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 南極氷床の一部である「西南極氷床」の地下奥深くには暗い水を湛える湖がある。ここは地球上でもっとも過酷な極限環境の1つなのだが、そこには生命が潜んでいるようだ。

 アメリカ・モンタナ大学の極生態学者ジョン・プリスク教授らは、氷河の下に埋もれたマーセル湖からサンプルを採取し、1ミリリットルあたり1万個の細菌性細胞が含まれていることを発見した。

 一般的な地上の湖なら同じ量に100万個もの細菌性細胞が含まれているため、今回サンプルから発見されたのはその1パーセントにしか過ぎない。

 それでも太陽の光が届かない氷の下にある水の中から採取されたことを考えれば、相当な量だろう。

 これだけの細菌が存在するということは、それよりも高次の、たとえば緩歩動物のような微小動物すら生きているかもしれないという。

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氷の下を掘り進み、生命体と遭遇

 プリスク教授らの探検隊がおよそ139平方キロに広がるマーセル湖を覆う氷の上に陣取ったのは、昨年12月半ばからだ。 

 そこからドリルとお湯を使って氷の下へと掘り進んだ。深さ1068メートルのところまで掘り進み、たどり着いた水はマイナス0.65度と凍てつくような冷たさだった。

 そこから水のサンプルと、湖面から15メートルの深さにあった堆積物コアを採取することに成功した。

 キャンプに回収された水は60リットル、堆積物コアは5メートル分に及び、西南極氷床で採取されたものとしては一番深い場所のものだという。

 また、この調査では、リモコン操作の無人潜水艇で湖底の写真や映像が撮影された。

 収集されたデータからは、数万年前の、南極に氷がなかった最後の時代から向こうにおける西南極氷床の活動について、新発見があるのではと期待されている。

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image credit:Kathy Kasic / salsa-antarctica.org

南極の氷の下は言わば湿地帯。生命体が存在しないわけがない。


 プリスク教授によると、南極の氷の下には400もの湖があり、分厚い氷と南極大陸地殻の凍った岩石に挟まれるように湛えられた水の中に独自の生態系が育まれているという。

 彼の考えでは、南極の氷床全体を川や湖が点在する大きな湿原とみなすことができるという。そうした川の中には、流れる水量は乏しくとも、範囲だけで言えばアマゾンに匹敵するものもあるいうのだ。

 しかもここにある真水は世界の7割を占める量であり、それゆえにそこに生命が存在しないとは考えにくいのだそうだ。

 実際、2013年にマーセル湖の付近にある地下湖ウィランズ湖でもたくさんの細菌が発見された。

 こうしたウィランズ湖(おそらくはマーセル湖も)に暮らす生物は、5000~1万年前のまだ湖が海とつながっていた頃に、光合成を行う生物によって蓄積された炭素を使って生存していると考えられている。

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火星でも同様のパターンが?

 同じようなことが、火星の凍った表面の地下についても言えるかもしれない。

私たちの研究で判明した氷河下環境についての知見、とりわけそこに大量の細菌性集団が暮らしているという事実は、火星に存在するかもしれない生命の種類について手がかりを与えてくれます。(プリスク教授)

 このことは地表の浅い部分からのコア採取を計画するNASAの「マーズ2020」ミッションでは特に重要となる、と教授は話す。

 今、プリスク教授らはボストーク湖に狙いを定めている。これは東南極で発見された世界最大の氷結湖で、氷床の下4000メートルの地点にある。

 プリスク教授にとっても大きな挑戦である。

References:Life Has Been Found In A Lake Deep Beneath Antarctica | IFLScience/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52270040.html
 

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