TVアニメ『デート・ア・ライブ  DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス  怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。

ざわ…ざわ…アニメや映画、パチンコにもなり、長く愛され続ける、福本伸行先生の漫画『賭博黙示録カイジシリーズ。借金を抱えたダメダメな青年が、人生を賭けたギャンブルゲームで一発逆転を目指す話である。漫画を読んだことがなくとも、皆名前くらい知っているのではないだろうか。ちなみに二度の実写映画化では、藤原竜也さんが主人公カイジを演じ話題となった。その『賭博黙示録カイジ』が、今度は中国で映画化され、日本の劇場にお目見えする。その名も『カイジ 動物世界』。今までのカイジイメージを一新する作品になっているぞ!

昏睡状態の母親を抱える青年・カイジ(リー・イーフォン)は、ある日友人に騙され、巨額の借金を背負ってしまう。取り立てに来た謎の男アンダーソンマイケルダグラス)の提案を受け、カイジは豪華客船デスティニー号で開催されるギャンブル大会に参加。そこでは、世界各国から集められたギャンブラーたちが、命を賭けた勝負に挑んでいた。はたしてカイジは、借金を返済し元の日常へと戻れるのか。

 

思わず応援してしまうカイジの設定

(C)福本伸行 (C)Ruyi Films & Fire Dragon Guo. All Rights Reserved

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原作漫画でのカイジは、定職にも就かず博打に明け暮れているいわゆる“ダメ人間”なのだが、本作ではその設定が変わっているところに注目してほしい。本作でのカイジは、母親の治療費のために奮闘する家族思いの青年。欠点がまったくないわけではないが、随分と主人公らしい人物として描かれている。おまけに、友達以上恋人未満?な気になる存在、リウ・チィンもいる。彼女は看護師として懸命に働きながら、やや頼りないカイジだけでなく、その母まで気にかける健気な女性だ。

いい男を見つけたら結婚しろよ」と言うカイジに、「もう見つけてる。でも結婚してくれないの」とリウが答えるシーンは、カイジに感情移入して観ていた私も、彼とともに「えっ……まさか……」とドキッとさせられてしまった。母親と彼女未満のリウ。“家族”が垣間見える本作のカイジに、「お前―!家族がいるんだからもうちょっと頑張ろうよオオォ!」

 

最大の魅力は“ピエロ”

(C)福本伸行 (C)Ruyi Films & Fire Dragon Guo. All Rights Reserved

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カイジ 動物世界』独自の魅力はキャラクターだけではない。なんと、本作のカイジは、ピエロになって戦うのだ!ピエロカイジは『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のペニーワイズも顔負けのシャープメイクで、デッドプールのように、二本の短剣を巧みに操りモンスターを斬り殺してゆく。吹き出す血が真っ赤な血ではなく、パステルカラーなのも、ちょっとコミカルで、バイオレンスになりすぎなくてちょうどいい。本作最大の魅力とも言える、電車内でのこれらの疾走感あるバトルは、平穏な日常シーンと打って変わって、ゲームの世界に入り込んだように刺激的。ピエロカイジがあまりにカッコよすぎて、アクションだけで進んでもいい、と思ってしまうほど。え?ピエロに変身するなんて、原作には無い設定って?確かに突拍子もない描写に思えるかもしれないが、この改変にはきちんとした理由があるので安心してほしい。ピエロ姿もモンスターも、カイジの過去に由来した伏線となっているのである。

加えて言うと、人間同士のドロドロとした感情や駆け引きといった原作の要素が薄まっていないところもすごいカイジが挑むゲームを、“限定ジャンケン”(カードを使ったジャンケンゲーム)だけに絞り、ジリジリとした緊迫感を丁寧に描いている。カイジが脳内で練る戦略を、CG映像で可視化しているのも、スタイリッシュかつわかりやすくて◯。

(C)福本伸行 (C)Ruyi Films & Fire Dragon Guo. All Rights Reserved

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そして、カイジデスティニー号へと誘うキーマン・アンダーソン役のマイケルダグラスもハマっていた。『ブラックレイン』(89)、『氷の微笑』(92)で知られる大御所が、利根川(原作漫画や日本版の映画で、ゲームを取り仕切っていた役員)にあたるポジションを、原作よりもスマートで知的に演じていて、めちゃくちゃオシャンティー(死語)だぞ!

(C)福本伸行 (C)Ruyi Films & Fire Dragon Guo. All Rights Reserved

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こんな風に細かいヴィジュアルや設定は違えど、きちんと“カイジしている”のである。日本版の映画とも異なる、斬新かつ刺激的なカイジが誕生したと言えるだろう。

机上のギャンブル戦も楽しいけれど、強烈なアクションシーンがあるからこそ、2時間越えのボリュームでも飽きがこない。ピエロとなって汚い奴らをブチのめす、ダークヒーローカイジを目に焼き付けろ!

カイジ 動物世界』は2019年1月18日より東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、同月下旬より大阪のシネ・リーブル梅田にて開催される特集上映「未体験ゾーンの映画たち 2019」で上映。