大量リードを奪い後半30分から途中出場「出るかもしれないぞと監督から言われた」

 第97回全国高校サッカー選手権準決勝、この日一番の歓声は“J内定の控えGK”登場の瞬間だった――。

 12日に行われた準決勝第2試合・流通経済大柏(千葉)は瀬戸内(広島)に5-0で大勝し、2年連続の決勝進出を果たした。この試合に後半30分から途中出場したのは、J2・FC琉球の内定が決まっていながら控えGKの猪瀬康介だ。

 10日に琉球への内定が決まっていながら、今大会は出場ゼロ。それは1年生GK松原颯汰の存在があったから。今大会通じて1失点のみと堅守の中心となっている松原に、3年生の猪瀬はレギュラーを譲る形となっていた。

 しかし、この日の流通経済大柏は序盤から立て続けにゴールを揺らし、前半終了時点で3-0。「1点目が入ってから『もしかしたら大量点の展開になるのでは』と予測していました」と猪瀬が語り、本田裕一郎監督からもこう声をかけられていたそうだ。

ハーフタイムの時に『出るかもしれないぞ』と監督から言われました。それもあっていつもいい準備をしていますが、それ以上の準備をしようと気持ちを高めてアップできました」(猪瀬)

「本当に自分がつらい時に、あのたくさんの仲間が支えてくれた」

 第4審判が交代を示す「1」と「17」の文字を掲げると、流通経済大柏の応援団を中心に埼玉スタジアム2002からは大きな拍手が起きた。「本当に自分がつらい時に、あのたくさんの仲間が支えてくれたし、常に声をかけてくれたので涙が出そうになりました」と猪瀬は万感の思いを胸にピッチへ。そこで浮つくことなく、瀬戸内のシュートを正面で冷静にセービングするなど「とにかく失点しない」という意思を感じさせるプレーで試合を締めた。

 中1日で開催される青森山田(青森)との決勝戦に向けて「GKからの視点から言えば、青森山田はCBの三國(ケネディエブス)選手らの高さがあり、縦へのスピードが速い。だからこそリスク管理、マークの確認などしっかりやる必要があると思います」と猪瀬は話していた。

 14日の決勝、キックオフの笛をベンチから聞いたとしても、もし有事の際には自分がいる――。“最強の第2GK”が備える選手層で、流通経済大柏は昨年逃した選手権王者の称号を奪いにいく。(Football ZONE web編集部)

後半30分から途中出場した猪瀬【写真:Noriko NAGANO】