約100種類にもおよぶ、子供たちが憧れる仕事体験などが用意され、楽しみながら社会の仕組みを学ぶことができる、“こどもが主役の街 キッザニア”。そんな場所が大人向けに特別解放されたイベント「大人のキッザニア」に参加した私(30代女性)が最も感じたのは、この場所が大人すらも別世界を体験できる本格的な空間で、子供の夢を叶える“原動力”を生み出すパワーを持っていることでした。

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キッザニア」はとても楽しそうな場所ですが、普段は子供しか体験ができず、大人はあくまでも付き添い。自分自身が子供のころに憧れた職業や、もし叶うのであればいまからでも転職してみたい職業などを、子供たちが楽しそうに“仕事に取り組む姿”を見ていると、一瞬だけでもいいから子供に戻りたい、と願ってしまいます。

しかし、なんとこの度、そんな大人を対象とした、キッザニア東京初となる「大人のキッザニア」が、一日限定で開催。事前の情報公開のタイミングには、SNSなどで「違う仕事を選んでしまい、実際には看護師になることはできなかったけれど、子供の頃から夢だった看護師を体験してみたい」「普通の就職をしちゃったけど、父親の見ている世界、警察官をやってみたい」など、いまは違う道を歩いているけれど、少しでもいいからあのころの夢を叶えてみたい大人たちが反応し、チケットは即日完売しました。

さて、いまからその「大人のキッザニア」当日の様子をお届けしようと思うのですが、その前に、みなさんは子供のころ、何になりたかったですか?そして、いまは何になっていますか?

医師、警官、キャビンアテンダント、弁護士、パン屋さん、お菓子屋さん。子供のころ憧れていた仕事につけている人も、違う人も、きっといるでしょう。

私の子供のころの夢は、小学生のころが「獣医師」、中学生のころが「検察官」、高校生のころが英語を使う仕事。

いろいろな理由があって憧れて、当時は自分なりに本で調べたり、勉強を頑張ったりしましたが、結局いまは全く違う仕事をしています。

自分自身いまの自分の仕事が向いていると思うし、大変なこともあるけれど、それなりに楽しくやっていると思っています。でも、もし違う人生があったら、とふと思うことがあります。

■ 獣医師の私

犬が大好きで大好きで、登下校はいつも犬の図鑑を見ていて、メジャーな犬種はもちろん、ちょっと珍しい犬種もたくさん覚えていました。

お父さんが犬アレルギーだったから飼えなかったけど、大好きな犬が病気で苦しんでいたら助けてあげたいし、元気になったらきっとすごく嬉しいと思って憧れていた獣医師。

もし私が獣医師になっていたら、体重をはかったり、検温したりして、しゃべれない犬の声に、耳を傾けられるようになっていたでしょうか。

大人になり一人暮らしをはじめて、念願だった犬を飼うことができました。定期検診で、愛犬がケガや病気をしたとき。初めての犬なので、いろいろなことですぐに不安になってしまいますが、そんなときに頼りになるのが近所の獣医師さん。獣医師にはなれなかったけれど、実は愛犬のおかげでその仕事を間近で見てきたので、かなりスムーズにできたと思います。

■ 検察官の私

ドラマの影響で、型破りだけど真実を信じていつもまっすぐに事件と向き合う検察官に憧れていました。

もし私が検察官になっていたら、事務官にめんどくさがられながらもギリギリまで調査し、公平に事件を見て、真実と向き合うことができたでしょうか。

友だちのカードケースを盗るつもりがなかったのに、結果的に盗ったと言われてもおかしくない状況におかれてしまった被告人。今回はカードケースでしたが、これが現金だったら。もしくは、命に関わるようなものだったら。証拠や証言を聞いていると、どちらも正しいし、どちらも正しくない気がしてくる、大人でも難しい問題です。最後は公平に決を取り有罪になりましたが、本当にこれで良かったのかは、正直未だに答えが出ていません。

キャビンアテンダントの私

短期留学を経験し、英語を使う仕事、特に世界中のさまざまな景色を見ることのできるキャビンアテンダントに憧れていました。

もし私がキャビンアテンダントになっていたら、地上とは全く勝手の違う機内で乗客の安全を第一に考え、その場その場で的確な判断をし、かついつも笑顔で働けていたでしょうか。

普段ゆるい服装で、猫背で、動きもだらだらしていますが、機内では常に乗客の目があるので、ピシッとしていなければなりません。みんなが聞きやすい声でのアナウンス、狭い機内での食事のサーブ。これが長時間続くことを考えると、少なくてもいまの私には到底できなさそうでした。

■ 大人のキッザニア、そしてキッザニアとは

もし、子供のときにこの体験ができていたら。もしかしたら、あの頃願った夢をより強く願い続けて努力して、いまその職業についているかもしれませんし、もしかしたらさまざまな職業を体験して、新しい夢を見つけることもあったかもしれません。

もし、自分に子供がいたら。さまざまな職業体験を通して子供自身が持った感想から、じゃあこの勉強を頑張ってみようかとか、どうすれば一番近道になるんだろうとか、アドバイスや対話ができていたかもしれません。

そして、この日参加していた大人の多くは、私も含め、別の世界で生きる自分の姿を見ていたと思います。

実際にこの日体験していた大人たちが、憧れは憧れのままでよかったのか、タラレバかもしれないけれどもっとあの時ああしていればよかったと思ったのか、私には分かりません。

でも、ひとついえるのは、別の世界で生きる自分の姿を見ていた大人たちは、みんな笑顔だったということです。

大人のキッザニア、そしてキッザニア。大人にとっても、子供にとっても。夢のある、でも限りなく現実に近い夢を見ることのできる、素晴らしい施設でした。(東京ウォーカー(全国版)・大原絵理香)

普段は子供が主役の街「キッザニア」