「ねこばばする」
「ねこばばを決め込む」
「ねこばばを決める」
「ねこがばばを踏むなど」
など、「ねこばば」を用いた慣用表現はいくつかありますが、「ねこばば」っていったい何なんでしょうか。「ねこばば」とは、悪事を働いてしらんぷりをすること、特に拾った金銭や品物をこっそり自分のものにしてしまうことをいいます。
その言葉の由来について、筆者はかつて語感からついつい年老いた雌猫の妖怪・猫婆のようなものを考えていたのですが、調べてみると実は全く違っていたということがわかりました。
「ねこばば」には、実は漢字が当てられており、漢字で書くと「猫糞」となります。つまり、「ねこばば」とは、本来、「猫のうんこ」のことを指していたのです。
「うんこ」を意味する「ばば」は、江戸時代後期頃から使われた言葉で、小さい子どもが使っていた言葉だそうです。他にも、汚いことを意味する「ばっちい」や「ばばっちい」などといった言葉もここから派生したと考えられています。
さて、猫がうんこをするときの様子ですが、読者の皆さんはご存知でしょうか。おそらく、猫を飼っている皆さんならある程度情景が浮かぶと思います。
そう、彼らは、猫砂の上でうんこをしたあと、まるでそんなものは最初からしなかったかのように後ろ足で砂をかけて、隠すんですね。
これは猫のご祖先がまだ砂漠で暮らしてた頃からの修正で、うんこについた自分の臭いによって、外敵に自分の存在を知られることを防ぐための手段だったのですが、そのくせはイエネコとして人間と一緒に暮らすようになってからも抜けることがありませんでした。
今でも猫は、自分がうんこをした後に、それを後ろ足で砂をかけて隠し、素知らぬ顔をしています。
その様子が、まるで悪事を働いた後で素知らぬ顔をしている様子と似ていたため、このような行為をすることを「猫糞する」というようになりました。
まあ、猫の妖怪のことを指していたわけではないので、少しほっとしましたが、あまり喜ばしくない行為を指す言葉に猫という言葉が使われて、世界中の猫たちが知ったら憤懣(ふんまん)やるかたないでしょうね。「糞(ふん)」なだけにね。
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