その国独自の文化や慣習は尊重すべきだが、法律で犯罪と定められた以降も一部の地域で根強く残る慣習のために命を落とす人がいるとなれば別問題だろう。このほどネパールで、生理中の母親がヒンドゥー教の慣習に従って家や家族から隔離されていた小屋で2人の息子とともに死亡した。『Sky News』『BBC News』『Fox News』などで報じられた。

ネパールには「チャウパディ(Chaupadi)」と呼ばれるヒンドゥー教の古い慣習がある。

月経が毎月来る女性は、少女も同様穢れたものとみなされ、家にいると神を不快にし人や家畜、土地に不幸や災難をもたらすと信じられてきた。そのため生理中の女性たちは「不浄な存在」として牛や男性に触れることを許されず、家の中の食べ物を口にすることも禁じられた。また、家のトイレや洗い場の使用も禁止され、近くにある狭い小屋か牛小屋、時には歩いて10分~15分かかる深い森の奥の小屋に生理が終わるまで隔離された。隔離期間中の女性らは山地の厳しい寒さに耐えなければならないだけでなく、野生動物からの攻撃からも身を守らねばならない。しかも少女らは学校に行くことも許されないのだ。更に不潔な状況下で隔離されるために感染症を起こすこともあり、外部から性的暴行を受ける可能性もある。

チャウパディは2005年に同国で禁止となったが、西部地域では未だに根強くこの慣習が残っている。隔離される間、女性が小屋で暖をとろうとして煙にまかれ窒息死する事故が数件起こっていた。2017年7月には18歳の少女が隔離中に小屋で蛇に噛まれて死亡する事故もあり、同年には最高裁判所がチャウパディを法律上の犯罪行為と定め、2018年8月以降この行為を強いた者には最大3か月の懲役、もしくは3,000ネパール・ルピー(約2,900円)の罰金が科せられることが決められた。

しかしそれでも、チャウパディは行われていたようだ。1月9日、カトマンズの北西400kmほどのブドヒナンダという人里離れた山地の小屋で、隔離を強いられていたとされるアンバ・ボホラさん(35歳)と9歳と12歳になる息子2人の遺体が家族により発見された。

バージュラ郡行政管理人のチェトラジ・バラルさんによると、3人入るには狭すぎる小屋に母子は隔離されており、暖をとるために焚火をしていたようだ。母子は厳しい寒さの中、焚火をしながら寝てしまったのだろう、睡眠中に煙を吸引して死亡したとみられている。母親の両脚には火傷の痕があり、小屋にあった毛布の一部だけでなく母子が着ていた衣服も焦げていたという。

バラルさんは、チャウパディが禁じられているにもかかわらず、その行為を強いた家族を告発できるか否かを政府の弁護士と相談し合っていると明かした。遺体は近所の病院へ運ばれ検死が行われたが、結果はまだ出ておらず死因は確定されていない。その後3人の遺体は、最後の儀式のため家族に引き渡されたそうだ。当局は、現在もこの件の捜査を続けている。

画像は『Fox News 2019年1月10日付「Mother, 2 sons found dead in Nepal hut after suspected ‘menstrual exile’」(iStock)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)

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