡は、昨年の土用丑の日にも出した。通知を出したことで、廃棄量削減に向け売り方を工夫する小売業もあったという

「売れ残ったものをうな丼ひつまぶしにして販売したり、冷凍、真空パックなど日持ちする商品を増やして販売期間を伸ばしたりしていました」

クリスマスケーキおせちなど、他の季節商品でも廃棄の問題はある。しかし、クリスマスケーキは予約販売が多いため、無駄も少ない。商品の受け取り時期もクリスマス当日だけではない。一方恵方巻きは「1日で終わってしまう」ことが多く、こうした習慣が大量廃棄問題を大きくしている一因になっていると分析していた。

ネットでは恵方巻きの大量廃棄について、コンビニ業界の構造的な問題を指摘する声も大きい。コンビニ本部と決めた売上目標を達成するために店員やアルバイトが自腹を切って大量に購入し、その後捨てられる、という事態も起きている。

厚労省経産省と協力し、状況改善に動く予定はないのか聞いたが、

経産省とはサプライチェーンの合理化など、大きな枠組みで協力しています。厚労省とは直接関わってはいませんが、食品ロスを減らすために、加工食品の賞味期限表示を年月日から年月に変える動きを進めています。これらの活動は、働く人の環境整備に繋がると考えています」(農水省担当者)

と、明言を避けた。

ノルマからキャンペーンに販促方法変えたチェーンも「これならプレッシャーにならない」

コンビニ加盟店ユニオンの酒井さんは、今回の文書通知が、オーナーや働く人の負担軽減に繋がるのではないかと見ている。

「本部は加盟店側に売上目標を提案する際、目標数値の根拠を詳しく説明するなど、今まで以上に慎重にならざるを得ないのではないかと思います。行政から出た以上、本部社員も、慎重な目標を立てるよう、会社で指導されるのではないでしょうか」

業界の販売促進方法も変わりつつあるという。酒井さんが聞いた話によると、今年、あるコンビニチェーンでは加盟店向けに、新たなキャンペーンを実施しているという。恵方巻きの売上が昨年比130%以上かつ、恵方巻き販売に関する本部アンケートに答えた加盟店がエントリー対象で、上位になった店舗には観劇招待券、もしくは相当のクオカードが贈られるそうだ。

「参加したくない店は参加しなくていいですし、プレッシャーでもありません。これなら良いのではないでしょうか」

今回の農水省の通知がどれだけ効果を持つか、注視する必要がありそうだ。