厚生労働省で勤務医の働き方改革について検討が進むなか、長時間労働におちいっている開業医も少なくないとのデータを、神奈川県保険医協会がまとめた。同協会は医師や歯科医師で構成。1月18日、東京・霞が関厚労省で会見し、「開業医の4分の1が過労死ラインまで働いている」と発表した。

1089人が回答

データは、協会が2018年10月15日〜同30日に開業医と開業歯科医師を対象に行ったアンケートをもとにまとめた。会員のうち開業医と開業歯科医師の計5754人に対し回答を求め、計1089人(医師690人、歯科医師399人)が答えたという。

それによると開業医の場合、週あたり労働時間は「40時間超50時間まで」と「60時間超」がともに25.2%で最も多かった。次いで、「30時間超40時間まで」が19.3%、「50時間超60時間まで」が17.2%だった。

歯科医師の場合は「60時間超」が26.3%と最多。次いで、「40時間超50時間まで」が25.6%、「50時間超60時間まで」が21.6%だった。

過労死ラインとされる「週60時間」を超える勤務を、開業医と開業歯科医師のそれぞれ4分の1が行っていることになる。

●診療時間以外の負担大きい

会見で、内科医の磯崎哲男氏は「開業医は診療時間以外が長い。高齢化に伴い、一つの疾患だけでかかっている患者はだいぶ減っている。いろんなことを考えなければならない負担がある」と話した。

実際、大きな病院向けの紹介状や介護保険の意見書などの書類作成、保険請求などの事務作業が負担になっているという。こうした診療ではない労働にかける時間が週に「20時間超30時間まで」と答えた割合は10.1%にのぼった。

アンケートでは自由回答で、自身の健康について感じることも尋ねた。開業医からは、次のような声が寄せられた。

50代の消化器科の医師は「書類、事務処理、保険請求、病名チェックなど全て残業して行っていますが睡眠時間も確保できない」。

40代の内科医は「勤務医と比べ人事面でのストレスが多過ぎて、10年近く不眠、胃痛に悩まされています」。60代の整形外科医は「ストレスや努力の割に恵まれない仕事と感じています」と答えた。

●年2000時間案に反対の声

厚労省では現在、「医師の働き方改革に関する検討会」を開き、3月までの取りまとめを目指している。特に勤務医の労働環境改善に向けた議論をしているが、ここにきて地域医療の確保のためにやむを得ない場合、「年2000時間」まで時間外労働を認める案が出された。

過労死ラインを大幅に超える時間を認めることになるとして、医療関係者や過労死遺族からは反対の声が上がっている。

神奈川県保険医協会では、開業医の労働実態を明らかにするためアンケートを実施。厚労省では地域医療を担う開業医に関する議論が不十分だとして、「一石を投じたい」(副理事長で内科医の桑島政臣氏)という。

(弁護士ドットコムニュース)

開業医4人に1人「過労死ライン」 神奈川県内の開業医アンケート