「めでたい結果になったもんだ」そんな風に私が喜びを噛みしめていたのは月曜日、マドリッドが前代未聞の1部リーグ5チーム体制になった今季、全員が揃って勝利したのはこの19節が初めてだと知った時のことでした。いやあ、20のうちの5チームですから、それこそダービーがないリーガ戦の方が珍しいくらいとあって、ようやくシーズン半分を終了した時点でのビンゴだったんですけどね。しかもうち4試合が1点差での決着とあって、とりわけ日曜最後に試合をしたレアル・マドリーなど、かなり危うい感じがしないでもなかったんですが、とりあえず、どんなだったか、順にお話ししていくことにすると。

金曜に先陣を切ったのは昨年中にコパ・デル・レイ32強対決で同じ弟分のレガネスに敗退したラージョで、長らく降格圏に沈んでいるため、懸念も一番大きかったんですけどね。年が変わったことで運気が変わったのか、前節にバジャドリー戦で勝利したことで勢いがついたのか、セルタをエスタディオ・バジェカスに迎えた試合では撃ち合って堂々勝利。ええ、開始4分にラウール・デ・トマスが直接FKで先制した後、12分にはアラウホ、17分にはアブドゥライ・バの与えたPKをマキシゴメスに決められ、あっさり逆転されてしまったものの、38分には再びR.D.Tがスコアをイーブンに戻してくれたから、助かったの何のって。

おまけに彼は後半31分にもゴールを挙げ、ハットトリックでラージョを逆転に導いてくれたんですが、これみよがしのゴールゲッターぶりに、CF不在に悩むレンタル元の兄貴分が悔しい思いをするのは決して初めてのことではなし。近年でもモラタ(チェルシー)、マリアーノといった例がありますが、RMカスティージャ(マドリーのBチーム)出身組の出戻りは成功率があまり高くありませんからね。一応、この冬の市場での帰還のオプションはないそうですが、この日はロスタイムにベベもゴールを入れ、4-2で大勝、順位も1つ上がったラージョとはいえ、17位のセルタとはまだ勝ち点差が2。ホーム連戦となる日曜のレアル・ソシエダ戦でもきっと、ミチェル監督にはラウール・デ・トマスの決定力が必要になりそうです。

そして土曜には残りの弟分2チームがプレーしたんですが、正午からブタルケに最下位ウエスカを迎えたレガネスは後半38分にジョナタン・シウバのラストパスをエン・ネシリが流し込み、これが決勝点となって1-0で勝利。相手のGKサンタマリアがジョナタン・シウバやエル・ザールのシュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)しなければ、もっと余裕のあるスコアで勝てていたはずですが、この勝ち点3で順位も13位と上昇したため、この日曜のカンプ・ノウ訪問に余裕を持って挑めるかと。ええ、コパ16強対決では先週の1stレグでマドリーに3-0と完敗してしまった彼らですからね。

となれば、折しもエースのカリーソがウエスカ戦で足首を捻挫してしまったこともあり、水曜にブタルケでの2ndレグで奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)を夢見るより、2-1でバルサに勝利して、世間を驚かせたシーズン前半戦の再現を目指す方がもう1つの兄貴分にもいい顔ができない?そんなレガネスはこの冬の市場で活発に動いていて、すでにGKセランテはJ2のアビスパ福岡に移籍。1月上旬にはFWブライトワイトをミドルスブラからレンタルしたかと思えば、マウロ・ドス・サントスに続き、この月曜にはラウールガルシアとも契約を解除し、オヘダもコルドバ(2部)に行くことに。手薄になった左SBにはマドリーからレンタルで修行に来ている19歳のGKレニンに話し相手ができるようにですかね。同じウクライナ人の21歳、クラベツをルゴ(2部)から、移籍金250万ユーロ(約3億円)を払って獲得していましたっけ。

一方、土曜の夜にビジャレアルとのアウェイ戦に臨んだヘタフェはベテランFWたちが活躍して1-2で勝利。後半7分に36才のエース、ホルヘ・モリーナのゴールで先制すると、31分にはカブレラがバッカのシュートをクリアしようとしてオウンゴールにしてしまったものの、41分にモリーナと交代でピッチに入った32歳のアンヘルが更に違いを見せます。30歳のマタからラストパスを受け、vaselina(バセリーナ/ループシュート)で勝ち越し点を入れてくれたとなれば、27歳のグアルディオラや23歳のアレホがコパ要員となってしまうのは仕方ない?同じことは26歳の柴崎岳選手にも言えるんですが、当人は今、アジアカップの日本代表に参加中ですからね。この火曜、やはり交代出場したアンヘルのゴールで1-0と勝った1stレグのリードを持って挑むホセ・ソリージャでのバジャドリー戦2ndレグでもアピールができないのはホント、間が悪いですよね。

え、この勝利のおかげでヨーロッパリーグ出場圏の6位に上がったヘタフェが金曜にはいよいよ、5位のアラベスをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えるのも楽しみだけど、やっぱり気になるのは日曜にプレーした兄貴分たちの出来の方じゃないかって?そうですね、まずは快晴ながら、気温の低かった午後1時、大勢のファンが詰めかけたワンダメトロポリターノでレバンテ戦をスタートさせたアトレティコというと。いやあ、いきなり開始8分でサビッチがダウン、左足のハムストリングの肉離れで全治1カ月という重傷を負い、ヒメネスと交代したのは今季のDF勢にありがちなことながら、ショックでしたけどね。もっと残念だったのは10分、カウンターからファンフラン、ビトロが繋ぎ、最後はコケがゴールを入れながら、VAR(ビデオ審判)により、得点が認められなかったことかと。

というのも最初、自陣でロドリゴがバーディからボールを奪った際、「Tenía claro que la jugada que la iba a revisar/テニア・クラーロ・ケ・ラ・フガダ・ケ・ラ・イバ・ア・レビサール(あのプレーは見直されるってわかっていたよ)。ボールは相手が持っていたし、ボクは前に出ようとして、腕をちょっと使ったから」と当人も後で認めていたんですが、いやでも、それってゴールが決まった後に問題にすること?おかげで相変わらず、「攻撃陣があまり良くなかった。Yo el primero, fallando pases, me pesaban las piernas/ジョ・エル・プリメーロ、ファジャンドー・パセス、メ・ペサバン・ラス・ピエルナス(まずボクがね。パスミスとか、とにかく足が重かった)」(グリーズマン)だったアトレティコは無得点のまま、ハーフタイムに入ることに。

それでも捨てる神あれば拾う神ありで、後半には彼らにツキが巡ってきて、ええ、12分、エリア内でトマス折り返したパスが倒れていたブクチェビッチの腕に当たり、審判がペナルティを取ってくれたんですよ!うーん、これにはパコ・ロペス監督など、「今季協会から回ってきた通達では地面について体を支えている手に当たったプレーはハンドを取らないことになっていた」と後で抗議していましたけどね。VARでも判定は覆らず、グリーズマンがPKをしっかり決めてくれたため、ようやくアトレティコが1点をリードできたのは大きかったかと。

その後は滅多にない60%にもなるポゼッションとGKオブラクがモラレスの至近距離シュートを弾いてくれたおかげもあって、1-0のまま、勝った彼らでしたが、実はPKの1点のみで勝利するのは年内最後のエスパニョール戦に続いて、ホームでは2試合連続。それでもファンの熱い応援が衰えることはありませんでしたし、「Al final 1-0 es la misma victoria que 8-0, así que estamos contentos/アル・フィナル・ウノ・セロ・エス・ラ・ミスマ・ビクトリア・ケ・オチョ・セロ、アシー・ケ・エスタモス・コンテントス(最後は1-0でも8-0でも同じ勝利だから満足だよ)」(ロドリ)というのは、だったら1度くらい8点取ってみせてよというツッコミは置いておいて、本当ですからね。

何よりアウェイであまり勝てていない今季だけにホームでの白星はマストなんですが、実はここ4試合、アトレティコの得点は1点のみで、その全てがグリーズマンのものというのはかなり心配かと。おかげで先週ミッドウィークのコパ16強対決ジローナ戦でも彼にお休みを与えることができず、結果も1-1だったため、この水曜午後7時30分(日本時間翌午前3時30分)、ワンダでの2ndレグでも妥協して、せいぜいベンチ待機となれば、ジエゴ・コスタリハビリを終えて戻って来る2月まで当人の体力がもつかどうか。

おかげで先日など、モラタ獲得の噂が急浮上、この日曜には当人と奥さんのイタリア人モデル、アリス・カンペッロさんがマハダオンダ(マドリッド近郊)のシュダッド・デポルティバ・ワンダ前にあるパステレリア(パンやスィーツのお店)、アトゥエルで目撃されたなんて情報まで入ってきたんですが、え、アトレティコグリーズマンの超高額年棒のせいで、もう今季の人件費枠が残ってなかったんじゃないかって?はい、その通りで、いくらモラタが給料引き下げに前向きだからといって、誰か選手を売らない限り、何とかなるもんじゃないんですけどね。早くも候補はジェルソンとカリニッチと言われていますが、さて。ちなみに子供時代はアトレティコカンテラ(ユース組織)でコケやデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)と一緒にプレーした彼ですが、その後はお隣さんに河岸を変えたため、ファンからはあまり歓迎するコメントが聞かれないのも難しいところですかね。

そして夜にはマドリーがベティスと対戦したんですが、キックオフから5人DF体制が敷かれていたのに目を丸くしてしまったのは決して、私だけではなかったのでは?だってえ、今季はペジェグリーニ監督がシステム変更してから、レガネスの調子が上向いてきたり、シメオネ監督もその手の敵を攻略しあぐねた挙句、逆療法で自らもCB3人にして、やっぱりダメだったりと他のチームではそういう手もありなんですけどね。まさかバランセルヒオ・ラモス、ナチョを並べ、右にカルバハル、左にレギロンなんて、こんなの天下のマドリーの沽券に関わるんじゃ。

それでもベティスが「マドリーが5人DFで出てきたせいで少し混乱した」」(セティエン監督)前半12分、カルバハルのシュートが敵DFに当たり、戻って来たボールをモドリッチが撃ち込んで先制ゴールにした時は結構、やるじゃないかなと思ったもんですけどね。ケチがついたのはアトレティコ風に敵にポゼッションを70%以上譲ってカウンターに賭けていた38分、せっかくバルベルデが独走したにも関わらず、フィニッシュ直前でボールを奪われてしまったのと、ハーフタイム入り直前、バルトラに押されたベンゼマが地面に手をついた際、右手小指を骨折してしまったことからだったでしょうか。

何せ、今はベイルもアセンシオもマリアーノも負傷中、ルーカス・バスケスもこの試合、前節の退場で出場停止だったため、先週は風邪で練習を休んでいたビニシウスまで、何度もタックルを浴びせたバルトラに「立っているより地面に倒れている方が多かった。ダイブするなよと言ったら、me ha llamado hijo de... bueno, se ha acordado de mi madre tres veces/メ・ア・ジャマードー・イホ・テ…ブエノ、セ・ア・アコルダードー・デ・ミ・マドレ・トレス・ベセス(…の息子って呼んで、いや、ボクの母を3度、思い出させてくれた)」と、惨々に言われながらも出ざる得ない緊急事態だったマドリーですからね。

結局、後半のピッチベンゼマは戻って来ず、RMカスティージャのFWクリストフが入ったんですが、ボールはほぼベティスが独占、こんなにも自陣エリア近くに大勢いて守っているマドリーを見るのはファンにとって、屈辱的だったかと。そんな中、とうとう21分にはロ・チェルソのスルーパスがカナレスに通り、クルトワの代わりを務めたGKケイロル・ナバスが破られてしまったとなれば、年明けのレアル・ソシエダ戦に負け、首位バルサとは勝ち点差10、その直前のエイバル戦での勝利で13にまで開いていた彼らは一体、どうしたらいい?

いやあ、絶体絶命の窮地を救ったのはまず、ベティスの同点ゴールを挙げたカナレスからして、以前、マドリープレーしていたのもそうなんですが、「El fútbol tiene esta magia de que el ex siempre hace daño/エル・フトボル・ティエネ・エスタ・マヒア・デ・ケ・エル・エックス・シエンプレ・アセ・ダーニョ(サッカーには常に元選手が打撃を与えるというマジックがある)」(ソラリ監督)というオチだったんですよ。ええ、28分、レギロンに代わってピッチに入ったセバージョスでしたが、2年前まで古巣だったベニト・ビジャマリンのファンから容赦ないpito(ピト/ブーイング)を受けたことに発奮。

ホアキンがセンターでボールを失い、エリアに向かったカセミロがカルバーリョに倒されてFKを獲得した42分、「Quería reivindicarme/ケリア・レイビンディカールメ(アピールしたかった)」とラモスにキッカーを譲ってもらうと、「GKのパウはスペイン代表でよく知っていたし、カセミロに軌道が見えないように前に立つように言った」のだそう。おかげでボールが壁の隙間を抜けてネットに入り、土壇場でマドリーが勝ち越し点をゲット。そのまま1-2で終わりましたが、試合後、普通だったら炎上もののこの日のプレースタイルにあまりマスコミの批判が向かなかったのは、これ以上、負けが込んだら、ロペテギ監督に続いてソラリ監督も早々に解任となって、マドリーの今季がシーズン前半で終わってしまう恐れがあったから?

いやまあ、とにかく今はベンゼマも含め、前線以外にもクロースマルコス・ジョレンテら、計7人もの選手が負傷中。月曜にはバジェホもハムストリングのケガで新たにリストに加わり、古今未曾有の人手不足の彼らですからね。それだけにベティス戦でもプレー時間をもらえなかったイスコとソラリ監督の断絶ぶりはかなりなものがあると伺われるんですが、大丈夫。今週は水曜午後9時30分(日本時間翌午前5時30分)から、レガネスとのコパ16強対決2ndレグがありますから、同様に出番のなかったマルセロと一緒にアピールするチャンスはきっともらえるかと。むしろ怖いのは土曜のセビージャ戦で、誰も回復しなかったら、サンティアゴ・ベルナベウで5人DF制…いや、ホームサポーターの前でそれだけはないと信じたいです。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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