「女は、自分がブスであることを認めて、初めて幸せのスタートラインに立つことができる」

1月10日(木)深夜スタートのプラチナイト 木曜ドラマF『人生が楽しくなる幸せの法則』(読売テレビ日本テレビ系)。お笑いコンビ・相席スタートの山崎ケイのエッセイ本『ちょうどいいブスのススメ』(主婦の友社)をもとにした、オリジナルストーリーのドラマだ。

もともとは本と同じタイトルのドラマとして放送される予定だった。しかし、「ブス」という他者の容姿をジャッジする言葉を用いたタイトルや、男性からある意味軽視される「酔ったらいける女性」という存在を目指す書籍の内容に疑問の声が集まった。その結果、昨年12月21日にタイトルの変更が発表された。

一方で、2017年の『ハケンのキャバ嬢・彩華』(朝日放送AbemaTV)以来の連ドラ主演を務める夏菜の演技への期待感もあった。1話は夏菜の熱演から目が離せなかった。自分に手をかけていないことを表す色味のないメイクと、綺麗な顔をハチャメチャに崩しての百面相。こんな夏菜が。最終回ではどんな風に変化するのだろう。

原作エッセイとの矛盾や乖離の理由は
ジャストライト物産の総務部で働いている中川彩香(夏菜)、木原里琴(高橋メアリージュン)、皆本佳恵(小林きな子)は、それぞれ生きづらさを抱えた“イケてない女子”たちだ。

周りの目を気にしすぎる彩香は、思っていることを言えず存在感の薄い女。憧れの男性・佐久間(和田琢磨)とは同じ高校に通っていたのに、「ナカジマさん」と名前を間違われる始末。

里琴は、ホスピタリティのなさから営業企画部の森(忍成修吾)と言い争いばかりしている。発注書類に不備があっても確認することはなく、間違えたのはそちらでしょうという態度。正論を押しとおす里琴に、周りは呆れていた。

噂話が大好きな佳恵は、同じ会社の受付嬢や他部署の社員の恋人についてまで悪口を言いふらす。彩香とは反対に、思ったことを言わずにいられない性格だ。恋人がいることを心の支えにしているが、そのバンドマンの彼氏は佳恵がお金や物を貢ぐときだけ振り向いてくれると気づいてもいる。

総務部の新年会帰り道、3人は流れ星を見つけ願い事をする。彩香は「佐久間くんともっと会話ができるように」。里琴は「私の足を引っ張る人間が一人残らずいなくなるように」。佳恵は「結婚」と「金」。

すると、3人の前に“ちょうどいいブスの神様(山崎ケイ(相席スタート))”が現れる。神様は、いまのままの3人では願い事は叶わないと宣告。

ブスの神様「安心して。私についてくれば、必ずあなたたちは幸せになれます。あなたたちは今日から、ちょうどいいブスを目指すのです」

神様は、3人は「容姿ではなく生き方がブス」だと言う。原案のエッセイでは、前提としてまず容姿の良し悪しでブスかどうかを決めている。エッセイを読んだうえでドラマを見ると「容姿は関係あるのかないのか、どっち?」と少し混乱してしまう。

またエッセイの中では「容姿が美人であれば、ブスのような生きづらさや苦労を感じることがほぼないはずだ」という見解が繰り返し書かれている。しかし、ドラマの中で里琴も言っていたが、彼女たちは容姿が悪いわけではない。それでも、強い生きづらさを抱えている女性として存在している。

エッセイを原作とし、著者自身も指南役として出演しているのだが、ドラマとエッセイの間で内容に矛盾や乖離がある。これは、ドラマ版はエッセイとは違う落としどころに持っていくつもりということなのか。

もはや全員ブス! ドラマ版の「ちょうどいいブス」とは
エッセイでの「ちょうどいいブス」の定義は、何よりもまず「酔ったらいける女性」。しかし、ドラマ版ではその言葉は出てこない。

ブスの神様「まずは、自分がブスだって仮定してみるの。もしかしたら私、ブスなのかなあって。一度受け入れてみるだけで、幸せになるためには何をすればいいのか、それが自ずとわかってくるから」

「酔ったらいける」という女性軽視的な表現を控えたためか、ドラマ内での「ちょうどいい」の意味はいまのところ明言されていない。

ちょうどいいブスになることに成功した例として、素敵な男性と交際している総務部の松澤課長(伊藤修子)が挙げられる。松澤課長は、失恋をしたことで自分を徹底的に客観視した。そして、ちょうどいいブスになったことで、素敵な男性に愛される幸せを掴んだ。「自分を客観視すること」が、彩香たちにとって課題のひとつとなりそうだ。

会社での松澤課長は、後輩社員たちがちょっと疲れてきた頃にお菓子を差し入れるなど、とても気が利く女性。それを見た若い男性社員たちは「ここだけの話、俺、課長アリっす!」と噂している。

いやいやいや、自分を客観視して努力を重ね内面を変えた結果、どうでもいい男性たちから「アリ/ナシ」と性的ジャッジを受けるのが「幸せを掴んだ女性の姿」なのかよ……。あまりのトホホ感に脱落しそうになるが、彩香たちはそんな松澤課長の姿に勇気づけられ、自分を変えることを決意する。

ドラマでは彩香、里琴、佳恵が「生き方ブス」としてピックアップされている。だが、振り返ってみると、ブスは彼女たちだけなのか疑問だ。

休憩中は賑やかなのに、無駄な会議は我関せずと見て見ぬふりする佐久間や萌(佐野ひなこ)たち。
自分の間違いを謝らずに「ホスピタリティがない」と里琴を責め、里琴に「自分のどこが悪いか教えてください」と頼まれても「そういうとこなんじゃねーの」と吐き捨てる森。
女性社員に「可愛げも色気もない(から、いくら仕事ができてもダメ)」と言う男性社員たち。

彩香たちに負けず劣らず、こういう彼らも「生き方ブス」なのでは!? もはや全員ブスでは!? どうなんですか、ちょうどいいブスの神様!

この「もはや全員ブスでは」問題と「ちょうどいい」の定義は、2話以降でよりクリアになっていくのか、ならないのか。

(むらたえりか

▼配信サイト
GYAO(※チェインストーリーの配信もあり)
ytv My Do!

プラチナイト 木曜ドラマF『人生が楽しくなる幸せの法則』(読売テレビ日本テレビ系
毎週木曜日 よる11時59分〜放送(※一部地域を除く)
出演 夏菜、高橋メアリージュン、小林きな子、山崎ケイ(相席スタート)、和田琢磨、佐野ひなこ、忍成修吾、伊藤修子、徳井優、田山涼成、ほか
原作 山崎ケイ(相席スタート)『ちょうどいいブスのススメ』(主婦の友社刊)
脚本 武井彩 ほか
監督 植田泰史 ほか
音楽 仲西匡、羽深由理
主題歌 TANAKA ALICE「Waiting For U」(よしもとミュージックエンタテインメント
チーフプロデューサー 前西和成
プロデューサー 沼田賢治、村本陽介(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)、大沼知朗(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)、森安彩(共同テレビジョン
制作プロダクション 共同テレビジョン
制作協力 吉本興業
製作著作 読売テレビ

※「山崎ケイ」の「崎」は正式には「たつさき」

山崎ケイ(相席スタート)『ちょうどいいブスのススメ』(主婦の友社)