不思議

『マルホランド・ドライブ』(2001年)

マルホランド・ドライブ

ある夜、マルホランドドライブ交通事故が起こりました。その事故で一人生き延びた黒髪の女性は、助けを求めハリウッドにたどり着きます。そこで、ある家に偶然潜り込みますが、そこは人気女優ルースの家でした。ルースの姪のベティに見つかった黒髪の女性は、部屋に貼られていた女優リタ・ヘイワースのポスターを見て、自分の名前はリタで記憶喪失であると告げます。
そして、ベティは好奇心と同情からリタの記憶を取り戻すために協力することになり……というストーリーです。

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カルトの帝王とも呼ばれている鬼才デヴィッド・リンチ監督が手掛けた作品ですが、ストーリー一本道でない上に、時系列バラバラ。加えて、夢、回想、現実が入り交じる展開に、見ている側はこれが現実なのか、空想なのか理解に苦しみます。

映画公開時には、監督からストーリーを読み解く10のヒントが提示されましたが、それを踏まえても一度ですべてを理解するのは難しいでしょう。

『ファニーゲーム』(1997年)

休暇で別荘を訪れたゲオルクたちショーバー一家。途中、隣人のベーリンガーと挨拶をかわすと、そこには見知らぬ2人組の若者がいました。そして、妻のアンナが夕食の支度を始めたとき、ちょうど先ほどの2人組の1人が訪れます。彼は「卵をくれないか」と妻のアンナに丁寧にお願いし、アンナは快く卵を渡しますが、男性は2度も卵を落として割ってしまいます。そして3度目の訪問時、ゲオルクが怒って帰そうとすると、その瞬間、彼の態度は豹変。ゲオルクをゴルフクラブで殴打すると、もう1人の男とともに、家族全員をソファーに縛り付けます。そして「明日の朝まで君たちが生きていられるか賭けをしないか?」とゲームを持ちかけるのでした。

ストーリーだけを見ると「狂気的な隣人に襲われる」という、よくあるショッキングスリラーものに思えます。しかし、その内容は複雑。最後まで見ても何がどうなり、このような結末になったのか、理解するのが難しいのです。男たちが映画を見ている「こちら側」に語りかけてくというるメタ演出も、話を難しくしている要因。

『ファニーゲーム U.S.A.』という、ハリウッドリメイク版もあるので、こちらを見るのもお勧めです。ただ、本作は非常に後味の悪い作品なので、その点にだけは注意してください。

『シャッターアイランド』(2010年)

シャッターアイランドという孤島にあるアッシュクリフ精神病院で、レイチェルという女性が行方不明になります。事件を調べるために島を訪れた、連邦保安官のテディチャックは、レイチェルの部屋から"The law of 4; who is 67?"という、奇妙なメッセージを見つけます。そのメッセージを頼りに捜査を進めるうちに、テディシャッターアイランドそのものに何か大きな秘密があるのではと思い始めます。

本作は、ラストセリフをどう理解するかで、まったく違う内容になる作品です。加えて、難解なのは、そのストーリーと展開。ネタバレになってしまうので詳しくは明かせませんが、さまざまな「謎」が作中にちりばめられており、その「謎」の意味がわからないと「なんでこうなったの???」と腑に落ちないまま結末を迎えることになります。

公開当時、半券があれば2度目の鑑賞が割引になる「2度見キャンペーン」や、原版に忠実な「超吹き替え版」の上映が行われるなど、作り手側も複数回の鑑賞を勧めていた作品。あなたはどう解釈するでしょうか?

『バニラ・スカイ』(2001年)

バニラスカイ

父の遺産を引き継ぎ、悠々自適な生活を送る若き富豪でプレイボーイデイヴィッド。彼は自分の誕生日パーティーで親友の彼女・ソフィアに一目ぼれをします。一方、デイヴィッドに恋い焦がれる女友達のジュリーはそのことを知って嫉妬に狂い、デイヴィッドと心中を図ります。その結果ジュリーは死亡しますが、デイヴィッドは辛くも一命を取り留めました。しかし、事故の影響でデイヴィッドハンサムな顔は醜く変わり果て、体も歪んでしまいます。そこから彼の人生は大きく変わっていくのでした……

バニラスカイ』は、ハンサムな富豪の転落物語ではなく、実に難解なストーリーサスペンス映画。映画の中でデイヴィッドは「夢」と「現実」の狭間で苦しみ錯乱していきます。そして作品自体も「夢」と「現実」のシーンを混在させたまま展開していくので、見ている側もデイヴィッドと同じく混乱してしまうのです。

本作は、スペイン映画『オープン・ユア・アイズ』のリメイクですが、ストーリーはほぼ同じ。舞台はニューヨークに移しているものの、ヒロインソフィア役を演じるペネロペ・クルスは、両方の作品に同じ役で出演しています。

『8 1/2』(1963年)

イタリア

新作の構想と休養を兼ねて、温泉地へとやって来た映画監督のグイド。しかし一向にアイデアがまとまらず、創作に行き詰まったグイドは、次第に妻や愛人の影に悩み始めます。そして、混乱してしまったグイドは、ついには亡くなった両親や子供のころの思い出など、自らの理想の世界へと現実逃避することに……。

イタリアの巨匠フェデリコフェリーニが監督した8本目の作品。映画はグイドの心の内面を「夢」「現実」「幻想」「過去の記憶」など、幾重にも交錯させながらドラマチックに描写しています。先にあげた『マルホランドドライブ』や『バニラスカイ』もそうですが、「現実」と「夢」の区別が曖昧なのが、ストーリーを難解にしている要因のひとつでしょう。

ただ幻想的な映像も特徴的な作品なので、謎は謎として、映像美を堪能するものお薦めです。登場人物たちが輪になって踊る、有名なラストシーンも必見ですよ!

難解な映画は、ある意味するめ」のようなもので、見るたびに新しい味わいと発見があり、違った解釈を楽しむことができます。今回紹介した中でまだ見たことがない作品があれば、ぜひ極上のカタルシスを味わってみてください!

(中田ボンベ@dcp

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