great-tit-990999_640_e

 スウェーデンの国鳥でもある、マダラヒタキ(学名 Ficedula hypoleuca)という小さな鳥は、餌を求め、子供を作るためにアフリカのサブサハラからヨーロッパへと大旅行を行なっている。

 いつもなら特に問題なくヨーロッパに渡り、数ヶ月後には子供を連れてアフリカに行く。

 ところが最近になって、シジュウカラと鉢合わせするようになり、彼らの営巣地が占拠されているというケースが確認されるようになってきた。

 シジュウカラはマダラヒタキを追い払うだけでなく、彼らを襲い、殺して脳を食べることすらあるという。

 この陰惨な事件が起きるようになった理由は何なのか?

 どうやら地球温暖化と関係があるようだ。温暖化により両種の繁殖の時期が重なってしまったのだ。

―あわせて読みたい―

毎年14,000kmの距離を飛んで会いに来る。飛べない彼女への愛を貫き16年。コウノトリカップルの純愛物語
なぜそこに作ったし。奇妙な場所に作られた鳥の巣ミステリー
栄光の一位はやはりアイツだった。ざっくり見ていく鳥の速さランキングトップ10
残り少ない白髪をシジュウカラに分けてあげるおじいさんのやさしさよ
ボンネットの上に3羽の鳥が死んだふりだとぅ?いったい何が起きている?

陰惨な事件の裏側にある温暖化

  シジュウカラは通常マダラヒタキよりも2週間早く繁殖を始める。ところが温暖化のせいでその時期が重なりつつあるようだ。

 シジュウカラは1年中ほぼ同じ地域にとどまる鳥で、ヨーロッパ全域に生息している。一方、マダラヒタキは渡り鳥で、アフリカとヨーロッパを行き来する。

 1980年代以降、春が以前より暖かくなったことが原因で餌となるムシが増える時期が早まり、彼らの4月の渡りのシーズンが少しずつ早まってきていた。

 これ自体はマダラヒタキにとってさしたる問題ではなかった。

10_e1
マダラヒタキのオス

 だがシジュウカラの繁殖シーズンもまた流動的だった。4月の少し寒い時期に繁殖シーズンが遅れるようになったのだ。

 このために両者の繁殖シーズンが重なり、縄張り意識的な意味から、暴力的な事態に発展するようになってしまったのだ。

巣穴不足によりシジュウカラに襲われるマダラヒラキ

 イギリスオランダの営巣地では、木々が非常に若く、巣作りに役立つ穴を開けるキツツキも少ない。このためマダラヒタキとシジュウカラが巣を作り、卵を産める場所が非常に限られている。

 ボランティアや専門家が巣箱を設え、繁殖の手助けをしようと務めているが、繁殖シーズンの重なってしまったためにそれでも巣が足りていない。

 このために後から渡ってきたマダラヒタキが巣穴に入ろうとすると、先にいたシジュウカラがマダラヒタキを襲い、脳を食べてしまうのだという。

 2007~2016年に950個の巣箱から集めたデータによると、マダラヒタキ10羽中1羽がシジュウカラによって殺されていたそうだ。

chickadee-2584373_640_e
シジュウカラ

犠牲になるのはあぶれたオスなので生息数に影響はない

 研究の筆頭著者であるイギリスエディンバラ大学のジェルマー・サンプロニウス氏によると、マダラヒタキは長距離飛行に有利になるように、体が小さく軽く進化してきたという。

 このため、空中でならシジュウカラと互角に渡り合えるものの、地上に降りてしまうと分が悪くなる。

 一方、シジュウカラの方はマダラヒタキを食料源にしているようだ。可愛らしい姿とは裏腹に、シジュウカラは気性が荒く、このような攻撃的な行動は珍しいことではないという。

 マダラヒタキにとっては不幸中の幸いであることに、犠牲になっているのは到着が遅れて、交尾する相手がいない、あぶれたオスであることが多いようだ。

 そうしたオスはいずれにせよ子供を残さないことが多いため、今のところこの現象によってマダラヒタキの生息数に大きな影響が出るといったことはない。

13_e
マダラヒタキのメス

温暖化が動物の行動パターンに与える影響を詳しく調査すべき

 だが今後もこのまま続くかどうかは誰にも分からない。状況が一変して、マダラヒタキの個体数が減少に転じる可能性だって否定できないのだ。

 サンプロニウス氏はこの件について、温暖化が動物の行動リズムに与える影響を調査しなければならない理由を示す格好の事例だと話す。

 環境の変化に対して動物たちが示す反応を理解することは、生物の脆弱性を正確に把握するためには必要不可欠なことだそうだ。

 この研究論文は『Current Biology』に掲載された。

References:For these birds, climate change spells a rise in fatal conflicts -- ScienceDaily/ written by hiroching / edited by parumo
追記:(2019/1/16)本文を一部訂正して再送します

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52269842.html
 

こちらもオススメ!

―動物・鳥類についての記事―

破壊力マックスの可愛さよ!すやすやおねむの子犬の寝顔に癒されたい人集まれ!
車にひかれてしまった犬の隣に座り、救急部隊がくるまで言葉をかけながら励まし続けていた警官の姿(アメリカ)
自転車をこいでいる夢を見ているらしい猫
Animal Aid~たくさんの奇跡と笑顔をありがとう!10のレスキューシーンと2018の活動報告
ちがう!そうじゃない!犬に頭を撫でられブチ切れる猫

―知るの紹介記事―

世界で悪名を馳せた5人の犯罪者とその愛車
おいしいだけじゃない、健康効果も。ダークチョコレートを食べることで得られる6つのメリット
中国の男性ファッショントレンドは腹だし?「北京ビキニ」なるものが流行っている件
最強の衛生兵はウジ虫なのかもしれない。戦争地帯で負傷した兵士の傷の治療にウジ虫が導入される予定(イギリス・アメリカ・オランダ)
またしても...宇宙の深淵から高速電波バーストを13回確認。その謎に迫れるかも。(カナダ研究)
あのかわいらしい鳥に一体何が?シジュウカラが他の鳥を襲い脳を食べていたことが確認される(英研究)